『ある殺し屋』。

ある殺し屋 [DVD]

ある殺し屋 [DVD]

VHSから救出しつつ再見。森一生市川雷蔵のスタイリッシュな、しかしこれはジャンル的には何映画なのかしらん。殺し屋なんだから犯罪映画かというと、なんか雷蔵に悪のにおいがまったくないわけで、ストイックで冷静で淡々と仕事の段取りを進める。ていうか、確かに殺しの依頼に対して法外に高額の報酬を要求したりしてるのだけれど、べつに金のためにやっているようにも見えなくて、高く積まれた札束にもいたって恬淡とした態度。どうやら特攻帰りというふんいきもあって、それで精神に虚無を抱え込み・・・といったところかと思う。そうするとハードボイルド、みたいなことかと思うけれど、やはり雷蔵の風体がいかにも目立たないふつうの男であって、時代劇のときのきりっとした役作りでない、影の薄い − だから、ひとごみにまぎれてしまうのであり、それであっというまに殺しを完了してしまう − 中年なので、なんていうか、「キザなかんじ」がないんである。そこに、野川由美子成田三樹夫という小悪人たちがからむ。