通勤電車で読んだ『和みを紡ぐ』。

和みを紡ぐ: 子育てひろばの会話分析

和みを紡ぐ: 子育てひろばの会話分析

「子育てひろば」というのがあって、それはきがるにお母さん方が子どもをつれて遊ばせていられるような場所だというのだけれど、じつは、母親たちの孤立や育児不安の問題を解消すべしという厚労省的な目的のはっきりした事業である。そうなんだけれど、では、その場で何が行われているのか、母親たちが深刻に悩みや不安を打ち明けに来たり専門的アドバイスが的確に与えられたりしているのか、というとそんなことはなくて、まぁじっさいにはもっとゆるいかんじ。ゆるいかんじだからこそ、そこで母親たちがゆるくつながれるし、なんとなく愚痴をこぼしたりお互いにあるあるとか盛り上がったりしあいながら和む、またそんななかでお互いの経験なんかも喋ってるうちにおたがいになんとなく参考になったりとかもたまにする。ま、そのぐらいの湯加減らしい、そういう子育てひろばというところの仕組みを、長期にわたるフィールドワークと会話分析で解明していくよ、という本。で、この本は、会話分析的研究が子育てひろばの人たちに役立つようにと本気で思ってる本なので、わかりやすくて、なるほど会話分析がこのように「役立つ」のか、とわかるように書いてあるし、なるほどたしかにそうかもと思わせる。
ところでこの本、『ソシオロジ』で串田先生の書評と著者リプライが読めて、これも勉強になる。
ついでにいうと、
潜在的に悩みや不安や困りごとのあるようなクライアントがやってくる場で何が行われているか、じつはいわゆる「専門的」対処がゴリゴリと行われているのではなく、もっとふつうっぽいかんじをキープしたやり取りが行われていることじたいに、その場の意味があるのだよ、ということを、フィールドワークと会話分析から解明した本として、なんとなく秋葉さんの『教育の臨床エスノメソドロジー研究―保健室の構造・機能・意味』を思い出した。