- 出版社/メーカー: メディアファクトリー
- 発売日: 2009/04/24
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いきなり撲殺、みたいなシーンが出てくる気配がいっこうになくて、なんかサラリーマンの香川照之がリストラされて、でも家族には失業したことを黙っていて、毎朝そしらぬ顔で背広を着て家を出て、職安の列に並んでため息をつく、みたいなところから話が始まる。家族にばれないようにしつつ、まぁどこかで結局ばれるんだろうなと予測がつくわけで、そうするとばれるかばれないかいつどうやってばれるかみたいなところでお話が吊られるわけで、それってサスペンス?いきなり撲殺の人が?ということにもなる。よくわからないオフィス風景、そこであっけなくリストラを告げられるときの機械的な感じとか、朝の通勤サラリーマンの歩みの等方向性とか?職安やら公園での炊き出しやらの大げさで寡黙なかんじの行列とか?なんかそのへんの感じが不思議と小津、っていうか『監督小津安二郎』に出てくる小津のかんじで、そうなの?と思いながら見るわけである。小津のやり方は禁じ手だから避けるって言ってたじゃないですか、と思いつつ、しかし思えば前作だって、犯行がいつ露呈するかの犯罪サスペンスとかアッと驚くオチに向けての謎解き刑事ドラマとかの仕組みで引っ張ってた面はあったわけだし、某本で溝口だといわれればなるほどまさに『雨月物語』なわけだし、またその前の作品だって、ヒッチコックでしょう、『サイコ』とか『ハリーの災難』でしょう、あれだけヒッチコックはやらないって言ってたじゃないですか、という面はあったのだから、まぁ、こんどは小津なのか、と思いつつ見るわけである。
で、そこからの、ということで、結局、「3時間前」あたりのくだりあたりから妙なとんちんかんなコメディが楽しかったり、小泉今日子がぐいぐいと魅力的に見えてきたりして、なんやかんやあって、オチはそうなのかよ!という。