ドイツの大学とか学校制度について。PISAの調査とか。

授業で潮木先生の『世界の大学危機』を読んでいる。きょうはドイツ。

世界の大学危機―新しい大学像を求めて (中公新書)

世界の大学危機―新しい大学像を求めて (中公新書)

で、ドイツの大学は入試がなくて、というあたりで、「それじゃ学力低下とかはどうなってるんですか」という質問があった。
PISA(OECD生徒の学習到達度調査)2003年調査 http://www.mext.go.jp/b_menu/toukei/001/04120101.htm
GoogleOECD 学力 ドイツ」
http://www.google.co.jp/search?q=%82n%82d%82b%82c%81@%8Aw%97%CD%81@%83h%83C%83c&hl=ja&ie=Shift_JIS
ドイツのPISAショック
http://www.iti.or.jp/flash35.htm

フラッシュ35

2002年4月18日
ドイツのPISAショック

国際貿易投資研究所
研究主幹 田中信世 
 
 PISAといっても、ピサの斜塔で有名なイタリア・フィレンツェ近郊の都市ピサのことではない。OECDがこのほど実施したProgramme for International Student Assessment(PISA)のことである。日本語では学習到達度調査と訳されている。

 同調査は、OECDが加盟32カ国の26万5,000人の15歳の生徒を対象に、「読解」「数学」「科学」の3分野について生徒の能力を評価するためにスタートしたプロジェクトである。PISAは2000年に初の本調査を実施し、以後、3年ごとのサイクルで実施することになっている。各調査サイクルでは3分の2のテスト時間を費やす主要分野を重点的に調査し、他の2つの分野は概括的な状況を調べるという方法をとっている。2000年調査では「読解」が主要分野になり、①情報の取り出し、②情報の解釈、③熟考・評価の3つの側面から「読解」能力が総合的に評価された。2003年調査は「数学」、2006年調査では「科学」が主要分野になる。2000年調査は、1998年調査手法の開発、99年予備調査および調査手法のテスト、2000年本調査実施、2001年調査結果の評価、2002年調査結果の公表という手順で実施された。

 この2000年PISA調査で、ドイツは参加32カ国中、「読解」(総合能力)で21位、「数学」と「科学」でそれぞれ20位という不本意な結果が明らかになったのである(ちなみに、日本は3分野でそれぞれ8位、1位、2位)。生徒の学力低下は、そうでなくてもEU諸国の中で構造改革の遅れが指摘されているドイツにとって、専門的労働者の不足、技術革新能力の不足など形で将来のドイツ経済に“ブロー”で影響が出てくる問題だけに事は重大である。
 そもそも、ドイツでは3分岐型の学校教育制度1)がとられ、これは二本建て制度(Dual System)を特徴とする職業教育2)とともに、第二次世界大戦後の奇跡の経済成長を支えたすぐれた教育制度として自他ともに認められてきた。それだけに、今回のPISAの調査結果に対するショックも大きかった。PISAの調査結果は、ドイツの教育制度が、銀行と企業間の株式持ち合いなどと同じように、戦後の経済成長期には有効な制度として機能してきたものが、世界的な経済のグローバル化の進展に伴う競争社会の出現や、急速な情報技術革新の進展などに即応できなくなり、機能不全に陥ったことを示す例として挙げられるかもしれない。
 今年1月、ベルリンで開催された「教育フォーラム」の最終会合での演説の中で、ブルマーン連邦教育研究相は、「PISA調査の結果は(ドイツの教育に)警告を発するものである。政治経済的に主要な地位を占め、教育国家としても国際的にトップグループ入るドイツが(PISA調査で)OECDの中で中庸の地位、ましてやそれ以下の地位にとどまるということはあってはならないことである」と述べており、ドイツ国民、なかでもドイツ政府が今回のPISAの調査結果に大きなショックを受けていることを物語っている。

