以前、
黒沢清の対談めあてに買った『
文學界』に載っていた
綿矢りさ×
松岡茉優の対談を読んで、面白そうだと思っていた。
原作者と主演女優の対談というと、原作者のほうがかしこそうなことをしゃべるかと思いきや、まぁそのへんは綿矢は心得ていて、映画は映画として作られたものだということを前提として、この作品が原作小説の深い理解から出来上がっていることをうれしく思うと最初に言い、それであとはもっぱら映画を見た人の側
からしゃべっている。で、作品の解釈についてはむしろ主演の松岡が、こじらせたオタクっぽいしゃべりかたの、みたところ一般的に共感されやすそうには見えない主人公について「撮影を通してヨシカと一緒に生きた身として思うのは、ヨシカって、いろんな女の子たちの、報われなかった魂の集合体なんじゃないかと」と言い、綿矢を驚かせつつなっとくもさせ、それが対談の
小見出しにも使われたりもする。そういうわけで、この対談を読むとやはり松岡のヨシカを見てみたくなるとしたものだろう。
綿矢りさについては背中を蹴ったとかなんとか、たしか最初の2冊ぐらいを読んで、べつにさほど乗れないと思っていたのだけれど、こじらせた女子のおはなしが
松岡茉優で映画化というと、それは見ねばと。
監督は
映画美学校出身の人ということで、途中でミュージカル的なシーンがはさまったりするし、映画映画した仕掛けも効いているけれど、そういう仕掛けたちはすべて
松岡茉優の存在感のために、
松岡茉優の存在感にささげられているわけで、やはり
松岡茉優の存在感が入神の域に達しているというのがすべてだ。