通勤電車で読む『カルト村で生まれました。』 おもしろい。コミューン版の「ちびまる子」ってかんじか。あと、ナラティブのくふう。

カルト村で生まれました。

カルト村で生まれました。

例によってHONZで見かけたのかな?(http://honz.jp/articles/-/42470) まぁ、タイトル的にはカルトって書いているけれど、まぁコミューンですね、現在の日本にもそういうコミューンがあるということで、そういうコミューン(どこでしょうな、有名なあそこかしら)で生まれ育った、たぶん団塊ジュニアということになる著者の人が書いたエッセイ漫画。まぁ、絵柄とか描きようがほのぼのしているし、まぁふつうにおもしろいほのぼのエッセイ漫画というかんじで、しかもコミューンの子どもたちのリアリティがいろいろ書いてあって興味深くもある。コミューン版の「ちびまる子」ってところか。このコミューンでは、19歳になったら自分で進路を選べることになっているそうで、この著者の人はそこで「村」を出ることを決め、それにともなってご両親も「村」を離れることにして、家族で東京に住み、その後、著者の人は結婚してふつうに暮らして現在に至るそうな。で、まぁ、この漫画を成立させているのは、この漫画のナラティブであって、これ、いわゆるエッセイ漫画なのだけれど、かたちとしては、現在の夫婦のやりとりっていうか、著者の人がだんなさんに小さい頃の思い出ばなしを喋っている、という枠組みで語られている。それで、著者の人が語る思い出の中で、子ども時代の著者の人の生活や意識が(ちびまる子のように)語られてもいて、それ自体けっこう自分や状況を客観視した視線をもってるようなのだけれど、さらにその外側から、(ところどころ明示的に)現在のだんなさんが突っ込みを入れる、という仕掛けになっている。つまり、この作品は、読者が「この著者のこの語りは”洗脳されてる人の語り”なのではないか?」と疑うかもしれないことをあらかじめ予測して、なにげに周到な仕掛けで客観性を主張できるようにしている。