 もっとも、ドイツの学校の学力低下が指摘されたのは今回のPISAがはじめてではない。PISA以前に実施されたTIMSS(Third International Mathematics and Science Study、第3回国際数学・理科教育調査)などの国際学力比較調査でもドイツの教育制度の弱点や生徒の学力低下が指摘されてきた。このため連邦政府は、各州政府の教育相(教育行政は州政府の管轄)で構成される「教育フォーラム」を組織し、ドイツの教育制度の改善や学力向上の方策を議論してきた。
 PISAの調査結果は、この一連の「教育フォーラム」会合の最終段階で明らかにされたものであるが、いずれにしても、ドイツの教育制度の改革に一層のモチベーションを与えるものになったことは確かである。

 前述の「教育フォーラム」の最終会合の演説の中でブルマーン連邦教育研究相は、今後のドイツ教育制度の見直しの方向性として、次の3点を挙げている。


子供の言語能力、読解力をつける教育を出来るだけ早い段階(幼稚園、基礎学校の低学年)で、集中的かつ個別能力に応じて行う(勉強の開始時期が遅くなればなるほど、それを取り戻すのが困難になる)。
教育を受けることが困難な人を特に支援する(公正の観点からのみならず、有資格専門労働者に対する産業界の需要を満たすためにも重要)。
教育制度の中に一貫した生涯教育の原則を組み込む。

 さらに、上記「教育フォーラム」は、2001年11月、「教育フォーラムの勧告」と題する240頁以上に及ぶ膨大な報告書を発表した。同報告書の中には、連邦教育研究相が挙げた3点のほか、①教育改革のカギとなる教員の質的改善・待遇改善、②教育への男女平等参加、③将来のための資格の取得(確固たる専門知識の習得)、④新しいメディアの利用、⑤移民に対する教育の充実、⑥教育機関の自己責任の拡充と外部評価の活用、など12項目が「勧告」として掲げられている。

 このようにPISAの調査結果を契機として、今後、ドイツの教育制度、教育のあり方をめぐる議論はますます活発になると思われるが、この問題は今年9月の議会選挙でも与党の社会民主党SPD)・緑の党連立政権キリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)の最大野党グループの間で大きな争点となるに違いない。PISAの調査結果によれば、戦後、社会民主党SPD)が伝統的に支配してきたノルトライン・ウェストファーレンなどの州で成績が相対的に悪く、CDU/CSUの次期総裁候補に推されているシュトイバー氏(CSU)が州首相を務め、同党が支配を続けるバイエルン州で成績が相対的に良かっただけになおさらである。
 シュトイバーバイエルン州首相は、PISAの調査結果が明らかにされると早速、各州レベルのPISAの結果に言及し、「SPDは最低の水準で教育を平等にするという方針をとっている」とシュレーダー政権を非難している。


注1)ドイツの教育制度は10歳の時点で「基礎学校」「実技学校」「ギムナジウム」の選択を行う3分岐型学校制度がとられている。義務教育は6歳から始まり9年間(一部の州では10年)続く。6歳になると「基礎学校(小学校)」に入学し、1〜4学年までの4年間(6歳〜10歳)が終わる10歳の時点で、①「基礎学校」(5〜9学年または10学年)にとどまるか、②「実技学校」(5〜10学年)、または、③「ギムナジウム」(5〜14学年の9年制の高等学校)のいずれにかを選択する。上記のうち、「基礎学校」を選んだ生徒は、義務教育終了まで基礎学校で勉強し卒業する。「実技学校」を選んだ生徒は、卒業すると、全日制職業学校である「専門上級学校」に進学できる。一方、「ギムナジウム」を選択した生徒は、10学年を終了した時点で「中等教育終了資格」を得て途中でやめることも出来るが、最終学年まで進んで卒業試験をパスすると大学入学資格である「アビトゥア」取得の道が開かれる。
注2)ドイツの職業教育は、①「企業内職業教育」と「定時制職業学校」の二本建て制度(Dual System)、または、②全日制職業学校(「職業専門学校」「専門上級学校」等)において行われている。二本建て制度は、職業学校が企業と職業訓練契約を結び、企業内で各職業訓練ごとの指針に沿った教育を行うもので、定時制職業学校就学が義務づけられている。二本建て制度による職業教育のうち、企業担当部分は「連邦職業教育法」、学校担当部分は各州の「学校法」で定められている。二本建て制度の職業教育は3年間で、国家試験をもって終了する。通常、「基礎学校」終了後、二本建て制度の職業教育を受けるのが一般的で、その数は同年齢層(16〜19歳)の6割以上を占める。


