コンピューター石田と結城聡の対局。若いというのはコンピュータープラスアルファなのだ。

結城くんだってもう30歳台なので若手ではないのだけれど、コンピューター石田と比べるといかにも若くて打ち盛り、というかんじがする。解説が林海峰、中国の大人のような解説。
で、布石からすでに石田が感じ悪い手を打ってしまい、それ以降ずっとうまくいっていなかったのについては、解説を聞いていてもなんとなくわかったんである。
でも、あらかた形勢が決まったかというあたりで石田が無理目の踏み込みから、やけっぱちみたいな無理目の細工をしかけたあたりで、林は「でもね、石田さんはこういうところで手にするのが上手いんですよ」なんて言っていて、じっさいにそれが手になって形勢が大いに再接近したんである。ここまでは、石田と、その上の林の熟年パワーかなあ、と思ってはいたのだ。
でも結局、そのすぐあとに、石田の大石のなかに結城がぽんと一つ放り込んで、頓死させてしまった。
これには、解説の林も「えっ」というかんじだった。もう一声ぬるい目の手を予想して解説していたので。
というわけで、そのへんの、動物的な反射神経というか感覚というのは、やはり若くて油の乗っているときにしかないのかなあ、と感じた。
将棋に比べて囲碁の方が、年長で強い棋士がたくさんいる気がするし、囲碁というのはそういう、全体的なバランス感覚みたいなものが効いてくるのでたんに若いオタクが猛研究して勝ちまくるというものでは、ないのだと思う。
でも、その「感覚」がほんとうにいきいきと躍動するのは、やはり若いうちなんかもしれん。
一局の碁をきちんとペースメークしてバランスよく、切れず踊らず腐らず、打ち進めていって、また、ここぞというところでのアクションはぜったいに逃さない、みたいな。
解説が上手とか、感想戦や局後の検討で深い読みを披露するとか、そういうのと別の次元のところに、やはり現役タイトルホルダーあたりの棋士は、いるわけで、その強さというのは、やはり若さもあるのかなあと思った次第。