1995年時点で、「戦後50年を振り返る」的にまとめたもの。
住宅規模の拡大と間取りの変遷、というコラムでは、田の字型の農家やら公団住宅やらの間取り図がでててべんりかも。
http://wp.cao.go.jp/zenbun/seikatsu/wp-pl95/wp-pl95-01101.html#sb1.1.1.1
住宅規模の拡大と間取りの変遷
本文でも述べたように,一人当たり住宅面積は10m2から30m2にまで拡大した。平均5人の世帯人員が3人に減少したことを考えると,平均住宅面積は50m2から90m2に拡大したことになる。戦後50年を経て,都市化,サラリーマン化,核家族化などの社会環境の変化に伴い,広くなった住宅の間取りはどのように変化してきたのだろうか。
日本国民の多くが農業に従事していた時代,住宅の間取りの一つの典型は,農家にみられるような,部屋を4つ並べた田の字型に,家事,農作業用の土間がついたものだった(図1)。冠婚葬祭の客寄せに広く使う関係もあって,各部屋を仕切っている襖を外せば大広間になる間取りとなっており,部屋の独立性は極めて小さかった。
明治以降の近代化により,新しい社会階級としてサラリーマン階級が登場した。このサラリーマン住宅の初期の例として中廊下型住宅があり,この型は戦前の日本の都市中流住宅の一つの典型であった (図2)。その特徴は,家の中に生産の場所を持たないことと,部屋間を廊下を使って行き来できるため,部屋の独立性が高まったことだった。しかし,部屋を襖で仕切る点ではそれまでと同じで,プライバシーの確立とまでは行かなかった。さらに,家父長制度の下,座敷,応接間など主人の場所,接客の場所が重視された型であった。ただし,この頃から,サラリーマン階級を中心に,住宅を労働から切り離された「いこいの場」としての意識が生まれるようになる。
終戦を迎え,住宅事情は悪化した。戦災からの復興が急務とされ,国民の資力の低下もあって,住宅の規模は縮小した。さらに,家父長制度の崩壊により父親の権威が弱まり,家庭内での個人の権利が尊重されるようになった。住宅が小さくなり,接客の場などが縮小された。この時代の住宅は,茶の間を中心にして部屋が配置され,壁の少ない開放的な間取りとなっていた(図3)。
高度成長期直前の1951年,公営住宅51C型において,台所と食事室を合わせたダイニングキッチンの原型となる新しい提案がなされた(図4)。この型は,狭い面積の下,親子の寝室として2部屋を確保した上で,いかに食寝分離(食事をする場所と寝る場所の分離)を実現するかを主眼としていた。この間取りは,1955年に発足した住宅公団に採用されることで普及する。公団は,ステンレス流し台の大量生産に踏み切り,椅子やテーブルの導入を進めることで,ダイニングキッチンを住まいの近代化の象徴へと押し上げた。これと並行して,サラリーマン住宅は完全に生産行為と切り離され,家の中心は主人ではなく,主婦と子供となっていく。ダイニングキッチンの次の変化は,子供部屋の登場である。子供部屋は,当時始まっていた受験競争を背景にして勉強部屋をつくるという意識が強かったようである。
60年代央に台頭してきたプレハブ住宅やマンションは本格的なリビングルームの普及に大きな役割を果たした。70年代央以降,台所が再び独立するようになり,食事室とリビングルームがひとつになったDL型が増加した。
こうして戦後住宅は,食寝分離に始まり,後に住宅面積の拡大に伴い,子供部屋の確立,リビングルームの確立へと発展した。現在では,夫婦と子供がそれぞれ個室を持ち,食事室,居間を中心とした家族が集まれる共用部屋を設けることが新しい住宅のイメージとして定着している(図5, 図6)。
(小林秀樹「大正期からの間取りの変遷」『CITY&LIFE』27号1993年3月,扇田信他『新建築学大系7住居論』彰国社,住宅金融公庫監修『図解日本の住宅がわかる本』PHP研究所)
↓
授業で
- 作者: 三浦展
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/12/20
- メディア: 新書
- 購入: 3人 クリック: 36回
- この商品を含むブログ (46件) を見る
あと、
住まいと家族をめぐる物語―男の家、女の家、性別のない部屋 (集英社新書)
- 作者: 西川祐子
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 2004/10
- メディア: 新書
- 購入: 2人 クリック: 11回
- この商品を含むブログ (24件) を見る
- 作者: 西川祐子
- 出版社/メーカー: 三省堂
- 発売日: 1998/11
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 4回
- この商品を含むブログ (5件) を見る
- 作者: 上野千鶴子
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 2002/11/01
- メディア: 単行本
- 購入: 2人 クリック: 22回
- この商品を含むブログ (23件) を見る
ちょうどいま通勤電車で読んでる
東京から考える 格差・郊外・ナショナリズム (NHKブックス)
- 作者: 東浩紀,北田暁大
- 出版社/メーカー: NHK出版
- 発売日: 2007/01/27
- メディア: 単行本(ソフトカバー)
- 購入: 14人 クリック: 130回
- この商品を含むブログ (253件) を見る
- 作者: 猪瀬直樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2005/03/08
- メディア: 文庫
- 購入: 4人 クリック: 72回
- この商品を含むブログ (57件) を見る
日本の近代 猪瀬直樹著作集6 土地の神話 第6巻 (第6巻)
- 作者: 猪瀬直樹
- 出版社/メーカー: 小学館
- 発売日: 2002/04/26
- メディア: 単行本
- 購入: 1人 クリック: 9回
- この商品を含むブログ (11件) を見る
ついでに
- 作者: 速水融
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2001/10
- メディア: 新書
- 購入: 8人 クリック: 120回
- この商品を含むブログ (32件) を見る
- 作者: 速水融,小嶋美代子
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2004/01/21
- メディア: 新書
- 購入: 1人 クリック: 12回
- この商品を含むブログ (15件) を見る