通勤電車で読む『「脳コワさん」支援ガイド』。

はずれなしで有名な「シリーズ ケアをひらく」の新刊。この著者の人の本は読んでて、まぁ基本的には好感を持って読んでた。
通勤電車であっさり読んだ『されど愛しきお妻様』。発達障害の奥さんを持つルポライターの人が脳梗塞になっていろいろ考えたという話。おもしろかった。 - クリッピングとメモ
で、まぁこの人の、「脳が壊れた」という言い回しに関しては以前から引っかかっていたし、本書で「脳コワさん」というネーミングを提案しているのもおなじで、なんか、たぶんセンスの問題として引っかかる。なのだけれど、脳梗塞からの高次脳機能障害の当事者、であり、そのまえから貧困問題について書いていたライターでもあり、また上↑の本で書いていたように奥さんが発達障害当事者だったりとか、いうこともふくめ、この人が書くしかない、という本で、なっとくいく記述も多かった。なにより虚を突かれたのは、自分的には「発達障害」と「脳梗塞による脳機能障害」と「認知症」と「うつ」は別のものだ、という前提で考えていたのだけれど、著者の人が当事者になってからの著書への反応として、そういう”異なる”障害や病気の人たちから、共感の声が寄せられた、というの(読者からの共感の声のなかには、「妊娠中に同じような困りごとの経験がある」というものもあったそうだ)。そこから、それらの障害や病気(や状態)は、共通の「困りごと」をひきおこす、そして、ようするに脳の情報処理機能が落ちていて処理速度も遅く、ワーキングメモリも小さくなってる、電池切れもおこりやすい、そのためにいろいろな困ったことが起こる、というのは、さまざまな障害や病気に共通しておこることなのだ、だから困りごとも共通してくるわけで、それを病名ごとに区別するのは、細分化主義の悪弊であると。それらを共通に支援できるような見方が必要なのだ、と。それで、とにかくこの当事者の経験が言語化されていないわけだから、本書で著者の人は、いろいろな比喩を繰り出しながら、この困った経験の「感覚」を伝達可能にしようとしている。まぁ、「ワーキングメモリ」みたいなのも、だから、医学用語というよりは、比喩なわけで、まぁそれなら「脳が壊れた」という言い回しも、まぁ比喩のセンスそのものには乗れないにせよ、わからんではない。