『日本を貧しくしないための経済学』。みょうに懐かしめの(漢字を読むのが苦手な)若者向けマルクス主義経済入門だった。

日本を貧しくしないための経済学―ほんとうにだいじなお金の話

日本を貧しくしないための経済学―ほんとうにだいじなお金の話

どこかでよさげだといううわさを目にして、通勤電車向けにかばんに放り込んで、読んでみたのだった。まぁ、経済学ってよくわからないので、おもしろいのであればいいなあというぐあい。そうしたところが、どうものっけから、テレビのバラエティ番組の経済評論家の話に妻は喜ぶ、だが私が経済の真実を語ろう、みたいな、なんかオヤジくさい導入で、なんだなんだと著者略歴を見たら団塊の世代の人である。で、「ズバリ言って、わたしは、世の中お金が人間を支配しているという事実にその理由があると思う」などというようなことを言っていて、あれあれ?と思っていたら、なんかまぁようするに、むかし古本屋で買ったことのある、若い勤労青年むけの、なんか労組だか民主主義何とかだかそういうところの青年なんとか部みたいなところが作ったわかりやすい経済学の本、みたいな、そういうのを思い出した。マルクス、という名前はあまり出てこなくて、最初に近いほうで「お金とたたかった人たち」の一人として名前が言及されて、あとは後半のほうで「社会主義者であるカール・マルクスという人物」などと一瞬言及されるぐらいなのだけれど、まぁしかし、内容としてはマル経、というかんじで、しかも「高齢者」とか「機嫌のいい」とか、まぁそういうごくふつうの漢字にまでよみやすいふりがなが打ってあるので、漢字を読むのが苦手な若者(というのもなんだかバカにしたはなしだが)にでも易しく経済の真実がわかるよ、という本なのだった。
そしてしかし、ついでにいうと、ジェンダーみたいな感覚で読むと、いかにも団塊世代のオヤジくさくてうんざりさせて逆にほほえましいほどである。オヤジギャグのつもりが、素で地金がでてしまっているかんじなのだ。

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〈夫婦生活円満のために〉
こうならないようにジャパニーズ・ビジネスマンは日々努力しなければならない。誕生日や「母の日」に奥さんに花を贈るのも有効であろう。家庭の平和を維持するためには、奥さんも、会社という過酷な戦場で戦う夫を励まし慰めなければならない。夫婦共稼ぎの場合は、互いにその労をいたわらなければならない。・・・

まぁちょっとこんなかんじ。デフォルトが正社員=専業主婦イメージなのはまぁしょうがないとして、「夫婦共稼ぎの場合は、互いにその労をいたわらなければならない」ってねえ・・・労をいたわるのは当然として、実際的な家事は誰がやるのよ、両者とも「労をいたわる」だけで実際の家事が進むとでも思っているのかしらん、ずいぶんいいきなもんだな、というのがおもしろいところ。
まぁあと、途中でちょっと出てくる「小説ふうの」くだりで、社長という設定の主人公が好景気に上機嫌になって、「おきにいりの」秘書にウインク「投げキッス」などして「社長、セクハラですよ」などといわれつつ都合よく受け流してもらってるあたりの、きもい団塊オヤジ臭とか。(読み直したらウインクでなく「投げキッス」だった。すごいな。)