- 作者: 伊藤絵美
- 出版社/メーカー: 星和書店
- 発売日: 2006/02/20
- メディア: 単行本
- クリック: 7回
- この商品を含むブログ (3件) を見る
面接の実際、というけれど、やはり本物のクライアントではなくて、ロールプレイ。でも、見ればわかるけれど、面接ということそのもののふんいきは十分よくわかる。ってのはつまり、クライアント中心ではなくて、セッションが段取りにしたがってサクサクと進んでいくので、クライアントが本物だろうがロールプレイだろうがあんまし影響がないっていうか。
で、まえのDVDを見たときに、このカウンセラーの人、めっちゃコンサルみたいだけど、それはそれでそういう方向性の力量ってのがきっとあるのであろう、たぶんきっとこの人はちゃんと治すんだろうなあ、と思っていたのだけれど、この「面接の実際」を見ていると、うーむ、と思う。自分のイメージする臨床心理カウンセリングというのからすると、あれ?そこはちがうだろう、とか、うーん、そういうもって行き方は誘導尋問だなあ、とか、思うところもまぁ、あるわけで、まぁそのへんがコンサルっぽいというところでもあるのだけれど、この認知行動療法というののキモはそういうところにあるんではなくて、段取りよくワークシート − 「ツール」と呼んでますね − とか技法そのたを次々と使うところにあるのだろう。そういう段取りをサクサクと進めていくには、このぐらいしれっとしたカウンセラーのほうが向いてるだろうなあと思う。また、このぐらいのほうが、クライアントにとっても、いちいちサインを過敏にキャッチされてひっかかられたり掘り下げられたりするより、気楽かもしれないし、いかにも専門的っぽい用語をふりまわされるほうが、クライアントとしては頼る気になりやすかったり治療してる感を得やすかったりするものなんかもしれない。えーと、くりかえすけれど、それはよいことだと思うわけで、薄っぺらいなあとは思うけれど、治すのが目的なので、治ればいいんである。たぶん治るだろうなあ、という印象は、やはり、持った。
ロールプレイの出演者は、カウンセラーのひとのクリニックのスタッフの人。「事例A」がうつのケースで、これが初回〜第4回までのセッション。この人はなかなかの名演技で、初回セッションを見終わるまでほんもののクライアントかと思っていた。「事例B」が適応障害っていうか仕事の悩みのケースで、カウンセリング中盤の2回のセッション。この人はぎゃくの意味でなかなかそれらしい演技、というのも、気の重い仕事がなかなか手につかないみたいな訴えは、なんとなくぼんやりしていてべつに治療の対象ということでもなさそうだなあという心証で、でもそういうぼんやりした訴えの人が来るんだろうなあ、という。そういう意味で、なにがどう悩みなのかいまいちつかみどころがないロールプレイが、ぎゃくにそれらしい、というわけである。「事例C」がパニック障害、「事例D」が強迫神経症、これらは一回ずつのセッションで、同じ人がクライアント役をやっている。なんかこの人の演技はいまいちだったかな、っていうか、パニック障害の人はふつうのときはふつうなのか(うつの人はふつうのときもずっとうつっぽいふうにしてれば演じやすいわけだけれど)。
べつにロールプレイの演者の演技をどうこう言うっていうDVDではないのだけれど、いちおう各セッションの間には一週間の日にちが開いていることになっているわけなので、せめて衣装ぐらい着替えて撮影すればいいと思うのだけれど、ずっと同じ服装。つまり、同じ日に連続で撮影しているわけで、ちょっとはいりこみにくい。演じるほうは、1週間経ってその間にいろいろなことがあったり、宿題をやったり(認知行動療法なので)、症状が軽くなってきたり、みたいなことを設定しつつ演じるわけで、ちょっとそれはわざとらしくならないのか、という疑問。で、「事例A」のうつ役の人はそれがこれまた奇妙に自然だったのである。ちょうど風邪をひいていたようで、そうすると初回から第4回まで咳がぬけないことになったのはご愛嬌だけれど、カウンセラーのほうも、「お風邪ですか?」とか、「なかなか治らないですね」とか、しまいには「うつのときは風邪が治りにくくなることがありますよ、これも身体反応ということで後にとりあげるかもしれませんね」とか、じゃっかんわるのりしている。そのへんは、楽屋落ち的な面白さもある。