通勤電車で読む『宗教者ウィトゲンシュタイン』。否定神学者としての。ふうん。

宗教者ウィトゲンシュタイン (法蔵館文庫)

宗教者ウィトゲンシュタイン (法蔵館文庫)

『論考』のおしまいに、「語りえないことについては、沈黙しなければならない」と書いてあるわけで、それがやたらかっこいいフレーズなので、『論考』でそこまであれこれくだくだと書いていた本体の部分がぜんぶほっとかれて、なんかというと「語りえない…沈黙しなければ…」みたいにもっともらしく言うやつがでてくるとうんざりなわけなので、なんとなくまぁ「言えないことは言わんとこう」ぐらいにうけとっとくもんかなあとおもっていたのだけれど、この本では、まさにこの「語りえないことについては、沈黙しなければならない」というのをぐっと重たく受け止めて、『論考』を、むしろ、「語りえないこと」をめぐる否定神学の書だと読むわけである。それは、ウィトゲンシュタインの日記とか、従軍経験とかを検討するとわかるのだよ、というわけで、まぁそういわれるとそうかなという気もする。でもまぁ、なんか、なんかというと「語りえない…沈黙しなければ…」みたいにもっともらしく言うタイプの人がまた増えそうでめんどくさそうではある。

通勤電車で読む『やってはいけないデザイン』『失敗しないデザイン』。わかりやすい。

やってはいけないデザイン

やってはいけないデザイン

失敗しないデザイン

失敗しないデザイン

  • 作者:久美子, 平本
  • 発売日: 2020/07/15
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)
チラシやポスターやパンフレットみたいなののデザインを、しろうとがやるとなぜかしろうとっぽくなる。で、わかりにくくなったり。で、それをビフォーアフターで説明して添削してプロっぽいデザインに。という本なのだけれど、わかりやすくていい本。
『やってはいけない』が一冊目で、そのあとに出た『失敗しない』では、チラシのデザインそのものというより、その内容の、例えばイベントならイベントのターゲットを絞るべし(ターゲットを絞ることによって、伝えたい内容も絞れるし、デザインも決まる…)というところから始まるデザイン講座。わるくない。

『東京ノート』みた。

むかしむかし、会話分析とかアフォーダンスとかの文脈で平田オリザ面白そうだなあと読んでた頃(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/20041206/p2)か、ちょっとあとぐらいに、見てみたくなってDVDを買ったまま、なんとなくつんどくになってたんだけれど、ふと見てみた。
で、まぁ、うーむ、と。
基本的に、なんにもおこらないというか、美術館のロビーに、何組かの人たちがいれかわりたちかわり出てきたり出て行ったりして、そこに人生の断片がちらっと見えるみたいな。で、なにが会話分析とかアフォーダンスとかいうのかというと、セリフ回しもふつうっぽいし、ふつうの会話の間合いで、しかもロビー空間の中に何組かの人たちが居合わせて同時に別々に会話してるとか、そういうのを自然っぽく、あるいは自然っぽく見えるように精密に計算して練習して、やってる。とまぁ本で読んで、そうなのかと思って興味が出てきたという。
で、しかしまぁ、まず、これ、DVDで、録画されたもので、カットが割ってある。たぶん複数のキャメラで撮ってて、喋ってるところをフレームで切り取ったりアップにしたりしてる。まぁ、演劇のソフトってまぁ、そうなるわけだけれど。しかし、その同じ空間の中で自然に同時発話、みたいなのは、その空間に居合わせて観劇してるのと、DVDで見るのとでは感覚がちがうだろうなあとは、まず思った。でも、役者の人たちがあまり声を張らないので、その場にいたらぜったい聞き取れないだろうなあという気もした。
で、おはなしの内容としては、まぁだからなにもおこらないわけで、えーと、時々テレビで定点観測みたいな、72時間キャメラを回しましたみたいなドキュメンタリーをやってるけどそんなかんじ。ベタな演劇だと、芝居が始まってから終わるまでに舞台の上で起承転結のできごとが起こるもんじゃないかと思うのだけれど、この芝居は、それぞれの人生を生きる人たちが、キャメラの前というか舞台の上を横切っていく、で、一瞬、人生の断片を見せる、みたいなかんじ。
なのだけれど、それだけだったらたぶんお芝居にならないわけで、見ているとどうやら、いわゆる起承転結以外のやりかたで、いくつかの断片が組織化されていく。たとえば、美術館のロビーっていう設定なんだがそこでちょうどフェルメール展をやってるという設定で、絵画が日常を切り取ること、あるいはフェルメールがカメラ・オブスクラを使っていたみたいなことから、カメラで撮ること、あるいは眼で見ること、窓からさす光のほうを向くこと、みたいなテーマが、絵解きのようにでてくる。また、家族とか人のつながりの脆さみたいなテーマとか。そういうテーマがかすかに細部をつなぎあわせるかんじ。
まぁしかし、それだけだといまいち引きがないかもなあとおもいつつ見ていたら、なにげにいきなりシスターフッドで泣いた。

