毎日新聞世論調査:ゆとり教育「評価せず」65% 見直し「反対」と「慎重」56%

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20050328ddm001040048000c.html

毎日新聞は26、27両日、全国世論調査(電話)を実施した。子どもたちが自ら考え、解決する力を重視してきたこれまでの文部科学省の路線(「ゆとり」教育)について「評価しない」との回答が65%と、「評価する」の24%を大きく上回った。評価しない理由では「学力低下を招いているから」が最も多かった。その一方で、文科省が検討を始めたゆとり教育見直しに対しては「もう少し成果を見極めるべきだ」という慎重な回答が36%で最多。「反対」と合わせると56%と、性急な路線変更に否定的な声が過半数を占めた。(2面に関連記事と「質問と回答」)

 ゆとり教育を評価しない人に理由を尋ねると、「学力低下を招いているから」29%、「学ぶ意欲の向上に役立っていないから」27%で、二つで過半数を占めた。「自ら考える力よりも、基礎的な学力を育てるべきだから」は18%にとどまり、ゆとり教育の理念より成果への不満が強いことをうかがわせた。「評価する」理由は「単なる知識よりも、自ら考える力を育てるべきだから」が70%と、圧倒的に多かった。

 文科省は「学力向上」のため、学習指導要領(小中学校は02年度から実施)の「全体」を見直す検討を始めている。国語や理数系の授業時間を増やしたり、総合学習の時間を減らす方向となりそうだ。こうしたゆとり教育見直しについては「成果を見極めるべきだ」の36%がトップで、「賛成」の32%を上回った。「反対」は20%だった。

 ゆとり教育を「評価しない」という人の中でも、見直しには24%が「反対」と答え、「成果を見極めるべきだ」33%と合わせると57%に上るのに対し、見直し賛成派は40%にとどまった。

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 ■ことば

 ◇「ゆとり」教育

 過去の詰め込み教育への反省から生まれた教育改革の路線。子どもたちにゆとりを持たせ、「自ら学び、考える力」の育成を目指す。02年度、小中学校に学校完全5日制と総合学習が導入される一方、学習内容は3割程度減ったと言われる。文科相の要請を受けた諮問機関、中央教育審議会は秋までに基本的な方向性を提言するが、総合学習削減や基本教科の授業時間復活などが焦点になるとみられる。

毎日新聞 2005年3月28日 東京朝刊

こりゃたしかに、単なる反動になりそうですね。
「「学力低下」だから「ゆとり教育」反対ー!」みたいな。
まぁ、急激な「見直し」には多少の抵抗はありそうなのだけれど、でも見直し慎重派や反対派よりも多い、4割の人が「見直し賛成ー!」っつって言っている。

ちなみに、おなじ世論調査の別の質問。

 ◇米産牛肉輸入「再開急ぐな」71%
 BSE(牛海綿状脳症)問題で日本が停止している米国産牛肉輸入の再開を同国が強く求めていることについては「再開を急ぐべきではない」71%、「早期に再開すべきだ」17%だった。政府に米国への外交配慮より「食の安全」重視の対応を求める声が強いことを示した。

 ◇内閣支持率43%
 小泉内閣の支持率は43%と、2月の前回調査より2ポイントの微増。不支持率は6ポイント減の33%だった。
 政党支持率は自民33%(前回比2ポイント増)▽民主17%(同3ポイント減)▽公明3%(同1ポイント減)▽共産3%(前回と同じ)▽社民3%(前回比2ポイント増)−−で、支持政党なしの無党派層は37%(同1ポイント増)だった。【木戸哲、北川仁士、平田崇浩】