http://www.iti.or.jp/flash75.html

フラッシュ75 2004年12月20日
ドイツの学力は向上したのか
〜第2回PISAの結果から


(財)国際貿易投資研究所
研究主幹 田中 信世
経済協力開発機構OECD)が加盟国を中心とする41カ国で15歳男女を対象に実施した第2回目の2003年学習到達度調査(PISA;Programme for International Student Assessment)において、日本の学力が大幅に低下したことが議論を呼んでいる。
今回のOECDの学習到達度調査は2000年の第1回調査に引き続いて実施されたものであるが、日本は「科学的応用力」ではフィンランドに次いで今回も2位を維持したものの、「読解力」で前回の8位から14位に、「数学的応用力」で同1位から6位へと大幅に順位を下げ、今回新しい分野として取り入れられた「問題解決能力」においても4位にとどまった。

第1回調査におけるドイツの結果については、本欄記事“フラッシュ35”の「ドイツのPISAショック」で報告したが、第2回目の結果はどうであったのか。以下に、第1回目調査以降に試みられたドイツの学力向上に向けた取り組みとあわせて紹介する。

「数学」と「科学」でランク上がる

ドイツでは2003年に行われた第2回調査に216校、4,660人の生徒が参加した。
調査の結果は下表のとおりであるが、2003年においては、「読解力」は前回と同じ21位にとどまった。しかし、「数学的応用力」と「科学的応用力」では前回よりも改善がみられ、また、今回新しく実施された「問題解決能力」ではOECDの平均を上回る513点をあげ16位にランクされた。このように今回の調査の結果を見る限り、ドイツの学力は全体的に前回と比べてわずかながら改善しているようにみえる。

ドイツの2003年調査(第2回)の結果 点数 1 ) 順位
数学的応用力 503 19 ( 20 )
読解力 491 21 ( 21 )
科学的応用力 502 18 ( 20 )
問題解決力 2 ) 513 16 ( ‐ )
注1) OECD加盟国の平均を500点として換算。

2) 2003年調査で始めて実施。
3) 順位のカッコ内の数字は2000年調査時の順位。
(出所) OECDホームページ資料“Mean scores in mathematics, reading, science, and
problem solving in OECD coutries and all coutries”より作成

前回の調査の結果が振るわなかったことから、ドイツではその後、教育改革の議論がにわかに高まり、各州政府の教育相で構成される「教育フォーラム」が2001年11月に、「教育フォーラムの勧告」と題する報告書の中で、(1)教育改革のカギとなる教員の質的改善・待遇改善、(2)教育への男女平等参加、(3)将来のための資格の取得(確固たる専門知識の習得)、(4)移民に対する教育の充実、(5)教育機関の自己責任の拡充と外部評価の活用、など12項目を勧告した。
また、2002年には教育改革のためのアクションプログラムが策定され、その目玉として、2003年5月、これまで半日制であった「基礎学校」を全日制の学校にするための投資プログラム「将来の教育と保育」(Zukunft Bildung und Betreuung)を連邦政府と州政府の間で締結した。この投資プログラムはこれまでドイツで行われてきた学校関連プログラムの中で最大のものとされ、総予算40億ユーロが予定されている。州政府が既存校を全日制学校に改築したり全日制学校を新設する場合の経費を連邦が補助し、全日制授業を行うことによる追加的な教員等の経費を州政府が負担する内容となっている。このプログラムによりこれまでに創設された全日制学校の数は3,000校に上っている。
また、全日制学校創設プログラムに関連して、全日制学校形成の方法を映画化したフィルム「未来の温室〜ドイツの学校の成功への道」(“Treibhaeuser der Zukunft Wie in Deutschland Schulen gelingen”)が製作され、今年12月20日、全国の30の映画館で無料で一斉に上映されるという。
このほか、数学や自然科学の授業を改善するための試みもみられる。これは、SINUSプログラムと呼ばれるもので、「数学および自然科学の授業の効率を高めるためのモデルテストプログラム」(Modellversuchsprogramm“Steigerung der Effizienz des mathematisch-naturwissenschaftlichen Unterrichits ”)であり、バーデンビュルテンベルク、バイエルン、ノルトラインヴェストファーレン州等15州の30校が参加して実施されている。SINUSプログラムで得られた成果は2007年までに各学校に広めることになっており、成果の普及段階では連邦政府もプログラムに参加する予定である。SINUSプログラムと同様の試みは化学や物理の授業についても行われている。