『「百合映画」完全ガイド』。百合映画とは。

表紙がわるくない。志村貴子なのだそうだ。新書だけれど、二段組みのようなかたちになっていて、見開きに4枠、基本的に4本の映画が紹介されている。日本編、海外編、アニメ篇、ということになっていて、公開年順に紹介されてる。活字がちょっと小さくて目を凝らしながら読む。で、それぞれの評が、「私たちは、この本を単なるバイヤーズガイドにもしたくなかった」「この本の紹介文はおおむね、すでにその作品を見た人が、同じくすでに見た人に向けて語るような態度で書かれている」という。そうすると、本書に取り上げられている映画をほとんど知らない自分としては、なんかこう入っていけないかんじはいなめなかった。あと、本書で取り上げる映画は、いわゆる「百合映画」だけでなく、むしろふつうはそう捉えられてはいない作品をそういう目で読むという「ほとんど妄想的」な捉え方によるものもあるということで、まぁそれはそれでいいのだけれど、そうすると百合映画そも何ぞやを掴めていない人間からすればよりいっそうわからないという面はある。ひたすら尊い映画ばかり300本ならべて気持ち悪くニヤニヤする本なのかと期待して読んだらそうでもなかった。

自分むけにCOVID-19関連について現時点でどう考えることにするかをまとめておく。(その6:7/23-)

toyokeizai.net

ひさびさに。
まえ書いたのが連休前で、このかんなにがあったかというと、緊急事態だのなんだのでそれなりの空気感で連休に突入し、それなりに封じ込めが成功しかけたようにみえたと同時に連休明けからいろいろ解除されていき、そこからはなぜかいろいろなことが解除される方向はあってもふたたび締められる方向はなく、そして新規感染者はふたたびうなぎのぼりになって今に至る。
今回がやばいなあと思うのは、この状況で、感染拡大を抑える要素がどこにも見えないまま進んでるという点。

もしもということを言ってもしょうがないのだけれど、もしも、東京があと半月長くきっちりと行動制限を延長していたら、もっと封じ込めが成功していたのではないか、そしたらいまごろもっと楽しい見通しをもって日々を過ごせたのではないか。

うっすらとした素人的な期待として、先の自粛期間を生き残ったウイルスは弱毒株が多いのではないか(自粛期間の中で生き残ることができたのは、ハッキリした症状を出さないで見逃されたものだけなのではないか)…とまぁ期待してはいたが、どうも残念ながらそんな都合のいいことはないらしく、重症化率も上がってきているそうだ。

あいかわらずTwitterで医療系のリストを見ている。その中で、ここにも以前引用した、微妙にニュアンスを異にしてた先生が、だんだんはっきりリストの中で浮いてきた感じになった。数日前にTwitterから離れられたようだ。うーん。

