- 作者: 鈴木信一
- 出版社/メーカー: 祥伝社
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- 作者: 橘木俊詔
- 出版社/メーカー: 岩波書店
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著者はもと高校の国語の先生の人のよう。文章講座の講師もやっておられるよう。
文というのは、なにかを言い尽くすということは原理的にありえないわけで、だから、文をひとつ書いたら、同時にそこには欠落が発生することになる。そしてその欠落を補うために文を足していったら、その結果さらに欠落が増殖することになる。そんなわけで、文章というのは、書いていくと書けるのである、と。
で、そういう言い方自体は、作文術の発想としては、ちょっとおもしろそうな気もする。自分の既に書いてきた文章を振り返り、それを分析してそこに欠けている何かを論理的に割り出して新しい一文を書く、というわけで、そういうのはまぁわからんではないし、「頭の中にあるもの」をそのまま反映させて文字に書き起こすみたいな作文観よりは、実際的であるようにも見える。書くこととはすなわち読むことなのだ、というふうに言い換えれば、なかなかおもしろくもある。
なのだけれど、じつは自分的にはこの本、ちょっと乗れなかったところもあって、それは、この本に「ジャンル」の概念がなさそうだってところ。
書くこととはすなわち読むことなのだ、というのは、ものすごく原理的にはそのとおりなんだけれど、たとえば学生さんが論文やレポートを書く際の作文のやりかたのヒントにはならない気がする。つまり、レポートでもエッセイでも小説でも日記でも当てはまってしまって、けっきょく当てになんない気がする。たとえば、タイトルに「800字」とあるけれど、じゃあ800字の文章のジャンルってなんなのか。さいしょのところで、天声人語とか社説とかなんやかんやを挙げて、平均するとだいたい800字だとか言ってるのだけれど、それは逆に、ジャンルというものを意識してないって言ってるようなもんだと思う。また、800字が書ければ長編小説も書ける、みたいに言ってるけれど、それは乱暴だと思う。