このようにドイツでは前回の調査以降、学力向上に向けた取り組みが精力的に行われており、今回の調査でドイツの学力が特に「数学的応用力」や「科学的応用力」で上昇したのは、こうした取り組みが早くも成果を表わしはじめたと解釈できるかもしれない。

学校間の格差が一段と拡大

しかし、今回の調査結果に対する連邦教育省などの受け止め方はそれほど楽観的ではない。連邦教育省が深刻な問題として捉えているのは、「読解力」が依然として低い水準にあることに加え、順位の上がったその他の部門についても良い点をとった生徒と悪い点をとった生徒の格差が前回よりもさらに大きくなっていることである。連邦教育省によれば、この格差は、すべての生徒が同じ形態の学校で学ぶ学校制度を採用している国はもちろんのこと、ドイツと同様分岐型の学校制度をとっている他の国と比べても大きかったとしている。
ドイツの学校制度は10歳の時点で「基礎学校」「実技学校」「ギムナジウム」の選択を行う3分岐型学校制度がとられている。6歳の時点で「基礎学校」(小学校)に入学し、1〜4年までの4年間(6〜10歳)が終わる10歳の時点で、(1)「基礎学校」(5〜9年または10年)にとどまるか、(2)「実技学校」(5〜10年)に進むか、または(3)「ギムナジウム」(5〜14学年の9年制の高等学校)に進むかのいずれかを選択することになっている(ドイツの学校制度については、上記“フラッシュ35”の「ドイツのPISAショック」を参照)。
連邦教育省のホームページによれば、今回の調査の結果を、試験を受けた生徒それぞれの所属している学校の種類別に分析した結果、ドイツの学力の改善をもたらしたのは、専ら「ギムナジウム」に在籍している生徒の成績が良かったことによるものであり、「基礎学校」の高学年(Hauptschule)や「実技学校」に所属している生徒はむしろ成績が悪くなっており、これらの生徒の22%は、「基礎学校」を卒業する成績に達しない、あるいは「実技学校」の場合はその先の職業に就くことが難しいいわゆる「危険グループ」にある生徒であるという。
こうしたことから、連邦教育省では、ドイツの教育を取り巻く状況はむしろ前回調査時点よりも悪化したと受け止めている。確かに、連邦教育省が懸念するように、学校の種類による成績の二極分化が進行しているとすれば、ドイツの誇る職業教育を重視した3分岐型学校制度の見直しにも今後、議論が広がるかもしれない。
また、今回の調査結果から、幼稚園より前の早い段階から保育園などに通ったことのある生徒の成績が良かったことから、連邦教育省では、幼稚園以前の早い段階からの教育開始の必要性を強調しており、例えば自宅の新築に連邦政府が現在支給している補助金をカットすれば30億ユーロ以上を浮かすことができ、そのお金を州政府や市町村に回せば、早期の幼児教育のための教師、保育園保母などの経費に充てることができると主張している(連邦教育省ホームページ)。

◇       ◇       ◇

日本では今回の調査の結果を受けて、「読解力の向上を図るために各学校や教育委員会向けの指導要綱の作成や読解力向上プログラムを策定」(日本経済新聞、2004年12月7日付)したり、「ゆとり教育の見直し」(同紙、2004年2月8日付)を行うなどの議論が出てきており、今後、こうした観点に立って教育改革が検討されることになるものとみられる。
一方ドイツにおいては、前述の全日制学校創設プログラムやSINUSプログラムは始まったばかりであり、今後その成果が徐々に現れてくることが期待されている。また、かねて必要性が叫ばれている教員の質の向上に向けた努力に加えて、教育制度の見直しが行われることも考えられ、こうした努力が結実すれば、それ相応の成果が上がり今後学力の向上に結びつくことが期待される。