まぁ一般論として、研究者が仮に正しいことを言ったとしても、ふつうの人は、たぶん「センセの言うてはること半分ぐらいやけどわかるわー言うこと聞くわー」ぐらいのかんじで、
その「半分」というのはたとえば「会食を控えて100分の一作戦を徹底すれば、あとは、何をやってもいいですよ」と言った場合、「何をやってもいいですよ」のことを指す。あの先生は「何をやってもいいですよ」言うてはった、一般人の気持ちがわかりはるんやわ、あとの専門的なことはようわからんけど、もっとテレビで「何をやってもいいですよ」言うてください、一般人の気持ちをわからん似非医者をぶっ飛ばして関西のパワーを見せつけてやってください、等々。

ともあれ。前回書いていたころとはちょっと別のフェーズであることはまちがいない。
悪いことは、あのときのような行動制限が再度実現するような見通しがなさそうなこと(自分の感覚では、厳格な(わかりやすい)行動制限がなければ、「ふつうの人」は感染コントロールなかなかできないもんだと思っている。それはもうもちろん自分を含め。)。凪の時期にたぶんあまり体制が整えられてないこと。
良いことは、マスクや消毒液などが流通し(いまのところ)てること。いくばくかの知識が蓄積されたこと。
というわけで、自助努力すべしとなる。

気になっていたことについてデータが出ている。
・「発症前」と「無症候」の感染性のちがいについて
 →発症前の無症状者からの伝播が45%、そして無症状のまま経過する無症候性感染者からの伝播が5%
・会話での飛沫について
 →動画。無視しえないがマスクで防げる。
news.yahoo.co.jp

なにが「気になってた」かというと、
こちら(医療系のリストでTweetを見てるかたのひとり)の↓ブログ記事で、
note.com

無症候性感染と潜伏期の違い

 一般のヒトが混乱するのはここかと思います。どちらも症状が出てない状態で、本人自身が感染に気がついていない感染者という意味では同じですから、似てますね。でも臨床的な意味がぜんぜん違います。

 無症候性感染(不顕性感染)というのは、感染はしたけど症状が出ないまま終わるケースのことです。これはウイルスを出す量が少ないので感染力は少ないようです。

 これと似て非なるのが、潜伏期の患者。症状がないから無症候性感染と似てますが、数日後には発症する人です。新型コロナでは、発症直前の潜伏期の感染力が最も高いという話。これが感染コントロールを難しくしているところです。元気で気づいてないから動き回って他人にうつしてしまう。だから、一番ケアしないといけない人達です。

とあったことを、どう自分の中に落とし込むかなあとおもってたんである。
「発症前の無症状者からの伝播が45%、そして無症状のまま経過する無症候性感染者からの伝播が5%」ついでに「環境からが10%」「有症状者からが40%」という数字は、まぁどれも無視はできないけれど、感覚的な理解の助けになる。「無症候性感染者からの伝播が5%」というのは、無視できるほど小さい数字ではないけれど、そこそこ小さい数字ではあるように感じる。
まぁ、そもそもいまの検査の体制が、有症状の人を起点に検査をひろげていくしくみなので、無症候性感染者から無症候性感染で広がっていくケースを捉えがたい、というのはあるだろうけど、でもそんなことは誰でも気づくことでとうぜん考慮に入れたうえでのデータだと思うので、それなりに信用しておくことにする。

7/30。
東京都367人。大阪はきのう221人。
東京で367人の感染確認 最多 - Yahoo!ニュース
大阪221人感染に不安の声…「怖い」「驚き」「また自粛に戻るかな」 | 関西のニュース | ニュース | 関西テレビ放送 カンテレ
まぁ、減らす要素がなくて何にもしないのだから、増えるよなあ。
不思議なのは、これからたとえば「緊急事態宣言」的なものがまた出るとして、じゃあいつ出すのがベストか、というと、
いまのかんじだと、はやければはやいほうがよい、になりそうな気がするのだけれど(後になるほど増えるのはわかってるので)(経済、と言っても、ここに至ったら、状況が悪くなるほど経済のダメージも大きくなるんじゃないのか)、
なぜかそういう気配がなさそうなんだよなあ。なんなのか。

