『ビジネスマンのための「行動観察」入門』。学生に勧めようかなぁ。

ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書)

ビジネスマンのための「行動観察」入門 (講談社現代新書)

おもしろい。著者の人は「大阪ガス行動観察研究所」所長、という肩書きの人で、もともと人間工学とか環境心理学とかエスノグラフィーとか社会心理学とかそのあたりを勉強した人で、それで調査ビジネスをやってる人。何年もまえから、ビジネスコンサルみたいな文脈で、エスノグラフィーとかエスノメソドロジーとかが来てる!的なのがあって、思えばたぶんその中で見かけた人ではあったのだ。なので、新書が出た時も気になっていたけれど、まぁようやく読んだ。で、まぁ、エスノメソドロジーとは言いにくいけれどエスノグラフィーとかアフォーダンスみたいなものをビジネスコンサルの文脈に上手く落とし込んで、うまいことやってる、つまり、消費者の隠されたニーズ、とか、ワークプレースの状況の中に埋め込まれた問題点やノウハウ、ハック、(これまたビジネスコンサル的文脈の用語になっちゃってる)暗黙知、みたいなものを「見える化」して、ちゃんとビジネス的なアウトプット、要するにお客が増えてお金が儲かるとか、社員教育が上手にできるようになるとか、製造ラインのミスが減るとかモチベーションが向上するとか生産効率が上がるとか、そういう結果をベタに出して見せている。
こういうの、学生さんが読んで、例えば卒論なんかで面白いものが出てくるとおもしろい、と思うので、勧めたい。のだけれど若干ひっかかるのは、うちの学生さんはこういう、ビジネスコンサル的なカタカナとかが一定濃度を超えると、ガクッと読む気が落ちるようだというところ。「行動観察によって導き出されたソリューションを実施していくときには、マネジメント側のコミットメントが非常に重要である」みたいな文(実際に書きうつしました)は、生理的に受け付けてくれないかもしれない。でもそこをクリアすれば、事例が色々で面白いのは間違いなしのオススメ新書である。