<教員意識調査>会社員以上に、仕事に満足感と多忙感/「教職員の人事管理に関するデータ」文部科学省

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061212-00000002-mai-soci

<教員意識調査>会社員以上に、仕事に満足感と多忙感
12月12日0時33分配信 毎日新聞
 公立小中学校の教員は会社員よりも仕事に満足感を得ていると同時に、多忙感も感じる傾向にあることが11日、文部科学省の調査で分かった。また、教員自身は勤務実績などで給与に差をつけることを否定的にとらえているが、保護者は肯定的ということも分かった。
 文科省は10月、全国354校の公立小中学校教員8976人(回収数8059人)と保護者1万4160人(同6723人)を対象に意識調査を行い、平均点を算出。中央教育審議会の「教職員給与の在り方に関する作業部会」に中間報告した。
 中間報告によると、「仕事にやりがいを感じている」と答えた教員が5点満点で平均4.23点だった。一方、「仕事が忙しすぎて、ほとんど仕事だけの生活になっている」のは3.75点となり、調査会社が所有している会社員のデータと比較すると、教員は会社員よりも満足感と多忙感を同時に感じているという。
 また、「指導力不足教員らに給与などへの反映が必要」と考える教員は3.37点。保護者への同種の質問では4.41点となり、両者のかい離が際立った。【高山純二】

もとはこれですか↓
教職員の人事管理:文部科学省
ふむ。
教師の「多忙感」を指摘する議論は、以前からあって、それはたぶんもともと、教師の「燃えつき」とか、もっと具体的にはノイローゼになったり自殺したりということが問題にされた文脈で出てきたのだと理解している。
なので、「教員は会社員よりも満足感と多忙感を同時に感じているという」という方向性でまとめるのは「?」という感じがある。
教職の授業なんかでは、教師というのは専門職でっせ、というところからスタートしていて、専門職というのは、医師でも法律家でも、そもそもが「満足感と多忙感を同時に感じる」ような仕事なんである。それだけの専門的能力を持ち、またそれに見合った専門家としての人格性を持ち、自分の判断で自分の責任で仕事を遂行する、ってことになってる。だから、たとえば塾講師とはちがった存在として、責任を持って子どもを預かるとか、できるのですよ、みたいな筋書きである。
のだけれど、このところとくに、たぶん、専門職というものにたいして一般的に風当たりがつよくて、専門家としての人格などと悠長なことをいわずに、市場原理と競争原理でもって淘汰して顧客サービスの質を維持向上しろみたいなことに、なっているんであって、
そのへんのギャップでもって、教師の「燃えつき」が問題になってきたんだ、ということだと思う。
なので、
いまさら「教員は会社員よりも満足感と多忙感を同時に感じているという」というまとめかたは、奇妙で、むしろ、「教師は多忙やといいつつ、実際には会社員より満足感を持ってやっとるやないか!ぜいたくな!」という方向性に煽ろうとしているのだと思う。
でも、たとえばそういう流れに乗って、教員免許の更新制とかどんどん導入して雇用を不安定化していくことは、専門職をバイク便ライダー化するということなんである。

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それによって「教育」なんてできるのかねえ、ということで、お話はもとに戻って、教職というのが専門職でなければならない理由があるとするならばそれは、やっぱりなんだかんだいって「教育」というのはどっかで人格性という局面をもつからなんやろうとおもう。

ちなみに

また、教員自身は勤務実績などで給与に差をつけることを否定的にとらえているが、保護者は肯定的ということも分かった。

というのはバカな話で、そりゃ自分の給料なら安定する方がいいし他人の給料なら無責任になんでもいえるんであって、そんなことは調査しなくてもあたりまえなのだから、調査によって「分かった」とか書いているだんかいでおかしい。
実際、私だって、バカな記事しか書けない新聞記者はさっさと首にすべきだと思うし購読者の誰だってそう思うだろうけれど、新聞記者さんに訊けばそうは答えないでしょう?
教師なんて、べつに大儲けしようと思ってやってる仕事ではないのであって、もし「勤務実績」によって給料が上がるチャンスがありますなどと言われても、おいおい「勤務実績」って何だよ?こちとら給料アップ目指してやってるわけじゃないんだよ、と言う人が多いんだと思う(し、新聞記者さんだってそうだとおもうよ)。そこんところをきちんと汲まないと、教育(でもジャーナリズムでもおなじですが)をシステムとして腐らせていくことになる。

授業ではそのへんの話についてはこの辺の本を使ってます。

教師の現在・教職の未来 - あすの教師像を模索する シリーズ子どもと教育の社会学 (5)

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教育のエスノグラフィー―学校現場のいま

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