しかし、今日の日独における学力の低下は、両国で議論され、一部実施が試みられているような教育改革だけでは解決できないもっと奥深い問題を秘めているような気もする。例えば日本について言えば、今日の学力低下を招いているより根本的な原因は、少子化の進行に伴う生徒間の競争圧力の低下や甘やかし、少子高齢化に伴う社会全体の活力の低下、高度成長時代に見られたような社会全体が共有する目的意識の喪失、グローバル社会の出現で激化した企業間競争によってもたらされた雇用形態の変化(年功序列制の崩壊やフリーターの増大)などにあるような気がするのは筆者だけであろうか。学力向上などの教育問題は、狭い意味の教育改革だけでは対応しきれないところに、この問題の根の深さ、難しさがあるように思われる。

http://www.kyoto-keizai.co.jp/modules/wordpress/index.php?p=20059063
2005年1月10日(月曜日)
第676号:学力低下と人生の達成感
カテゴリー: 第676号- hodo @
 OECD(経済協力開発機構)によるPISA(生徒の学習到達度調査)の2003年の結果が先月発表された。これはOECD加盟国の15歳を対象に数学的リテラシー、読解力、科学的リテラシーの3分野を調査するもの。2000年の結果が発表されたときは、そのランキングからドイツの学力低下が問題視され、マスコミでは「PISAショック」という言葉が踊った。

 OECD教育局指標分析課長であるアンドレアス・シュライヒャー氏自身、実はドイツ人。「予想に反して悪い結果で驚いた」と当時、独国内の新聞のインタビューで答えているほか、ドイツ語の読めない外国人が増えたからだという分析やSPD社会民主党)が与党になっている州のレベルが低いといった指摘まで出ていた。ここまでくると分析というより混乱だ。

 あるいは、国語力については「自分たちの時にくらべると程度が低い」(8歳の児童の母親、フュルト市)という実感や、昔に比べて口語的な文章しか書けなくなっているという教諭の指摘もある(エアランゲン市)。今回は前回に比べて数学はすこし上がったが、総合的なレベルは平均程度でトップクラスとはいえない。「やはり、よくなかった」と、ため息のような論調の報道が目につく。

 しかしながら、実はドイツの学力が低いという議論は今に始まったことではない。60年代に欧州内でドイツの教育レベルが低く、優秀な学者は外へ出てしまうといったことが明らかになる。1964年にはある雑誌に「惨憺たるドイツ教育」という記事が掲載され、本にまでなった。これを受けるかたちで翌年には国家レベルでドイツ教育委員会がつくられた。同委員会は75年に発展的解消がなされるが、他にも国家レベルで改革プロジェクトが組まれるといった動きが断続的にある。

 それから今回、大学進学者の親もほとんどが最高学歴を持つ傾向があるということも発表された。しかし60年ごろの調査でもフランスやイギリスの大学進学者の25%が労働者層の出身だったがドイツは8%。昔から階層移動の少ない社会だが、その裏返しで職業意識が強く、親と同じ階層にいながら十分に達成感のある人生が送れた。 

 ところが近年、職業意識の低下や一般教育を重視する風潮は大きくなってきている。これまでの社会構造がくずれてきたことがPISAショックという形で噴出したという面もありそうだ。

写真**:今回もPISA関連の報道が多くなされた。学習意欲や能力が極端にない「危機的生徒」が22%におよぶ。上位と下位の分布が極端なのもドイツの特徴。

[>(ドイツ在住ジャーナリスト/[(http://takamatsu.kyoto-keizai.co.jp/|高松 平藏)])>]


ん?こっちでは

http://www.obasan.de/2005.7.18/2005,7.18,3%20.htm
ドイツのニュース

全国文相会議、州別PISA調査結果を発表

  全国文相会議は7月14日(木)、経済協力開発機構OECD)の2003年度国際学習到達度調査(PISA)の州別調査結果を発表した。ドイツは第1回目(2000年度)の調査で学力低下のショックを受けたが、今回は全州の生徒の学力が上昇しており、特に旧東独の改善が著しかった。バイエルン州が他に大差をつけて1位を守り、ザクセン州が2位に上昇した。最下位は再びブレーメンで、最も大きな改善を示したのはザクセン・アンハルト州だった。(2004年12月13日のニュースを参照)

