- 作者: 小森陽一,石原千秋
- 出版社/メーカー: 翰林書房
- 発売日: 1998/12/05
- メディア: 単行本
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1998年に出た本で、小森陽一・石原千秋コンビがホスト役で、ゲストを呼んでは漱石を語る、みたいな、もともとはこのコンビが編集する『漱石研究』という雑誌の毎号の企画であったものをまとめた本らしい。で、この第2巻のメンツが、柄谷行人、大岡信、島田雅彦、芹沢俊介、水田宗子、蓮實重彦、というラインナップ、それにふたつの座談会を加えて一冊にしたもの。でまぁ、意外と面白かったのが水田宗子、フェミニズム批評という線で『それから』を解読したら小森・石原コンビが揃ってあっけにとられて衝撃を受けてた(それほどインパクトと説得力があった)、という回で、まぁ自分的にはフェミニズム批評というのの相場というのがわからないのだけれど、1998年の時点で小森・石原コンビがこのぐらいバサバサ切られて衝撃を受けてた、というのが面白かった。あとは、最後の座談会で、漱石が19世紀末の「退化論」という思潮にすごく影響を受けていたというのが面白かった。退化論というと、進化論の裏返しというか、文明が進化したおかげで今まで淘汰されていた不適格者までが生き残るようになって、そのためにむしろ退化した者どもが世にあふれている、という視点らしく、19世紀末にそういう思潮が盛んだったロンドンに留学した漱石が、当時の最新の「科学」に基づく観点から、まさにその不適格者として自分自身や日本人が位置づけられるというのを突き付けられ、そこでもがいていたよ、という。そのつもりで読むと、漱石の「神経衰弱」とか「テレパシー」とか「夢」とか、「高等遊民」とか「あばた面」とか「猫」とか、あるいは「自然」とか「個人主義」とか、そういうテーマが別の相貌を見せてくるよ、と。