『妻の超然』。べつに超然としてるかんじもないしなあ。

妻の超然 (新潮文庫)

妻の超然 (新潮文庫)

絲山と署名してあれば、文庫なら、入手して読むというつもりはあって、しかしサボっていたら半年前に未読のが出ていた。で、先日、買って、それを読んだ。のだけれど、いまひとつこのたびはぴんとこなかった。中篇が三作、「妻の超然」「下戸の超然」「作家の超然」という、超然シリーズで、でもどれとても超然としたかんじがしない。結婚十年目で子どももいなくてとっくに夫婦仲が冷めているような50前の主婦が旦那の浮気を知らぬふりしているといいつつぐだぐだと心境および生活を描写されたって、それでアーこの奥さん超然としてるわーとはやはり思わないし、自分的に絲山に期待するかんじとはちょっとちがかった。北九州の小さな商店で生まれ育ち理科系の大学院を出て家電メーカーの筑波工場に勤務する下戸の青年が会社の女の子と付き合いはじめて、さいしょは感じのいい子だと思ったけれどだんだんじわじわとなんとなくうざいのがみえてきて決裂する、というはなしも、いやーこの青年超然としてるわーとは思わなかった。また、著者を思わせる作家が手術を受けるために入院して暇だからぐだぐだ思念を巡らせているみたいな私小説も、まぁ文庫版解説の人は絶賛しているけれど、さっぱり超然としたかんじは受けなかった。