2003年度PISA調査には1487校の44580人(15歳の生徒)が参加し、数学/読解力/自然科学/問題解決能力のテストが実施された。数学では、1位がバイエルン、2位がザクセン、3位がバーデン・ヴュルテンベルク、4位がチューリンゲンで、14位がノルドライン・ヴェストファーレン、15位がハンブルク、16位がブレーメンバイエルン州は国際比較ではフィンランド、韓国、オランダ、日本に次いで5位。

自然科学では、1位がバイエルン、2位がザクセン、3位がバーデン・ヴュルテンベルク、4位がチューリンゲンで、14位がハンブルク、15位がブランデンブルク、16位がブレーメン。国際比較では、バイエルン州フィンランド、日本、韓国に次いで4位。

読解力では、1位バイエルン、2位バーデン・ヴュルテンベルク、3位ザクセン、4位チューリンゲンで、13位ハンブルクブランデンブルク、15位メクレンブルク・フォアポメルン、16位ブレーメン。国際比較では、バイエルン州フィンランド、韓国に次いで3位。

問題解決能力では、1位バイエルン、2位ザクセン、3位バーデン・ヴュルテンベルク、4位チューリンゲンで、14位ノルドライン・ヴェストファーレン/ザールランド、16位ブレーメン。国際比較では、バイエルン州は韓国、フィンランド、日本に次いで4位。

最下位のブレーメンは前回よりも点数を上げたものの、依然として1位のバイエルン州との間に数学では約1年半の格差があり、全体的に南ドイツと北ドイツの格差が顕著になった。2000年の調査では、数学でOECD平均以上が2州だけであったが、2003年の調査では5州がOECD平均を上回り、7州がOECD平均値内に入った。OECD平均を下回ったのはベルリン、ノルドライン・ヴェストファーレンハンブルクブレーメン

読解力では、3州がOECD平均を上回り、4州が平均値内、9州がOECD平均を下回った。特に点数が低かったのはノルドライン・ヴェストファーレンハンブルクブランデンブルク、メクレンブルク・フォアポメルン、ブレーメン。自然科学では9州がOECD平均に達した。平均以下はノルドライン・ヴェストファーレンハンブルクブランデンブルクブレーメン。問題解決能力では、OECD平均以下だったのはノルドライン・ヴェストファーレン、ザールランド、ブレーメン。すべての4分野でOECD平均を上回ったのはバイエルンザクセンバーデン・ヴュルテンベルクだけであった。

第2回目の調査でも、生徒の学力が社会的出身(親の教育水準、職業、収入などの社会的要因)に大きく依存していることが顕著であるが、すべての州でこの傾向が見られるわけではない。例えば、バーデン・ヴュルテンベルク州では、社会的出身による格差が全く見られなかった。外国人の同化が他の州よりも進んでいることがその要因として考えられる。バイエルン、チューリンゲン、ザクセンブランデンブルクでも社会的出身による格差が少なかった。格差が大きかったのはブレーメンとノルドライン・ヴェストファーレン。しかし、国際比較で見ると、バイエルン州でもフィンランドや日本、韓国よりも社会的出身による格差が大きい。

また、今回の調査では、特に旧東独で数学の学力が大きく改善したことが明らかになった。全体的に、数学と自然科学では著しい改善が見られたが、読解力ではそれほどの改善が見られなかった。

全国文相会議は今回の改善を教育制度改革の成果として評価し、引き続き改革路線を継続する方針であることを明らかにした。PISA専門家は、調査結果はドイツ教育制度の「実質的な変更」を示していると評価する一方で、学力の低い生徒に対する支援にまだ大きな問題が残されていることを指摘した。ブルマーン連邦教育相はPISA調査の帰結として、全日制学校(Ganztagsschule)の普及と幼児教育の改善を各州政府に求めている。

