『パプリカ』見て、いきおいで『クローン』見た。現実とは何か、つながり。いずれも悪くない。

パプリカ [DVD]

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さるところでほめて書いてあったので、積んどく状態のものを引っ張り出して見てみた。
筒井康隆の原作(読んでない)。他人の夢に入り込むことができる装置、というのが開発されて、精神治療なんかに使えるんじゃないか、とか期待されていたところが、それが何者かに盗み出されておそろしいことに・・・無意識に侵入されてとつぜん発狂したり自殺を図ったりする人とか相次ぐ・・・テロリストの仕業か・・・でもって、この装置を使って精神治療をし始めていた「パプリカ」という赤髪ボブのハツラツ美人がいてまして、それからこの装置を作った研究所のスタッフのデブおたく天才科学者とか黒髪ロング&メガネの冷静美人科学者とか、研究所所長とかいてまして、それからパプリカの治療を受け始めたヒゲ刑事ってのがいてまして、夢を操る謎の悪者によって悪夢に巻き込まれたり、自分から悪夢に乗り込んで行ったりしつつあれやこれや活躍する、と。
で、これ、現実かと思ったら悪夢で、覚めたと思ったら別の悪夢で、みたいなのが目まぐるしいので、おもしろい、けれどそんなんしとると収拾がつきようがなくなるともいえる。まぁたかがアニメじゃないか、収拾がつかなくてもいいじゃないか、空間がぐにゃーっとするところとかアニメならではの快感で、よかったってことでいいのだけれど。
で、悪夢もの、現実とは何か、みたいなはなしといえばディックで、いきおいでディック原作ってことで録画しておいた『クローン』ってのも引っ張り出して見てみた。
クローン [DVD]

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amazonさんの内容紹介では

内容(「キネマ旬報社」データベースより)
ブレード・ランナー』の原作者としても有名な人気SF作家、フィリップ・K・ディックの小説を『コレクター』のゲイリー・フレダーが映像化。爆弾を埋めこまれた“クローン”だと告げられた天才科学者が、自分の存在を証明するため、軍に戦いを挑む。
内容(「Oricon」データベースより)
地球に侵入したクローン人間と疑われた男の闘いを描いたSFサスペンスアクション。出演はゲイリー・シニーズマデリーン・ストウほか。

となっていて、まぁそういう話。いかにもディックという。現実と幻覚のフラッシュバックが区別つかなくなるみたいなところもあって、そのへんは二本立てでつながってるかんじ。まぁしかし、こっちのはとにかくディック、ですね。むしろ「自分の存在を証明する」(ことの不可能性)みたいなところの目眩に焦点が行っているので、まぁふつうに見てSFアクションだなあ、というふうに見てもだいたい見れる。と思う。トラブルに巻き込まれた主人公が、追手から逃げつつ、問題の解決に向かって一直線に動く、というラインはきちんと守られてて、映画そのものの現実の収拾がつかなくなる式の映画ではない。と思う。むしろ世界観っていうか、未来世界のあれこれの描写のなかで、東浩紀とかそっち系の、『マイノリティ・リポート』なんかに通じる、個人のアイデンティティが個体識別のシステムによって管理されてますみたいなのがあって、なかなかいい。国家セキュリティ局、みたいなところから追い掛け回されるわけで、主人公がいくら自分は自分だと言っても、記憶まで複製されているのである、と聞く耳持たず、じっさいそういう見込み捜査なので、無実の人を既に冤罪でたくさん殺しているのだけれど、「爆弾は敵の高度な技術で埋め込まれているので事前には見つけられない。爆発したら手遅れ」「10人の犠牲で1万人助かった」とか言ってるので、あーセキュリティの絵解きだなあ、と感心しきり。これ、アメリカで公開するとき気まずかったんじゃないかなあ。2001年公開だって。
まぁしかし、映画としては、主人公が逃げるたびに敵味方で銃をパンパン撃ちまくってどんどん人が死んでいくので、あれ?これだったら最初に主人公が捕まった時にさっさと処刑されてれば死者一名で済まなかったか?主人公が処刑されるのも理不尽だが、主人公が逃げるためにどんどん死んでいく人たちだって理不尽っちゃ理不尽だよな、と思わなくはない。すくなくとも、映画を見ている最中、映画が終わるまで、なんとなくそういう気分はあたまの片隅でちらちらしていた。のだけれど・・・まぁけっきょくですね、どうでもよくなります。