こういう↓グラフって、自分で確認するわけではないので、うまくできすぎてると大丈夫かなという気にはなるけれど…ふうん…
「実行再生産数」の上がり下がりをグラフにしてる。



とかいってたら、自粛要請がでるのか?
都 飲食店など営業短縮要請へ - Yahoo!ニュース
こういうのは、シンボリックなというか、いじわるにいうとスケープゴートというか、見せしめ効果というのか、派手で強烈な印象のやつを一発、ぶちあげるのがいいのだろうけれど(そのへんは、株価とか為替とかに対する日銀総裁とか大臣の発言みたいなもんで)(まぁやられるほうはたまらんわけだけれど)、
じわじわ小出しにやってると、あんまり全体への効果が出ないような気はするなぁ…

ブーアスティンが「疑似イベント」とか言ってるわけだけれど、「緊急事態宣言」が出る前に「○月✖日に緊急事態宣言を出すぞ」とか「緊急事態宣言を出すとの見通し」とか「緊急事態宣言が必要になるだろう」とか、情報の情報の情報…という連鎖が無数にあって、それらの合わさった効果が「緊急事態宣言」の効果ということになる。なので、緊急事態宣言が出る前にピークアウトしていた、などというのは、ちょっと芯をはずした観測じゃないのかと思う。
政治家でも専門家でもいいけど、たとえば記者会見によって、ちゃんと効果的にメッセージを出せるか、というのが重要で、うまくやれば「緊急事態宣言」そのものを実際に出すよりもずっと前に、ちらつかしてほのめかすだけで120%の効果を実現することができる、等々。たぶん、3月4月にはそれが多少なりともできていて、今はそんな芸当をやらなくなってる、ようにみえる。

8/2。
「新型コロナ対策、研究と政策現場での6ヶ月~西浦博教授ロングインタビュー~」
https://costep.open-ed.hokudai.ac.jp/like_hokudai/contents/article/1959/costep.open-ed.hokudai.ac.jp

8/7.

8/9.
news.yahoo.co.jp
感染から発症までの潜伏期間、というのが気になるところ。
もし、潜伏期間n日、と決まっていたら、その日数だけ家から一歩も出ないでいて、毎日健康チェックをしていて特に異常がなければ、感染していない可能性をそれなりに主張できるのではないか?
と、素人的に思いつくわけだが、

新型コロナの潜伏期間には1~14日と幅がありますが、多くの人がおよそ4~5日で発症します。

とあって、まぁ幅があり、仮に5日間ひきこもっていても、「多くの人」にあてはまらないばあいもあるのだったらリスクは無視できず、むしろ発症直前が感染性がつよいみたいなはなしであればやはり安心とは遠い気もするし、
また、

新型コロナには一定の割合で感染しても無症状の人がいます。
どれくらいの人が感染しても無症状のままなのかまだ十分には分かっていませんが、これまでの報告からはおよそ3~4割の人が感染しても無症状のままではないかと推定されています。

ということもあって、くりかえすように無症状で感染性があることも、まぁあるのだから、5日間ひきこもって発症していないことは、やはりあまり安心の要素にはなりにくいかなあ、という気もする。
えーとつまり、けっこう長いお盆休み期間があるとして、たとえばその前半にじっと引きこもっていて、安全が確認されたら後半に帰省、などという作戦はありえないか、と素人考え的に思ったのだが、まぁなにも策を弄さないよりは確率的にはいいだろうけれど、安心ということではやはりないなあと。

8/14.


