『教育分析の実際』。火サスのごとき面白さ。

いきおいをつけてもう一冊。

教育分析の実際:家族関係を問い直す男性の事例

教育分析の実際:家族関係を問い直す男性の事例

これまたおもしろい。おもしろすぎる。
カウンセリングというのは、まぁ個人面接のばやい、カウンセラーとクライアントだけの作業で、外からは何やってるかわからない。
ところがこの本、50分×20回の一年間にわたるカウンセリングのセッションの逐語的な記録を大公開してる本なのである。なので、カウンセリングがどのように進行していき、そこで何が起こっているのかというのを、かなり実感できる。
ただし、
これ、東山先生のゼミ周辺の人の参加する授業という枠組みで、公開でおこなわれたカウンセリングで、いわゆる「教育分析」というやつ、つまり、カウンセラーが修行の一環として「自分がカウンセリングを受ける」、というやつである。したがって、ここでのクライアントは、すでによそではカウンセラーとして仕事をしている35歳の男性(東山ゼミの研究生)。カウンセラーはもちろん東山先生。
教育分析だからといって、あるいは公開だからといって、このカウンセリングのセッションが贋物になってるわけではない。そこんところは、読むとわかるところ。
ただし、
1)20回という、カウンセリングにしては短い枠組みでやっている。ので、到達すべき一段落の区切りまでなかなかいかず、また、ときどきカウンセラーが進行を急ぐように見える
2)公開なので、やはりいくぶんメリハリのきいた進行になっている
3)クライアントも業界人(のはしくれ)なので、もっともらしい業界用語を使おうとする癖がときどきでてくるし、カウンセラーがちょっとぐいぐい来たときにもけっこう対応できているように見える
てなあたりはちょっと差し引いて読むほうがいい気はする(じっさいのふつうのカウンセリングはもう少しぼやあっと進行するんじゃないかと想像する)けれど、
そこは恐るべき東山先生のこと、勘所は外さずに、自然かつ迫力のあるセッションを展開している。
で、その結果、素人が読んでふつうにおもしろいんである。おもしろすぎる。火サスのようなのである。