『世界中がアイ・ラヴ・ユー』みた。ミュージカルというのは心の満ち足りた人が楽しくうれしくやるもんだろう。

つんどく状態のウディ・アレンを見るシリーズ。これはミュージカル仕立て。で、そりゃまあそれなりに形にはしているけれど、ウディ・アレンがミュージカルはないなあと。ミュージカルというのは、心の満ち足りた人が楽しいとか嬉しいとか、ついつい唄いだし踊りだしてしまうというもんだろう。本作の主人公は、ニューヨークのとびきりのセレブの家族。弁護士とその妻(資産家の娘)が、お互い再婚どうしで、そこにたがいの連れ子の年頃の娘たちがいるよと。ウディ・アレンは弁護士夫婦の友人、ていうか妻の元夫で連れ子の父親であると。ウディ・アレンは元妻に未練があるままいまはパリに住んでいる売れない作家で、でもいつでも若い彼女に捨てられたと言ってはたびたびニューヨークの元妻夫婦のもとに泣きつきに来る、と。まぁそんなかんじ。娘たちは婚約者と、あるいはステキ男子と、あつあつであるだの恋に落ちたのなんのといっては夢見るように歌い踊り、そしてウディ・アレンは実の娘にそそのかされてまたぞろジュリア・ロバーツ(夫との生活になんとなく満たされなさを感じて精神分析に通っている)にアタックをしかけたりする。ま、そういうかんじで、季節は春、ニューヨークの桜の風景から始まって、それから夏のバカンス、美しく紅葉する秋、雪景色の冬、というぐあいにめぐり、その一年の家族それぞれのいろいろの物語、ということになる。はい、そうすると、このお話の中でウディ・アレン的な登場人物はウディ・アレンジュリア・ロバーツだけということになり、そして、そのエピソードは全体からすると一部分だしまぁ厳しく掘り下げられるわけでもないので、まぁミュージカルとしてはセレブの娘たちが歌い踊って正しくけっこうだけれど、まぁ、ほんとうのことをいうとウディ・アレンが撮っているからだと思うけれど本当に楽しくうれしい浮き浮きした感じになってるかというとよくわからない。最後のウディ・アレンが踊るダンスシーンなんかは、もうちょっと夢のようにスムーズに踊ってるように撮れなかったのかと少し文句を言いたくなるかんじもある。でもまぁ、ウディ・アレンが夢のようにスムーズに踊ったらそれはもうウディ・アレンではないので、それはまぁそんなところなのだろうとは思う。まぁ、よかったところをあげると、長女のドリュー・バリモアが美人に映ってたとか、元妻のゴールディ・ホーンにちゃんとそりゃそうだという説得力があったとか、例によって好きなジャズの小唄が流れたとか、そういうこともあるけれど、まぁいちばんのひろいものは、ウディ・アレンの娘で生意気な次女、バカンスは父親とヴェニスで過ごし、ひょんなことから父親をそそのかしてジュリア・ロバーツにアタックさせようと作戦をめぐらす、またこの映画全体のナレーターでもあるという、まぁ言ってみればウディ・アレンの有能な分身という役回りが、ナターシャ・リオンであるということ。
ところでそうそう、本日、散髪に行ってきましたということを、ライフハックの一環としてここに書いておく。