 ◇ライブドア堀江社長
 ◇言動への評価、二分 メディア観「理解できない」63%
 世論調査で、フジテレビジョンとの間でニッポン放送の争奪戦を演じ、買収のあり方などに一石を投じたライブドア堀江貴文社長に関して尋ねた。同放送の経営権取得を目指した堀江氏の行動や発言については「支持する」42%、「支持しない」43%と、評価は真っ二つに分かれた。
 男性では支持(49%)が不支持(42%)を上回ったが、女性では不支持(44%)が支持(37%)より多かった。年齢別では30代で支持が56%と最も高かった。管理職世代の50代でも支持がわずかに上回ったが、20代と60代、70代以上では不支持の方が多かった。支持政党別では、幹部のライブドア批判が相次いでいる自民党の支持層で不支持が48%と多数だった。一方、岡田克也代表が理解を示した民主党の支持層では支持が56%と半数を超えた。
 一方、堀江氏がインターネット時代に既存のジャーナリズムは必要ないとの考えを表明していることについては「理解できない」が63%と、「理解できる」の22%を大きく上回った。【位川一郎】

というわけで、
ゆとり教育」はー!はんたーい!
「BSE牛肉」はー!輸入するなー!
ホリエモン」はー!わからなーい!
みたいな、
すごくらんぼうに単純化された「キーワード」にたいするたんじゅんな賛成反対のはなしにしてしまってる。
ゆとり教育」ってのが、ここでは、「ホリエモン」や「BSE牛肉」と並んで、たんなるキーワードっていうか、年末の「流行語大賞」の候補っていうか、「お題」になってるかんじ。
まぁ、いまさら挙げるのもださいけれど、蓮實重彦『凡庸な芸術家の肖像』の主題だろう、と。『紋切型辞典』の登録語ですね。「ホリエモン」ってどう?と問われれば、「日本的経営の古い常識に「一石を投じた」「問題提起」を支持はするけれど、彼のメディア観は「理解できない」ね!」とでも答えておけばだいたいオッケー、みたいな。

まぁ、世論調査なんてそんなもんっちゃそんなもんやけどな。

ちなみに、「ゆとり教育」について、たとえば去年あたまの大阪府知事選挙に出馬したエモやんが
http://www.nnn.co.jp/dainichi/kikaku/senkyo/oskfutiji2004/news/20031208-01.html

ゆとり教育の見直しを府民参加で議論すると主張する。「週五日制学力低下につながっており、再検討の必要がある」としている。

なんてカルーく言ってた一昨年末の時点で「ん?そんな単純な論点だっけ?」と言ってもよかったし、
学力低下論」がはやり始めたころに、さいしょからなぜか「階層」の問題とかが消されてひろまったというところで、「ん??」と言ってもよかった。
うーん、
たしかに、「学力低下論」を煽ったかたちになった研究者が、ナイーブだったちうか、もっと早い段階からの世論形成に対する戦略がもひとつたりなかった、みたいなこともいえるのだろうけれど、
私は、そのへんはあんましつっこむ気はしないです。むしろもっぱらメディアにつっこみたい。
世論に対する戦略とか読みの甘さ辛さという点ではともかくとして、いちおう、研究者として研究の次元では、提示された議論について私は、なるほどとおもっていたので。
そこからさきの、世論形成の次元での単純化については、自分なりに、たとえば学生さんと喋ったりするときに、気をつけて注意を喚起しながら喋るようにしていたつもりで、つまり、自分のできる範囲で自分の身の回りで授業料に見合った分の責任で、学生さんたちに伝えていたつもりだし、そうして注意しつつ扱う限り、「学力問題」として提起された問題はやっぱり重要だったわけで・・・

うちの専門からいえば、
なにしろ「生涯学習社会」みたいなオチになってほしいわけなので、「ゆとり教育反対、学力向上バンザイ!!」みたいなかたちで単純に学校教育の偏重にまたゆりもどすのは、いただけないわけですね。
じゃ、どうすんのよ?ってことなんやが。
すくなくともね、
こういう実際の問題を思考するときに、
キーワードにさんせーい!とかはんたーい!とかそういうやりかた
じゃないやりかた
で、じっくり考えることのできるような判断力を育てないといかんっていう話のはずなんすよね。「ゆとり教育」にせよ「学力問題」にせよ。べつに、大学生が分数ができるようになったからどうこう、みたいな話ではなくてね。
たぶんね。