『殺人遊戯』みた。公開年に蓮實重彦が『最も危険な遊戯』をベスト、『殺人遊戯』をワーストのともに1位にしたというのでおなじみ。

殺人遊戯 [DVD]

殺人遊戯 [DVD]

つんどくのDVDから。というか、テレビで録画したVHSからDVDに落としたもので、始終画面が揺れていたのはまぁしかたないことであろう。DVDを再生すると、読売テレビ深夜の「CINEMAだいすき!」の関連番組「水曜亜細亜電影」のタイトルが流れ、サウナ大東洋のコマーシャル。番組CMの具合から、1999年の放送とわかる。映画そのものもだけど、あいまのコマーシャルの懐かしさにやられるな。そのつもりで、DVDに落とすときもCMは極力残してるのだった。
ところでこれ、公開年の雑誌の日本映画ベストテンで蓮實重彦が『最も危険な遊戯』をベスト、『殺人遊戯』をワーストのともに1位にしたというのでおなじみ(『映画はいかにして死ぬか』所収)。なので、タイトルは大昔から印象に残っていたし、まぁだから録画してたんだけれど、見たかと言うと、見たかもしれないけれどあまり記憶にないというか、まぁワーストと言われると見たとしてもさほど気を入れて見なかったのかもしれない。で、まぁ、見てみたら、まぁだいたい想像したようなかんじの、松田優作が殺し屋で、さいしょコミカルなかんじで、しかしある時点でスイッチが入って以降は無暗にハードボイルドになるという。音楽は大野雄二で、同時期に「ルパン三世」もやってるので、そっちの印象がかぶるような気がする。ところで、『最も危険な遊戯』がベスト1で『殺人遊戯』がワースト1になる理由、というのは、明らかだと書いてあったけれど、よくわからない。このさい『最も危険な遊戯』と並べて見てみようかという気も一瞬よぎったけれど、まぁそこまでの根性もなかった。
ところで本日は散髪をしたとここに書いておくライフハック

通勤電車で流し読む『先生は教えてくれない大学のトリセツ』『先生は教えてくれない就活のトリセツ』『教授だから知っている大学入試のトリセツ』。著者は『丼家の経営』の人で、いま法政大のキャリアデザイン学部教授。

先生は教えてくれない大学のトリセツ (ちくまプリマー新書)

先生は教えてくれない大学のトリセツ (ちくまプリマー新書)

先生は教えてくれない就活のトリセツ (ちくまプリマー新書)

先生は教えてくれない就活のトリセツ (ちくまプリマー新書)

ちくまプリマーで、大学について紹介する新書本が3冊出ていた。著者は法政大のキャリアデザイン学部の先生で、というか、『丼家の経営』の著者の人だった。大学の先生が書くこの手の本がおちいりがちな、まぁ昨今の大学改革だとか就活だとかインターンシップだとか大学入試改革だとかに対する文句というか冷めた目線というかまぁそういうものが、あっさりないので、大学生とか高校生とかはすがすがしく読めるんじゃないかな。
通勤電車で読む『丼家の経営 24時間営業の組織エスノグラフィー』。おもしろいけどところどころ我に返って「おい?」といいたくなる。 - クリッピングとメモ

通勤電車で読む『ビジュアル ゲーム理論』『ゲーム理論入門の入門』。なぜ囚人が出てこないほうがいいのか。

ビジュアル ゲーム理論 (日経文庫)

ビジュアル ゲーム理論 (日経文庫)

ゲーム理論入門の入門 (岩波新書)

ゲーム理論入門の入門 (岩波新書)