一方、州別比較を背景に、ドイツ学校制度論争が再び活発になっている。ブルマーン連邦教育相は、4年生の後に進学コースを分けてしまう現行制度が正しいかどうかを検討しなければならないと語った。それに対して、バーデン・ヴュルテンベルク州のシャヴァン教育相は、州別比較を見れば、現行の学校制度(4年生の後に3つの進学コース)の将来性を疑う者はいないと反論している。バイエルン州のシュトイバー州首相は、「PISA調査結果はキリスト教民主同盟・社会同盟の教育政策の成果を表している」として、「バイエルンバーデン・ヴュルテンベルクザクセン、チューリンゲンがすべての4分野で上位を占めているのは偶然ではない」と語った。

(2005年7月18日)


で、あと、ドイツの大学進学率ってどうなん?という話も出てきて、
Google検索「ドイツ 大学進学率」
http://www.google.co.jp/search?q=%83h%83C%83c%81@%91%E5%8Aw%90i%8Aw%97%A6&hl=ja&ie=Shift_JIS

あ、さっきと同じ人の記事だ。

http://www.iti.or.jp/flash37.htm
フラッシュ37

2002年6月6日




高まるドイツの大学進学率




国際貿易投資研究所
研究主幹 田中信世 




 ドイツでは大学や専門学校で学ぶことが再び流行になってきている。2001年においては、大学や専門学校で勉強を始めた学生の数は98年と比べると明らかに増加した。
連邦教育省によれば、98年においてはギムナジウム(高等学校)卒業生に占める進学率はわずか27.7%であったが、2001年にはギムナジウム卒業生の32.4%が大学や専門学校に進学した。もっとも国際比較で見ると、他の先進工業国の高校卒業生に占める進学率が平均40%であるのと比べると、ドイツの進学率はまだ低い水準にある。

 ブルマーン連邦教育大臣は、ドイツにおける最近の大学進学率の向上は連邦教育促進法(Bundesausbildungsfoerderungsgesetz;Bafoeg)の改正が効果を表した明らかな証拠であると評価するとともに、「将来的には資格の乏しい人の就業機会はますます少なくなり、同時に労働市場ではますます多くの大学卒業生が求められるようになってきているので、われわれはこの道をさらに進まなければならない」と述べている(2002年5月31日付ハンデルスブラット紙)。

 確かに過去においては、ドイツでは他の先進工業国に比べて、大学や専門学校に進学できる資格を取得しようとする学生がかなり少なかった。筆者が最初にドイツに駐在した70年代半ばにおいては、多くの人は実技学校などでの職業教育を積んでマイスターや労働者となり、マイスターの指導の下で実際の生産現場で働くというのが一般的なスタイルであった。一方、大学を卒業した一握りのエリートが、国家においては政治家や官僚として、企業では経営の最前線に立って国の政治や経済全般をリードしていくといった図式が定着していた。このように学校卒業後の社会における役割分担が判然としていたことから、官僚や企業経営者、あるいは学者を目指す若者はギムナジウムに、また専門技術を磨く職人やマイスターを目指す若者は実技学校等に進んだ。両者の間には、互いに尊重する雰囲気があり、それなりに安定した関係が保たれていたように見受けられた。
 しかし、このように70年代においては、大学入学資格を取得する学生の数そのものは少なかったものの、入学資格を取得した者が大学に進学することはほとんど当然のこととされ、ギムナジウム卒業生の90%以上が大学に進学した。

 ところが筆者が2回目にドイツに駐在した90年代の半ばにおいては、こうした状況に大きな変化が生じていた。本格的な情報技術革新への取り組みはまだ始まっていなかったが、世界的な規模で経済のグルーバル化が進展しつつあったことに加え、92年のEUの市場統合の完成で、欧州に大規模市場が出現し、ドイツ企業はEU企業や第三国からの進出企業との間で激しい競争にさらされることになったのである。教育の現場でも、スピードと効率が要求される社会を反映して、70年代のように実技を重視した教育がオールマイティではなくなってきた。大学を卒業することが就職に有利という横並びの競争主義が高まり、ギムナジウムに生徒が殺到するようになったのである。
 こうした急激な変化は教育の現場に混乱をもたらした。ギムナジウムでは、増加する生徒に教師の数が追いつかず、大クラスの授業で教師は授業のレベルを落とさざるを得なくなった。一方、大学においてもギムナジウムと同じような現象が見られた。90年代半ばには入学希望者の増加に応じた大学の数の増加や規模拡大が追いつかなくなったため、一部の大学では人気のある教授の講義は教室に学生を収容し切れず、廊下にまで受講生がはみ出すケースもあるなど劣悪な教育環境が見られた。また、ギムナジウムに進む生徒が急増した結果、大学入学有資格者が増加した半面、経済的な理由で大学進学ができない生徒の数も急増した。このため、90年代半ばにおいては、進学有資格者の4人に1人が大学への進学をあきらめざるを得ない状況が発生した。

