通勤電車で読む『ゆかいな仏教』。

ゆかいな仏教 (サンガ新書)

ゆかいな仏教 (サンガ新書)

『ふしぎなキリスト教』のコンビで、こんどは仏教。じぶんが学部生のときに、『言語ゲームと社会理論』でグッときて、二冊目の『仏教の言説戦略』もすごく勉強になった。それはいまでもそう思うのだけれど、それは、「仏教がよくわかってよかったなあ」ということではなくて、仏教を例にとって言語ゲームというアイディアを社会科学でうまく生かしたところがよかったと思う。なので、この本で、大澤が聞き役、橋爪が説明役、という役割分担でしゃべっているけれど、橋爪解説による仏教というのがほんとにちゃんと仏教だという感じはしない、ってところはある。ちょっと論理整合性によっかかりすぎてるんじゃないだろうか、という気がする。仏教というのは世界中でめちゃくちゃにいろんな宗派が出てきてて収拾がつかないぐらいだし、それは伝播の歴史の中でいろいろな他宗教と混ざったりいろいろな社会的条件に合わせたりしてそうなったわけで、それはこの本の中でもそういうふうに書いてある。なのだけれど、この本では、そのめちゃくちゃに収拾のつかない仏教をなんとなく論理整合的に説明しちゃってるところがあって、ほんとかなあと思ってしまう。たとえば浄土真宗とかの阿弥陀信仰はすごく一神教に似てる。じゃあそれはもう実質的に一神教ですね、とはこの本ではならなくて、あくまでも仏教の「覚り」のロジックで解説してる。それはまぁ、教理上はそうなんだろうし、論理整合的なのはわかるけれど、でもねえ、じっさいにおばあさんとかがお念仏を唱えてイメージする成仏とか、極楽浄土とか、そういうイメージは、「覚りをひらく」とか「空」とかとは関係なくて、もうイコール天国のことだと思う。そこのところをそのままうまく掬い取るやりかたってないものだろうかしらん。
まぁしかし、いつもながら語り口は平易でユーモラスで面白い。