この4月にあいついで出たらしい、ゲーム理論の新書版の入門書2冊。
「ビジュアル」のほうは、『図解雑学ゲーム理論』の著者による新書版だった。
通勤電車で読む『図解雑学ゲーム理論』。よい本だというので。自分的に納得感があったのは、囚人がなかなかでてこなかったのがよかったのかも。 - クリッピングとメモ
で、この本でもやはり囚人がなかなかでてこなくて、出てきたときも「囚人のジレンマ」の説明として出てきただけで具体例は環境問題の例とかになってた。で、納得感があった。この本、自分的には、ゲーム理論入門の新書本でいちばんわかった感があった。
で、ゲーム理論のなにがなっとくいかないかというと、ふつう、あっというまに囚人が出てきて利得のマトリックスが出てきて、ドヤ顔、みたいなことになるけれど、両者が自白したら懲役何年、とか一方が自白したら何年、とかいうのが、いかにも適当に作った数字で、しかも↑前にも書いた通り、懲役1年とか懲役5年とか25年とかいうのは実体的な数字というわけでもないかんじがして、つまり25年は5年より20年多いですとか5倍ですとか、そういう加減乗除ができる数字なかんじがしない。もっと質的な違いを表現してるような気がして、そういうものをマトリックスにしても意味ないかんじが直感的に、する。でまぁ、そのへんのしっくりこないものをわざわざ例としてもってくるというのは、書いている人に説明の能力が欠けてるんじゃないかと。で、この本は、「囚人のジレンマ」そのものが本の半ばまで出てこない。本の最初のほうの一番単純なゲームの例は、競合する雑誌が、何を特集記事に持ってくるかで購読者を奪い合う、というもので、こういう講読者数というのは、「年数」などと違ってとてもすっきりと腑に落ちるし、「利得は正確でなくても(順序があってれば)いい」といった説明がさらっとなされてるし、さらにそれについて、利得の数字をちょっと変えることでゲームの構造が変わるよという話にもちゃんと一節を割き、条件を少しずつ変えてゲームの構造が変わっていくというのは、ひじょうに納得感がある。で、本の半ば以降、応用問題みたいなはなしにようやく囚人のジレンマが登場するが、具体例としては環境問題が例になってて、利得の数字は、お金ということになっている(これも直感的に迷う余地がない)。でまぁ、ビジュアル版ということなので見開き左のページが説明、右のページが図、という構成なので、ページ数は実質半分というかんじなのに、わかりやすい具体例を繰り返し少しずつ変奏しつつ調子よく段階を追って説明が進むので、参考書的なわかりやすさで納得感があった。
ゲーム理論というのは(というかモデルを立てる理論というもの一般がそうなんだろうけど)、具体を抽象的なモデルに変換して操作するわけで、その具体を抽象に変換するところが(まぁすくなくとも自分にとっては)むつかしいところだとおもうんで、たとえば囚人の懲役何年、自白すればどうのこうの、みたいな具体的なことがらを利得のマトリックスにするというのは、けっこうびみょうなものを含むと思う。で、まぁ最終的にはその変換ができるとしても、入門者向けにはなるべくそのへんのハードルをクリアしやすくする気遣いというのがあってしかるべきだなあと思って、ところが、けっこうゲーム理論の人というのはその具体を抽象に変換するところに引っ掛かりを覚えないタイプの人というか、具体を抽象に変換したあとの操作の便利な世界に魅力を感じている人なのだろうなあというふうに見えて、つまり、そういう人が入門書を書くと、入り口のいちばん違和感のある部分があんがい工夫なく差し出されてるっていうか、むしろドヤ顔感というか、具体を抽象に変換するときにごちゃごちゃひっかかるやつはダメ、みたいな雰囲気で押し通しながらゲーム理論は万能であれもできますこれもできますとオモシロ具体例をじゃんじゃんマトリクスにして「解い」てるような(まぁ被害妄想かもだけど)かんじがするんである。だけど、やはりたぶん自分のような人は初学者にはいるだろうし、まぁ説明というのはできるだけ不必要なハードルをなくしていく気配りというのが肝だと思うので、そのへんで、「囚人のジレンマ」の出て来かたというのが、説明の上手い下手のひとつのわかりやすいめやすになるようなきがするんである。
それでまぁ、もう一冊『ゲーム理論入門の入門』のほうは、帯にいきなりでかい文字で「囚人 の ジレンマ」(だけで終わってない)とあり、不穏。けっこう早い段階で囚人登場、というか、「ルパンと次元」のはなしになっていて、ルーブル美術館でどうのこうのとかしょうもない関係ないストーリーが付け加えられている。具体例をわかりやすくするためにおもしろストーリーでふくらませばいいという発想が不穏である。そして、いろいろなゲームの例が、「ラブジェネレーション」とか「AKBじゃんけん大会の篠田マリコ」とか「2014都知事選で舛添と細川の戦い」とか「宮崎あおいケータイ刑事銭形愛)と岡田准一木更津キャッツアイ)の結婚」とか、なんか現在を感じさせなかったり、あとは自分と嫁の家事分担のナッシュ均衡のはなし(の前ふりに、小樽商科大学で経済学の学会があってうんぬん、ラーメンが楽しみだが出張になると家事分担は…みたいなどうでもいいエピソードが書かれたり)とか、バークレーにラーメン屋が進出するみたいなこれもべつに特にものすごく興味がわく話ではないのに一風堂だかじゃんがらだかよくわからん固有名詞がじゃかじゃかでてきて気が散るとか、まぁ、不穏。

『ザ・スパイダースの大進撃』みた。

ザ・スパイダースの大進撃 [DVD]

ザ・スパイダースの大進撃 [DVD]

