ふとした流れで『エスノグラフィー入門』読んだ。バランスがいい入門書だった。

エスノグラフィー入門 <現場>を質的研究する

エスノグラフィー入門 <現場>を質的研究する

ふと学部長が、事務的な用件で部屋に来られて、そのついでに「エスノグラフィー勉強したいからまた教えてね」と言われた。数学教育がご専門なので、学校研究とかに使えないかなあということのよう。それで、教えるとかできないですできないです、と言いつつ、まぁエスノグラフィーというのは名人芸っていうか一人一流派っていうか現場百回というか、まぁ決まった方法がないですからねえ、会話分析とかになるとガチっとした方法論があるですけどねえ、まぁ自分が若い人に言うときがあったらやはり「まず具体的な実際の研究を見たら?」と言いますねえ、みたいな返答をしつつ、本棚につんどくになっている本たちの中からよさげな本がでてこないかと目を走らせていたんだけれど、「これなんかですかねえ」と、『エスノグラフィー入門』という本を指さされて、まぁそうですね、と返答しつつ、(まぁ当たりはずれがあるしなあ、)と思い、なんとなくその本を翻訳物の別の本と思い違いしたりもしつつ、「まぁそうですね、こんなんとか」と、その数冊上に積んであった看護系の入門書(未読)なんかを指さしたりして、まぁ「看護とか福祉とか多いですよね」みたいな会話をしていたんだけれど、「じゃぁこれ借りていい?」「どうぞどうぞ」みたいなかんじでその看護系の本を持っていかれたんだけれど、やっぱり最初の『エスノグラフィー入門』のほうがよかったかしらと思いつつ手に取ってみたら、思っていたような翻訳物の本ではなかったし、自分は未読のようだったし、ぱらぱらみたらよさげだったので、やばいと思ってかばんに突っ込んで帰りの電車で、まぁとばしよみで読みかけて、あと下宿で読了。やはりバランスのいい入門書で、妙に形式主義的なところとかドグマティックなところとかがなくて、ちゃんと、エスノグラフィーの方法のなさみたいなかんじが出ていて、まぁだから精神論みたいなはなしが多くなりはするわけではあるけれどそれはそんなもんとして、また、調査の準備から実施、分析、発表、フィードバックまで順を追って書いてあって(そういうあれでいくと「分析」の章が面白いのだけれど、同時に、ここが形式主義的でもドグマティックでもなくさらっとかいてあって、あとは具体例をみよみたいなノリだったのでよかった)、ああしまった、やはりお貸しするならこれだったと反省中、こんどお会いしたらそう言おう。