『ウイ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン』とそのメイキング『あまり期待するな』。ニコラス・レイの遺作をようやく見れた。

巨匠ニコラス・レイ教授の「映画の授業」DVD-BOX

巨匠ニコラス・レイ教授の「映画の授業」DVD-BOX

昔は授業でヴェンダースの『ニックス・ムービー』など紹介などしていたもので、死の迫ったニコラス・レイを追う映画の中でちらりと映るのが遺作の『ウイ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン』、これが、ちらりと映ったのを見ただけでわけのわからない前衛作であることは知れるわけで、以来ずっと見たいと思っていたのだけれど、DVDが出たよと例によってAmazonさんが教えてくれたのでさっそく見た。これはしかしよかった。わけのわからない前衛作であったのはかけねなしにまちがいない。映画が撮れなくなって(ということだろう、資金的にも状況的にも)ニューヨーク大学の映画学科に職を得たニコラス・レイが学生たちと作ったという作品で、演じるのも撮るのも学生というフィルム断片が目まぐるしく編集されて、ナム・ジュン・パイクのビデオアートに影響を受けたという強烈な光学処理を効かせてしかもマルチスクリーンで同時並行的に映されている。いちおうストーリーはあるようで、ニコラス・レイが映画学科に赴任してきて、学生と映画を撮っている、その学生たちの中の冴えない男子学生が主演女子に振られる、そしてニコラス・レイが馬小屋で首をつって死ぬ。みたいなかんじの話(だと思う)。
で、DVDボックスの2枚目が、ドキュメンタリーで『ウイ・キャント・ゴー・ホーム・アゲイン』のメイキングと、当時の学生(や、ジム・ジャームッシュビクトル・エリセ)へのインタビューを含む、『あまり期待するな』。タイトルは、『ウイ・キャント・〜』の中でニコラス・レイが言う台詞の言葉で、たぶんジョークか何かだと思うけれど、「教師にあまり期待するな」というところからきている。で、あまり期待せずに見たらこれもよかった、というか、『ウイ・キャント・〜』がどう撮影されていたか、学生たちが教師ニコラスから何を感じ取っていたか、映画が結局のところどのようにして現在の形に出来上がったのか、というか支離滅裂な状態に壊れた形になったのか、すなわちニコラス・レイが教師として監督として(プロデューサーとして)この映画にかかわるあいだにどのようにして完全にカリスマ的な師でありつつ同時に支離滅裂な状態に壊れていったのか、ということらへんが語られていて、まぁようするに前衛作の種明かしになっていた。