沖縄タイムス「小学生の肥満傾向増」

http://www.okinawatimes.co.jp/day/200604151300_05.html

2006年4月15日(土) 朝刊 27面

小学生の肥満傾向増
 県内公立小中学校の全児童・生徒を対象にした健康診断を基に県教育委員会がまとめた2005年度学校保健統計調査報告書で、05年度に肥満傾向と判定された子どもたちの割合は1975年度の親の世代の割合と比べて小学生、中学生とも平均約0.6%増え、全年齢(6歳から14歳)で高いことが分かった。県内では、特に生活習慣病の原因となる成人男性の肥満が問題視されているが、子どもの肥満傾向も深刻化しつつある現状だ。肥満防止に取り組む医師は「肥満割合の低かった親世代が今、肥満になっている。子どもたちが肥満の予備軍化する恐れは十分ある」と説明、社会全体での肥満対策、食育の必要性を指摘する。(金城雅貴)
 県教委は毎年「肥満傾向者」の割合の単年度データを掲載していたが、〇五年度は初めて七五年度のデータと比較し、分析した。比較したデータによると、肥満傾向者の割合が最も差が開いたのは十歳。七五年度時点は1・27%だったが、〇五年度は2・28%に増えた。十四歳は0・34%が1・03%になった。
 この健康診断は学校医が子どもを見た目で判定する視診に基づいた方法で実施している。
 文部科学省の学校保健統計調査報告書では、性別、年齢別に身長別平均体重を求め、その平均体重の120%以上の子どもを「肥満傾向児」と位置付けている。この方法によると、〇二年度全国平均で十歳男子の場合は10・6%が、女子は9・48%が「肥満傾向児」だった。十四歳でもそれぞれ9・9%と8・58%を占めている。
 肥満問題に詳しい那覇市医師会生活習慣病検診センターの崎原永辰副所長は「計算値を用いた調査が実態を反映する。県内の場合、視診の数字の四、五倍以上の実態があるとみていい」と説明する。
 七五年度のデータの基になった児童・生徒は現在、三十―四十代の親世代。〇四年の全国調査で、県内の四十代男性の47%、女性の23・7%が「肥満者」になっている。
 崎原副所長は「親世代は肥満で生活習慣病の問題も抱える。子どもの体格は社会的、家庭環境の影響を受けやすい。このまま成人になれば、二、三十年後はさらに深刻な社会問題になる」と指摘。「小さいころからの食の教育による自己管理が必要だ」と家庭での食育の大切さを説いている。
 
社会全体で取り組みを/健康推進会議 緊急アピール
 生活習慣病の原因となる肥満が県民に多い現状を受け、健康おきなわ2010推進県民会議(稲冨洋明会長)は十四日、(1)体重と腹囲を測る(2)かしこく食べる(3)体を動かす―などを盛り込んだ「肥満対策緊急アピール」を行った。稲冨会長は県庁で「県民一人一人が肥満の及ぼす影響に理解を深め、積極的に対策に取り組もう」と鼓舞。肥満対策を個人の問題とせず、社会全体で取り組むことを呼び掛けた。
 稲冨会長は「肥満は重要課題。肥満者の割合は全国より高く、取り組みの強化が求められている」とあいさつ。県民の約四割が肥満で、壮年期の生活習慣病による死亡率も全国より高いとし、県民や市町村、企業を巻き込んだ運動の必要性を訴えた。
 本年度の取り組みとして、県福祉保健部は「一日に何をどれだけ食べたらいいか」の目安となる「食事バランスガイド」の沖縄版を作成。約八千部を各市町村や学校、給食センターなどに配布するほか、肥満対策ポスター掲示で、啓発を図る。
 また各団体もウオーキング大会や外食栄養成分表示推進、運動指導やシェイプアップ教室などを予定している。同会議は県や市町村、医療関係機関や企業関係など三十二団体で構成。「健康おきなわ2010」は二〇〇一年度から一〇年度までの県民の健康づくり指針。