『映画なしでは生きられない』。書名どおりの本。映画なしでは生きられない人による、映画によって生きていけるかもしれない人のための。

映画なしでは生きられない

映画なしでは生きられない

なにしろこの世の中というのはままならないことばかりで、一切皆苦である、ということになっていて、生きるのはつらいと思いながら、さりとて生きないわけにもいかないので毎日なんとか生きている、という多くの人がいて、そのうちある種の人たちは映画を見てスクリーンの上に映し出されたあれやこれやの中に、共感できるなにかとか、救いになるなにかとか、そういうものを見つけてそれをよすがになんとか日々を生きている、ということもあるわけで、そしてまたそういう人たちの中でもとりわけ一生懸命に映画を見ている人たちというのは、スクリーンの上に映っている映画のあれこれのなかでもとりわけ真実らしいものや世の痛ましさを明らかにするものや希望らしいものを見抜いてつかまえては生きるよすがとするわけで、そういう人が、同じように辛い日々を生きているかもしれない人たちのために、真実らしいものや痛ましいものや希望らしいものを含んだ映画についてあれこれ言っている、ような本。いい。