「朝青龍診断に医学者から“物言い”「神経衰弱」は戦前の病気」

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朝青龍診断に医学者から“物言い”「神経衰弱」は戦前の病気
8月6日8時3分配信 スポーツ報知
 2場所連続出場停止と謹慎などの厳罰を受けた横綱朝青龍(26)が5日、精神科医の診断で「神経衰弱及び抑うつ状態」と診断されたことについて、医学者から異論が出た。精神科医香山リカさんは「今回の重い処分や厳しい批判を受けた反応性のうつ状態ということだろう。針のむしろでストレスが多い環境が、症状を悪化させかねない、ということも理解できる」とした上で「この状況を招いた本人が謝罪会見もしないうちに診断結果が発表され、批判しにくいような状況になるのは、精神科医として複雑な気分だ。診断が隠れみの的に利用されるようなことはあってほしくない」と厳しい。
 一方、世田谷井上病院の井上毅一理事長は「神経衰弱は夏目漱石がかかったことで有名な、戦前の病名。米国の診断基準からもすでに消えている"亡霊"のごとき病名が出てくるとは、さすがは歴史のある相撲界ですね」と苦笑。胃腸科が専門の同理事長は、胃かいようで亡くなった文豪・夏目漱石の研究を長年続けてきたが「神経衰弱の漱石に夫人が胃薬だと言って睡眠薬を飲ませていた」というエピソードを紹介。特効薬は「休養するのではなく、あるがままに生活させること」という。つまり「神経衰弱」は「モンゴル帰国」を後押しする診断名ということになる。

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朝青龍うつ病の手前、放置なら発症も
8月6日9時54分配信 日刊スポーツ


 横綱朝青龍(26=高砂)が「神経衰弱および抑うつ状態」と診断された。4カ月の謹慎処分などを受けて精神不安定な状態が続いていたため、5日に東京・墨田区の自宅で精神科医の診察を受けた。往診した本田昌毅医師(37)は、放置すれば近日中にうつ病になる可能性を示唆。本人が希望しているモンゴルでの帰国療養を勧めた。診断書を受け取った高砂親方(51=元大関朝潮)は今日6日、処分決定後初めて本人と面談する。北の湖理事長(54=元横綱)も帰国治療に柔軟な姿勢を見せており、早期実現する可能性も出てきた。
 朝青龍の病状が「神経衰弱および抑うつ状態」と判明した。往診を終えた本田医師は「うつ病の1歩手前の状態です。このまま3日もすれば、うつ状態になることも考えられる。うつになったら3カ月は治療が必要」と明かした。朝青龍はこの日まで、3日連続でまともに食事が取れず、感情の起伏が激しい状態が続いている。同医師の問診にもすぐには答えられず「タイムラグがある」という。
 帰国治療を希望する朝青龍は1時間以上に及んだ治療中に「つらい。モンゴルに帰って治したい」と話したという。同医師は「うつにならないためには、一刻も早く本人にとって最良な環境での療養が必要です。母の料理が食べたいとも言っていたし、最低2週間はモンゴルに帰した方がいいと思います」と帰国治療を勧めた。同医師は横綱の自宅で診断書を作成し、関係者を通して師匠の高砂親方に渡した。
 まだ弟子とじっくり病状のことを話していない高砂親方は「近いうちに私が行って話してみます。今日、明日モンゴルに帰すことはない。私にはそういう権限もない」と話し、6日に弟子の元に出向いて「緊急面談」することを示唆した。渡された診断書は「ある程度の辛抱と我慢が必要だし、本人と直接話してから」と、北の湖理事長には報告しなかった。
 「緊急面談」の結果、高砂親方が「帰国治療」が必要と判断した場合には、同理事長に診断書を添えて報告することになる。「帰国を許すと謹慎にならない」という反対派もいるが、北の湖理事長は前日に続きこの日も「罰則を受けて、気持ちの整理が付かないうちに外出もできない状況だし。病状がはっきりした場合には真剣に考えたい」と、柔軟に対処する姿勢を示した。今週中にも持ち回り理事会を開き、「帰国治療」の許可が下りる可能性がある。【盧載鎭】

なんか軽くスルーされてそうなニュースではあるけれど、あらためて考えると、精神医学って何よ?というニュースではありますね。
病気の名前っていうのは、その病気のおこるメカニズムとか、原因とか、そういうのをぜんぶふくんでるはずなんで、病名がつかわれなくなったということは、現在の精神医学ではそうした病名に相当するメカニズムとか原因とかの存在が否定されている、っていうことだと思うのだけれど。
たとえていうと、横綱は、存在しない病原菌に侵されているという診断書を渡されたことになる。でもって、それに基づいた処方箋を出されたみたいなことになるんじゃないかのだけれど、それが「世間的には」通用してしまいそうなのがすごいなあと。
でも、そもそも精神医学って何?っていうもんだいがあって、そもそも精神医学にそういう原因論的な論理が成立するのか、というだいもんだいがでてくる。精神医学が身体の医学とおなじように診断を下したり治療をしたりしてることじたいが、あらためてかんがえると自明のことではないかもしれない、という話があって、フーコーが若いころに書いた文章でそういうあたりを出発点にしていたような気がする。

精神疾患と心理学

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でよく考えると、香山リカにせよ、精神科医なんちゅのは、そもそもがなんらかのかたちで診断を社会的に利用されることを足がかりにしてこんだけ(耳鼻咽喉科や整形外科とくらべて)ポピュラーになっとるんやないか、といういいかたもできますね。