『バンド・ワゴン』みた。

バンド・ワゴン [DVD]

バンド・ワゴン [DVD]

  • 発売日: 2006/08/04
  • メディア: DVD
今週のNHKのBSは朝からミュージカルということなのか。フレッド・アステアのダンスが切れがいいというのもだけど、やはり、このまえここに書いたことだけど(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2021/02/14/010541 まぁ比べるのはもちろん酷なのだけれど)、ミュージカルというのは、まず、空間、をどう描けるかなのだな。たとえばたくさんのモブの中でアステアが踊る、でも、モブの人の動きがちゃんと演出されてて、無関心なふうでいながらちゃんとアステアの動きを邪魔しないように、あるいは映えさせるように、あるいはちょうどいいタイミングをみはからって画面を横切る人がリズムをつくるとか、また、あるときは画面の中のモブの人たちみんなの視線がパッと、スポットライトのようにアステアに集中するとか。また、アステアとシド・チャリシーが踊るシーンも、どのように二人が馬車から降りて、小道を歩き、ふとターンしてダンスにはいり、夜の公園で二人で優雅に踊り、また小道を歩いたら馬車が待っていて、踊りの余韻のように優雅に馬車に乗ったら夢のようにすうっと馬車が走り出す、みたいな動線を流れるように設計して、それをキャメラがこれまた夢のように - 劇中のことばでいえば「絹のように」 - 滑らかに映し出す。そういうふうにして、空間を描き出すことによって、ミュージカルは、たんにカメラの前で人が踊っているYouTube動画とは異なる、まさにミュージカルの世界をつくることができるのだよと。なんかそうみたいなんである。
あと、これお話がバックステージものというか、ミュージカル舞台についてのミュージカル映画で、アステアは時代遅れのスターという役。で、友人のマートン夫妻(曲や脚本も書いたりしててこちらは現役)が彼をもう一度舞台に引き戻そうということで、いま乗りに乗ってる演出家のコルドバに紹介、するとコルドバもアステアをリスペクトしてるんで、ぜひやろうということになり、まぁしかしあなたも現代風にならなければ!とかいいつつ、「現代版ファウスト」みたいな芸術的野心?まんまんのおどろおどろしい劇を作り上げ、女優には新進の人気バレリーナであるシド・チャリシーを呼んできて、なんかものすごいことをやろうとしつつ、まぁ大コケして…みたいな。そしてしかし、そこからがアステアで、若い団員たちから慕われリスペクトされながら、ぐんぐん明るく、演出も作り変えて、歌って踊って楽しいミュージカルにしてみんなで地方巡業を回りながらぐんぐん楽しくなってきて…みたいな。いいですね、ミュージカルですな。で、まぁこういうおはなしなので、旧友夫妻のマートン夫妻がとてもいい役回りで、とくに奥さんのほう、ナネット・ファブレーという人らしいのだけれど、頼りになって、コミカルで、歌えて踊れて、ということで、シド・チャリシーよりもよかった。