大学でも、感染対策ということを考えないといけない。で、つらつら考えていると、たしかに↑のようなことも考えることになる。なのでいちおうブックマーク。
いちおう自前で非接触の体温計を買って、春学期にいちど大学に学生さんを集めたときには体温もチェックしたけれど、これも、「平熱だから大丈夫」ではない。明らかに発症している人をあるていどみつけるスクリーニングの意味はあるから、チェックせずに発熱した人を通すよりは確率的にはいいだろうけれど、だからといって他の感染対策を怠ることになるとまずい。結局は、全員が潜在的感染者であるという前提で、飛沫とエアロゾルの対策をきちんとやるいがいないわけである(まぁ、ほんとに全員が感染者なら対策することもなくなるのだけど)。
ということを念頭に置きつつ、まぁ、せっかく非接触体温計買ったから、使うけどね。けっこう「ピッ」っつってすぐ数字が出るので面白いよね。

8/18.
現段階の振り返り的な、専門家の人のインタビュー記事。まぁ、目新しいなにかにとびつかず、わかっていることを整理して基本を粛々と守るべしということか。
宴会2時間でも「大丈夫というわけではない」 新型コロナ第一波から学ぶべき教訓

つまり、人と人との距離感や、マスクをしている人が多いかどうかなども関わってくる。これだけみんながマスクをつけている国は他にはないですし、換気の必要性も日本では早くから呼びかけられてきました。(・・・)
例えば、東京で通勤電車に乗り、電車をおりたら手を洗う。職場に行ってできるだけ対面での会話をさけ、ランチは1人で食べ、帰りにスーパーで買い物して自宅へ、という中で基本的な感染対策をしていたら感染はしないと考えられます。
こうしたことから、日常生活を送る中で感染するというイメージよりは、会食したり、カラオケで歌を歌ったり、密な関係性の中での感染リスクの方が高そうだとわかります。

例えば満員電車で本当に感染していないのかは、「わからない」が正確な答えです。タクシーやバスの運転手さん、JRの駅員さんにも感染者は出ています。しかし、そんなに感染者が多いかと言えば、利用者に比べて少ない。
マスクをして、降りた後に手を洗えば、公共交通機関はある程度、感染を抑え込める場所だと考え、私はほぼ毎日使っています。
だいたい、今の推定で日本では22万人ぐらい感染したという数字があります。日本人全体で0.18%です。これは以前行われた抗体検査の結果ともほぼ同じ値です。電車やタクシーなどの交通機関で、いまほど対策をしていて感染が起きているならもっと感染者は出ているだろうとも思います。
 
ーー先ほど、スーパーでも感染対策していれば出ないとおっしゃいました。
 
お客さんとの対面での感染というよりは、家族からの感染が確認されています。リスクはゼロとは言えませんが、利用頻度から言えば、ここも感染を抑え込める場所だと考えます。

こういう言い方。
もちろん、正確には、現時点では、何をやっても「こうしたら感染しない」と言い切ることはできないにせよ、「この程度のことをしていれば、まぁまずは感染しないとしたものだ」というラインは、だいたい言えそう(「絶対に感染しない」と「何をやっても無力だ」のあいだのどこかにそのラインはあるだろう)なので、専門家の人がそういうメッセージをうまく出してくれるとありがたい。

