枕元において読んでた『セラピストは夢をどうとらえるか―五人の夢分析家による同一事例の解釈』。おもしろかった。同じ釜の飯を食べていた人たちだなあという感想もだけど。

セラピストは夢をどうとらえるか―五人の夢分析家による同一事例の解釈

セラピストは夢をどうとらえるか―五人の夢分析家による同一事例の解釈

ある一人のクライアントさんの10個の夢を、5人のセラピストがそれぞれ解釈する、という本。こういう企画は好きだ。で、おもしろかった。
で、このクライアントさんのそれらの夢については、編者は別の本で一冊書いていて、それを先に読んでた。
夢の分析 (講談社選書メチエ)

夢の分析 (講談社選書メチエ)

で、じつはこのクライアントさんが、なかなかすごい人であるらしく、すごい夢をどんどん見る力のある人であるようだ。なので、この前の本を読んだときにも、けっこうすごいなあと思いながらも、「そういう特異な人の「すごい」夢を分析したらそりゃおもしろいんだろうけど、それ見て喜んでても一般人の「ふつう」の夢分析から離れていくんじゃないかなあ?」とは思っていて、また、「そもそもこの人がそんなすごい人なのか?そんなすごい夢なのか?解釈のし過ぎなのではないのか?」とも思ってたところもあるのだ。
なので、著者以外の4人のセラピストがそれぞれ解釈したっていう企画は、いいと思ったものだった。
で、4人の解釈は、編者が聞き役になるインタビュー対談の形で書いてあるので、まぁ編者が微妙に誘導して方向付けしてるように見えなくもないところもなくもないのだけれど、それでも、やはりかなり、これらの夢に対する解釈の大筋は一致しているように見えたし、開口一番であるか解釈の中盤であるかはともかく、誰もが口をそろえてこのクライアントさんを、すごい人だ、と言ってるように見えるのはやはりすごい。それは、クライアントさんのすごさが確かめられたってことでもあるだろうし、夢分析ってものが基本的にある範囲の確実性を持ってることが確かめられた、ってことでもあるのだろう。もちろん、5人の解釈はそれぞれのセラピストの持ち味とか目の付け所とかによって微妙に切り口を変えてる部分もあるけれど、本の中での言い方で言えば、ある山を登るのにどのルートを取るのか、ということだろうというふうには見える。
まぁしかし、じつは著者プロファイルを見てみると5人の人は同門ないし同じ職場の人たちで、それはこの夢分析というのの老舗がなんといってもそこなのでそりゃそうなのだけれど、うーん、同じ釜の飯を食べていた人たちは同じ夢解釈をするんだなあ、というふうに見えなくもない。まぁ、雰囲気的に心当たるところもあるかも。

じつは、同種の企画の本としては、自分にとってこの辺のジャンルのバイブル?にもなってる『症例研究・寂しい女』っていう本があって、
症例研究・寂しい女

症例研究・寂しい女

これは、ユング派左派、右派、フロイト派、アドラー派、ロジャース派、みたいな人たちが寄ってたかってあるひとつのケースの夢その他を解釈して見せている、という本。こうなると、解釈の触れ幅はかなり大きくなるし、それでもやはりたぶん基本的な見立てのラインは一致してたと思う。