『時は乱れて』サンリオ文庫を再読。

時は乱れて (ハヤカワ文庫SF)

時は乱れて (ハヤカワ文庫SF)

ふと、Time out of jointというフレーズが浮かび、それはディックの長編のタイトルでもありもともとの本歌はシェークスピアだったらしいのだけれどそれはともかく、なにしろ連休なのだから連休らしきことをということもあって本棚からひっぱりだして再読。これ、むかしサンリオ文庫で古本で買ったもので、というのもディックの翻訳が昔サンリオ文庫で出ていたということで、それが絶版になって少したって自分がディックを知って、それでハヤカワSF文庫(『アンドロ羊』とか)と創元推理文庫(『ヴァリス』とか)と新潮文庫(映画化記念の『トータル・リコール』とか)、あと晶文社の単行本(『戦争が終り、世界の終りが始まった』とか)、ペヨトル工房(『ラスト・テスタメント』とか)などを買っては読みつつも、『時は乱れて』はどこからもなかなか復刊されず、何年も経ってようやく見つけて購入した覚えがある(文庫の後ろを見たらふだん行ったことない古本屋さんの値札タグが付けてあって、これは古本まつりで買ったのだとわかる)。たしか「ぼくらはカルチャー探偵団」名義の角川文庫『読書の快楽』かなにかで紹介されててずっと読みたかったんである。でもって、再読してほとんどストーリーは覚えてなかったけれど、これほとんどSFというよりかは、いかにもディックらしいパラノイアックな現実喪失ばなしというか二重世界ばなしというかんじ。中期の派手でチープな宇宙ドタバタエンターテインメントというより、50年代末同時代アメリカの日常のうっすらとしたパラノイアックな閉塞感みたいなのをじわっと描き出したような。まぁ、エンターテインメント作家の上手さみたいなのがちょっと足らんなというのは、終わり近くの種明かしのところがいかにも種明かし然と説明的なかんじがしたところ。たぶんそのへんをじっくり書き込んだらそれはそれで単調に長くなってしまうからしかたないんだろうなあとはいえ。