8/19.
これも。
news.yahoo.co.jp

8/26.
有症状・無症状の感染者が、ウイルスを排出する期間は、だいたいいつごろからいつごろまでなのか。
www.carenet.com

新型コロナ、無症状者のウイルス排出量と臨床経過
提供元:ケアネット 公開日:2020/08/14
 
 無症状のSARS-CoV-2感染者の臨床経過とウイルス量に関する情報は少ない。今回、韓国・天安の地域治療センターに隔離されたSARS-CoV-2感染者のコホート研究で、感染者のウイルス排出を定量的に調べたところ、多くの感染者が長期間無症状で、無症状者のウイルス量は有症状者と同等であることが示唆された。報告した韓国・Soonchunhyang University Seoul HospitalのSeungjae Lee氏らは、この結果から「SARS-CoV-2の蔓延を防ぐために、無症状感染者の隔離が必要」としている。JAMA Internal Medicine誌オンライン版2020年8月6日号に掲載。
・・・
主な結果は以下のとおり。
・・・
・無症状患者110例(36.3%)のうち21例(19.1%)が隔離中に症状が出現した。これらの患者におけるSARS-CoV-2検出から発症までの期間の中央値(四分位範囲)は15(13~20)日であった。
・診断から14日目と21日目に陰性になった感染者の割合は、無症状患者ではそれぞれ33.7%と75.2%、有症状患者(隔離中に発症した患者を含む)ではそれぞれ29.6%と69.9%であった。
・診断から最初に陰性となるまでの中央値(SE)は、無症状患者で17(1.07)日、有症状患者で19.5(0.63)日であった(p=0.07)。
・下気道検体のエンベロープ(env)遺伝子のCt値から、無症状患者における診断から退院までのウイルス量は、有症状患者(隔離中に発症した患者を含む)よりもゆっくり減少する傾向があることが示された(β=-0.065[SE:0.023]、p=0.005)。
 
(ケアネット 金沢 浩子)
・・・

うーん、まぁこの数字だけではないんだろうと思いつつ(また、陰性か陽性かというのと、どのていど感染させる力を持っているウイルスをどの程度の量だけ排出しうるのかというのは別だろうとも思いつつ)、たとえばPCR陽性になったばあいにどのぐらいの期間の経過観察が妥当なのかというのは分かっておく必要はあるだろうな。
これ↓は4月の記事で、
www.emalliance.org

・・・
これによると、発症の2-3日前にはウイルス排出が始まっており、発症の0.7日前が感染伝播のピークになると計算されています。発症後は単調に感染率は下がり、7日以内には急速に下がっていました。
また、これまでの研究からPCR20日間ほど陽性となりますが、症状の発症後8日で感染力が急速に低下するという点は過去の報告(Nature. 2020 Apr 1. PMID:32235945)とも一致しているとしています。
ただし発症時期は患者本人の記憶と申告に頼るしかありません。ここに間違いが潜んでいる可能性はあります。
・・・

みたいな言い方。これも数字そのものはこれだけを信じるということでもないのだろうけれど、「PCR陽性」と「感染力」がイコールじゃないということはいえるんだったよね。
…とかいいつつ、よく見かける山形のグラフを探しているのだけれどなかなか見つからないな…といいつつ、Yahoo!の忽那医師の記事。5月末。
news.yahoo.co.jp

・・・
PCR検査はウイルスの遺伝子の特定の領域を検出しているものです。
ウイルスそのものではないため、死んだウイルスの断片を引っ掛けているだけのことがあります。
・・・
では「いつまで感染性があるのか」を推測するためにはどうすればいいかと言いますと、その方法の一つとして「ウイルス培養」を用いた方法があります。
生きたウイルスが培養できるということは、その時期には感染性のあるウイルスがたくさん排出されていると考えることができます。
・・・
新型コロナ患者の感染性を調査したこの研究では、発症から8日目まではウイルス培養が陽性になる事例がありますが、9日目以降で陽性になった検体はありませんでした。
つまり8日目までは感染性のあるウイルスが分離できたということになります。
ウイルスが培養されるためにはある程度のウイルス量が必要となるため、9日目から全く感染性がなくなるとは言い切れませんが、一つの指標として考えることができるでしょう。
また、台湾から100例の確定患者とその濃厚接触者2761人(このうち22人が後に新型コロナウイルス感染症を発症)についての報告では、濃厚接触者のうち発症したのは、発症前または発症から5日以内の確定患者と接触した人だけであり、発症から6日以降に確定患者と接触した人のうち新型コロナに感染した人はいませんでした。
これら2つの研究から、発症から1週間を超えればほとんど感染性はなくなることが示唆されます。
というわけで、発症から14日以上経過していれば他の人にうつす可能性はかなり低いと言って良いでしょう。