いじめ:法務省調査では「増加」 文科省とは逆の結果に

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20061023k0000m040118000c.html

「学校のいじめは減少している」という文部科学省の「いじめ」に関する調査に対し、「実態を反映していない」との指摘が出ているが、法務省の調査では増加傾向にある。同省の調査によると、学校でのいじめは05年には前年より2割以上増えており、文科省調査への疑問の声は大きくなりそうだ。また、各地の弁護士会自治体がいじめに関する相談機関を設置しており、「ぜひ相談を」と呼び掛けている。
 法務省の調査によると、学校内のいじめについて「学校側が不適切な対応をした」とする05年の人権侵犯事件数は716件で、04年に比べて22.6%も増加。01年は481件▽02年524件▽03年542件▽04年584件と増え続けている。いじめも執ようで、陰湿な事例が多くなっているという。
 法務省調査は、各地の法務局など人権擁護機関が、「いじめで人権を侵害された」と相談した当事者の申告などに基づいている。
 一方、文科省は、学校や自治体教委の報告を積み重ねる形だ。学校側がいじめを見落としたり黙認したりすれば、統計には反映されない。また、いじめ根絶を目指す自治体が発生件数を具体的な目標として数値化したため、「実態を目標に合わせて報告する例もあるのでは」との指摘もある。
 増加するいじめを重く見た法務省は、今年度からは相談ごとを自由に書いて法務局の人権擁護担当に無料で郵送できる「SOSミニレター」を約70万枚作成し、さらに18万枚増刷する。全国の小学5、6年と中学生に配布を進めている。【吉永磨美】
毎日新聞 2006年10月23日 3時00分

こうつながるか。なるほどねい。
というわけで、文部科学省叩きはこちらからも。

ただねえ、

法務省調査は、各地の法務局など人権擁護機関が、「いじめで人権を侵害された」と相談した当事者の申告などに基づいている。
 一方、文科省は、学校や自治体教委の報告を積み重ねる形だ。学校側がいじめを見落としたり黙認したりすれば、統計には反映されない。

というのの、どっちが「客観的」数字だ、ということではないんで、これはラベリング論のはなし。

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よい本です。ラベリングの視点からの「いじめ」論のスタンダード。

たとえば、

各地の弁護士会自治体がいじめに関する相談機関を設置しており、「ぜひ相談を」と呼び掛けている。
・・・
増加するいじめを重く見た法務省は、今年度からは相談ごとを自由に書いて法務局の人権擁護担当に無料で郵送できる「SOSミニレター」を約70万枚作成し、さらに18万枚増刷する。全国の小学5、6年と中学生に配布を進めている。

なんていう「営業活動」をさかんにやれば、それだけ相談件数の営業成績はあがっていくわけで、
また、こういう記事じたい、「学校は当てにならへんですよ、あいつら隠蔽工作ばっかでっせ、うちにきなはれ、弁護士をたてて訴訟に持ち込みなはれ」というメッセージを発信しているのだから、「営業活動」の一部であるといえる。
しかし、ぎゃくにいうと、「いじめ」の定義なんというのはふわふわしたもんなので、学校/文部科学省のやりかたがまるきしだめというわけでもないと思う。ふわふわしたものをふわふわっと把握して解決にもっていく、というやりかたは、あるだろう(だから、文部科学省の調査だって、世論の具合によってアホみたいに数字が動くのだけれど)。
片っ端から法的手段にもちこんで白黒つける、というやりかたと、ふわふわっとしたやりかたとがあるとして、
その一方が他方を駆逐するようなことになると、つまり、司法さえあれば教育は要らんのじゃないか、ということになるだろう。
そんな単純なものではない気はする。