 学生に対する学資補助、下宿補助、ドイツ調整銀行による低利学資貸付など包括的な学生支援を内容とする連邦教育促進法の抜本的な見直しは、このような時代背景をもとに行われたものである。同改正法は2001年4月から施行されているが、その主な改正点は以下のとおりである(詳細は連邦教育省のホームページを参照)。


両親の収入状況など一定の条件を満たした学生に認定される「補助必要額」の最大10%の引き上げ(「補助必要額」はギムナジウムや大学など学校のレベルによって定められているが、最高の「補助必要額」が適用される大学、専門学校の場合、a.両親と同居の場合月額377ユーロ、b.両親と同居していない場合同466ユーロ)(1ユーロ=約115円)
「補助必要額」の認定に際して両親やその他の収入から控除される控除額の大幅引き上げ(例えば、結婚し同居している両親の場合、収入から控除される金額は月額1,440ユーロ)
外国で勉強する学生の場合は、両親と同居していない学生に認定される「補助必要額」に年間最高4,600ユーロの学費補助をプラス。さらにEU以外の国で勉強する学生には国別に定められた「外国補助」(月額51〜547ユーロ)を支給(ちなみに、日本に適用される「外国補助」は547ユーロで最も高い)
学生に対する貸付金の卒業後の返済義務を総額1万225ユーロに制限
旧連邦州(旧西独)と新連邦州(旧東独)の学生に適用される支援金額等の差別的な扱いの撤廃

 また、連邦教育促進法施行のための財源は、同法の規定により、ドイツ調整銀行による貸し付け分も含めて連邦政府が65%、州政府が残りの35%を負担することになっている。ちなみに2001年4月の抜本的な改正により、年間6億6,500万ユーロの追加財源が必要になったとされている。

 ドイツ学生援護会(Deutsches Studentenwerk;DSW)によれば、連邦教育促進法に基づく補助申請件数は過去1年間飛躍的に増加しており、旧連邦州では前年比20%、新連邦州では27%もの増加を示している。また。連邦教育促進法により支援された学生数は98年の24万4,696人から、2002年には29万1,245人へと19%増加した。連邦政府によって支援されたドクターコースで学ぶ学生や若手研究者の数も同期間に3万5,042人から4万3,693人へと25%増加した。

 上記の数字を見るかぎり、ブルマーン連邦教育大臣が言うように、確かに連邦教育促進法は一定の効果をあげたように見える。しかし、教育が数字だけで推し量れるものではないことも自明のことである。日本の大学教育の現状などから見て、同法が本当に効果を上げたかどうかを確認するためには、「学生が大学で勉強しているのか」(あるいは「本当に勉強したい学生が大学にきているのか」)や「教員の質など大学のレベルは保たれているのか」といった至極あたり前のことが前提として満たされていなければならないであろう。こうした点を加味して同法の評価を下すには、今しばらく時間がかかりそうである。

ドイツ連邦共和国外務省−ドイツの実情:教育の発展

http://www.tatsachen-ueber-deutschland.de/2162.0.html
大学の発展


文教政策によって大学は広く国民層に開かれたものとなった。例えば1952/53年の冬学期では、大学進学者の4%が大学に進学する伝統のない低所得者層の出身であったが、今日ではそれが約13%にのぼっている。また1952年には20%だった女子学生の割合は、現在では48%を超えている。

1960年以降、大学進学率は当時の8%から30%を超えるまでに上昇した。2003/2004年度の冬学期にドイツで大学に入学した人の数は31万5000人を上回り、そのうち女子学生の数は15万1580人であった。また、ドイツの大学に在籍する学生総数がこの年初めて200万人を超えた。