成瀬を見るシリーズ。『乙女ごころ三人姉妹』『腰弁頑張れ』『噂の娘』『三十三間堂通し矢物語』。

未見の成瀬を見るシリーズ。以前BSでやってて録画してつんどくになってるものと、YouTubeでなぜか見れるもの。PCL時代のものや東宝でも古いのは、DVDになってないみたい。
成瀬巳喜男 - Wikipedia
『乙女ごころ三人姉妹』は、タイトルからして三人の女子が出てくると思うじゃないですか。ところがどっこい、それっぽい女子が6人出てくるのでさいしょ混乱する。昭和初期で、浅草に「門付け」というかまぁ流し、の女たちがいて、その元締めの家に3人の若い娘たちが身を寄せて流しをやっていて、また、元締めの娘が三人いてその次女がおなじく流しをやりつつ3人の若い娘たちの先輩格として面倒を見ている。で、末娘は劇場でダンサーをやっていて、また、姿を見せない長女は男と遁走してしまっている。というわけで、乙女ごころを発揮すべき三人姉妹は流しの女子3人ではなく、遁走したりダンサーをしたりの姉や妹と、その間でもろもろの板挟みになりつつ気丈にふるまう次女、この三人であって、とくに次女がたぶん主役ということになるのだろうけれど、まぁ、長女と末娘には彼氏がいるのにこの次女にかんしてはどのへんに乙女ごころが発揮されているのかさっぱりわからない。
『腰弁頑張れ』はサイレントの喜劇。主人公の男を、ゲスの極み乙女。の休日課長が演じている。
『噂の娘』は、嫁き遅れの娘が気丈に切り盛りする酒屋、などというあたりですでに成瀬。発展家の妹に見合い相手をとられてしまうなどというのも成瀬。妾、などというのが出てくるのも成瀬だし、父親がダメな男であるという見方をするならばこれも成瀬。PCL時代、昭和10年の作品なのでパッと見の印象はちがうっちゃちがうけれど、戦後に東宝で、高峰秀子とか原節子とかを主演にして撮ったらそういうふうに見えるようなかんじ。
三十三間堂通し矢物語』は、時代劇というか、意外とスポ根的な面白さ。タイトルからして普通に考えたら面白そうという予感はしないものではあるけれど、見てみたら意外に面白かった。まぁちょっとした『巨人の星』っていうか。田中絹代がヒロインでありながら微妙に嫌な、微妙に教育ママ的な空気を出しつつ『巨人の星』でいえば明子ねえさん、長谷川一夫は謎のおさむらいという感じで登場、明子ねえさんからのプレッシャーで押しつぶされそうになっている星飛雄馬のメンターというか父親代わりというかそういう存在になりつつ、明子ねえさんともちょっといいかんじになりそうになりつつじつはその正体はライバルだったという、星一徹花形満を掛け合わせたような人物。で、飛雄馬はぶじ三十三間堂通し矢8000本をクリアするでしょうかという。