ふと、つんどくのDVDの中の、中平康のファイルを見てみたら、あったので見た。『ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦』につづくシリーズ第二作。このたびはいちおうスパイダースが犯罪に巻き込まれるというか、マチャアキのタンバリン(飾りの宝石がまさかの本物)を狙う謎の美女の一味と、空港で取り違えたアタッシュケースを狙う謎の男の一味の、両方からスパイダースが付け狙われる、というおはなし。悪の一味の連中はやたらとスパイダースの部屋に易々と侵入するが、もう一方の悪の一味のやつにあっという間にピストルで撃たれたりして死ぬ。というわけでスパイダースの行く先々でけっこう死体がゴロゴロする。まぁそのあたりはだから、前作と比べて曲がりなりにもストーリーがあるといえばあるけれどどっちかというと死体がゴロゴロのギャグみたいなかんじもある。スパイダースの事務所の社長の妹?ですっかり妹分的なポジションの和泉雅子はキュートだし、謎の美女の真理アンヌは一人で『殺しの烙印』な雰囲気を放射するし、そのあたりはなかなかよかった。まぁ、『ゴーゴー・向う見ず作戦』とどっちがよかったかというとまぁべつにどっちでもいいですだいじょうぶですってはなしではあるけれど、個人的な好感度は意外と『ゴーゴー・向う見ず作戦』のほうがよかったりしたのは、あっちのほうがより無茶で、こっちのほうはそれに比べればふつうの映画に近い印象だったからということもある。

『トラック野郎 望郷一番星』みた。

トラック野郎 望郷一番星 [DVD]

トラック野郎 望郷一番星 [DVD]

なにをかくそう、菅原文太というのを通ってきていない。『仁義なき戦い』シリーズや東映実録路線がたしか未見で、『トラック野郎』シリーズもむかしにテレビで見かけたかどうかというぐらいで、まぁテレビなんかで見てたり、かなり偉くなってからのイメージはあるけれど、活きのいい菅原文太というのを見てなかったわけである。で、つんどくのDVDの中に『トラック野郎』を見つけて、見てみた。意外に悪くなかった。松竹の『男はつらいよ』に対抗しての『トラック野郎』というポジションということで、寅次郎ならぬ桃次郎のドタバタ、オゲレツ、殴り合いの大喧嘩とデコトラのカーアクション満載で、特別出演の都はるみが歌う盆踊り「トラック音頭」まである、ハイセイコー(馬)までが特別出演のクレジットつきで登場、という大盤振る舞い。菅原文太の桃次郎は若くてスリムでしかもバカで乱暴で下品でしかも初心で不器用でまじめなところがありまた度胸があって男気がある、茶目っ気もある、という、まぁなるほど魅力的なのはわかる。北海道のトラック野郎、カムチャッカこと梅宮辰夫との殴り合い喧嘩シーンなどは両人とも若くてなかなかよかったし、そのなかでも冷蔵倉庫の中で殴り合いをやっていたらジョナサンが誤ってハンドルをぐるぐる回してしまいマイナス50度に!そして次のカットでは殴り合いの形のまま冷凍状態になった二人…というギャグなどはくだらなくてよかった。いや、なんだかんだばかばかしいお話ながらも、トラック野郎仲間の事故死のシーンは、はっとさせるし、クライマックスの爆走での吊橋のシーンではなんだかんだいって息を飲んだ。

『神田川淫乱戦争』再見。

神田川淫乱戦争 [VHS]

神田川淫乱戦争 [VHS]

きのう『ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦』見たら、なぜか『神田川淫乱戦争』を思い出したのだった。
『ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦』みた。これで映画として成立していたのか。 - クリッピングとメモ
で、ひっぱりだして再見。

『ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦』みた。これで映画として成立していたのか。

ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦 [DVD]

ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦 [DVD]

松原智恵子山内賢が気弱なお坊ちゃんで煮え切らないのが気に入らない。どんな障害も乗り越えてまっすぐに自分を迎えに来てほしいと言う。ところで二人はご近所さんでお互いの二階の部屋が向かい合っている(あいだに一軒、怖いおじさんが住んでる家をはさんで)。そこでなぜか山内賢が物理的な意味でまっすぐ松原智恵子の部屋に迎えにいかないといけないことになる。怖いおじさんがたちふさがる。ところで、松原智恵子の発言を偶然テレビで見たスパイダースの7人は、自分たちがまっすぐ歩けば松原智恵子をゲットできると思いこむ。で、横浜から世田谷までまっすぐ歩く。スパイダースが、家でも店でも女湯でも女子プロレスの練習場でも警察でも刑務所でも工場でも、壁を乗り越え窓を壊しまっすぐ歩くので大騒ぎになる。警察に捕まりそうになり、あるいは、猟銃立てこもり犯人のところにまっすぐ歩いてやっつけてしまってこんどは感謝されたりする。室内プールのライブステージでは演奏をする。さあ山内賢はまっすぐ松原智恵子のところに行けるか。みたいなことが映画として成立していたのか。1967年。ビートルズ映画と同時代、といわれればそういう気もしてくる。また、よく考えれば黒沢清が撮ったら『神田川淫乱戦争』になるのではないかという気もしてきて、そう思って見ればまぁ必ずしも映画として成立しないとは言えない気もしてこなくもない。