通勤電車で読む『語学力ゼロで8カ国語翻訳できるナゾ』。これはライフハックの本だ、という紹介にまんまと乗って読んで面白かった。

さる場所(究極のライフハック仕事術 - 語学力ゼロで8カ国語翻訳 | シゴタノ!)で薦められていたので、買って読んでみた。おもしろかった。
著者は特許関連の翻訳会社の社長の人で、まぁ語学力ゼロってのは言い過ぎで語学系短大フランス語卒なのだけれど、でもさすがに個人で翻訳者をやりはじめて数年で8カ国語を翻訳したというので、そのいみでは知らない言語でも翻訳してるわけである。それで、納期が早くてクオリティの高い翻訳仕事だってんで口コミと紹介で顧客がどんどん増えてばっちり大成功、という人。
で、なぜそれができるか、というと、翻訳の仕事というのを、徹底的に細分化して見直し、合理化していったってところにあって、そこがいかにもライフハック方面の人がひざを打つかんじなのである。
で、思うに、ひとつには、翻訳って、「ことば」なわけだし、誰かの「いいたかったこと」とか「思い」とかを別言語で写し取る、ってわけで、そこにはやっぱしある種の思い入れみたいなものがこもってしまうような気がして、たぶんこの本がいちばんおもしろくてライフハックっぽいところは、そういう思い入れがカラッカラに欠如している、クールでドライなところなんじゃないか、と思う。与えられた文章をパソコンに入れて、ワープロソフトの一括変換を使って、わかってる単語を片っ端から変換していく、とか(だから、翻訳作業は、一文一文を村上春樹的にこりこりと進めていくというより、全体をばあーっと、繰り返し塗り重ねていくイメージ)。分厚い辞書や辞典の類は、片手でめくりやすい厚さにバラしてから使う、とか。たしかに、そうやって合理化とか自動化とかできるところをすべてやってしまったあとに、ほんとの翻訳者の、人間じゃなきゃできない仕事があって、そこのクオリティを高くすることに集中しよう、そうしたら、速くてしかもクオリティの高い仕事ができる、という。おもしろいねえ。