感染者が下げ止まり、再増加に転じたタイミングで、変異株も市中感染を広げている模様のタイミングで、
news.yahoo.co.jp
やれやれ。
「緊急事態宣言」というのは、言葉の意味合いとして、「緊急事態だよー」「急を要する事態が起こってるよー」という「宣言」なのだから、定義上、いつまでもだらだらと「緊急事態宣言」しつづけるというのはそりゃたしかに理屈に合ってない。
本来なら、その「急を要する」というその内容、つまり、「急いで○○をするよー」の「○○」の部分のほうをこそ、きっちりと言わないといけないはずなんだけれど、なぜかそれを略してる(たとえば、「イギリスではロックダウンを行っています」というのは、内容を言ってる)。
ひとつには、日本の場合あまり国が強制的にやるのが好まれないからなのか、菅ちゃんが「緊急事態だよー」と宣言して、「自粛をお願いしますねー」と「お願い」すると人々が「自粛」する、という建てつけになっているようにも見えて、まぁそれじゃあ具体的な内容を明示できないかもなあという気もする。
なので、ふしぎなことに、1年前の4月~5月の緊急事態宣言と今回の緊急事態宣言とでは、やってる内容が多分明らかに違ったんだけど、なんかどう違ったのかもよくわからない。どちらもおなじ「緊急事態宣言」と呼ばれて、特に今回はけっきょくうやむやになって「自粛疲れ」とかいって効果がなくなってあげくの宣言解除となる。
なんだろう。ことばのいみあいからして「緊急事態宣言」がだらだら続いてもへんなので、それはまぁ解除でいいとして、しかし状況は実は一層厳しいですということでより具体的&明解かつ効果的な「内容」を打ち出す、というぐらいしか思いつかないんだけれど…。
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3/20
いまの状態を、まぁおおまかに全国の数字で見た場合、仮に秋の時点に置き換えるとどのへんかというのを見てみる。
toyokeizai.net
covid-2019.live
新規感染者数で言うと、週のうちの山が1500人前後、先週は1300前後、先々週は1200前後、ぐらいなので、
秋で言えば11月の1週目(1300ぐらい)から2週目(1700ぐらい)ぐらい、ちなみにその前の週は750、850ぐらいの見当だったので、ちょうどギアが入った感じはあったですな。
実効再生産数がいまいちおう1.07と出ていて、これだいたい10月最終週がそのぐらい。で、11月の1週目~2週目でぐっとあがって1.42ぐらいまで上がって、そこからいちど下り坂になって11/30に0.97になり、年末ぐらいまで1ぐらいでだらだらキープ、12月の最終週ぐらいに上がって大みそかに(ということは実体としてはその1週間まえつまりクリスマスぐらい?)1.18まで上がって、ちょっと下がってもっぺん上がって1/11に1.54、そこからは緊急事態宣言にはいって下がる、というかんじ。
というわけで、数字で見ると、11月の頭ぐらいのイメージかと思う。そのときは、いまにして思えば第2波の残り火がいつまでも消えないまま、からの、ぼちぼち再上昇して第3波のはじまりが見えてきて、「これから火だるまになるぞ」という予感はあったわけだけれど、
今はどうかというと、まぁおなじように第3波の火が(第2波のときより高いレベルで)いつまでも消えないまま、からの、再上昇のはじまりがもう見えてきている状態かと思う。
で、
11月と違うのは、
・これから冬に入る(寒くなって換気が難しくなり空気が乾燥する)タイミングと、これから春になるタイミングの違い(まえに https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2020/09/13/205206 貼り付けた、「冬のコロナが強い。感覚的には、0.1~0.2くらいRを押し上げているのでは?」というイメージ)。
・感染力の強い変異株への置換がすすんでいるみたい。
・ワクチンがかなり当てになりそう。ただし日本国内だと遅々として進まないみたい。
というところかな。よさげな面も心配な面もあるね。それはもちろんのことだ。
参考。
news.yahoo.co.jp
うーん、
感染性が強いからといっても、個人がやる対策の方法は基本的に変わらないだろうけれど、しかし、「ここは安全とすべしのラインをどこに引くか」は、ひょっとしたら見直す必要が出てくる可能性はあるのかもと思う。
たとえば、一人でスーパーで日常の買い物をする、あまり混んでない電車で通勤する、みたいなのは、まぁ安全とすべしとしているわけだけれど、そこにあるていど緊張感が入ってくるようになるとけっこう状況は変わってくるかなあ。
【札幌市では変異株の広がりが懸念されます】
— 岸田直樹【総合内科・感染症専門医/感染症コンサルタント】MD,MPH,CEO, 三児父,キッシー (@kiccy7777) 2021年3月13日
積極的に調査へとなってます
これまでよりも、感染性は高いですので
混雑しているところでの感染が懸念されます
激安スーパー、交通機関、アミューズメント施設などで、さらに混雑しているところが注意 という状況です
↓
そうそう、11月との違いで一番大きいのを忘れてた。
夏の第2波は、たしか、国レベルで具体的な対策をしなくても収束に向かったというめずらしいパターンで、まぁでもその残り火をきちんと消しきることをせずに放っておいたのでそこから第3波へ、というのが11月のかんじ。なのでその時点では「いままでしばらく何もやってなかったが、これから火だるまになって「緊急事態宣言」でブレーキをかけることになるぞ」という予感があった。
で、今は、「緊急事態宣言」が今日までまだ現在解除されてない状況下で、さあこれから、明日解除されるよ、ブレーキ解除なんであとはよろしくね、てへぺろー、ということになってる。
ぞっとしない。
↓
ところで、上↑の参考サイトのほうで、各都道府県ごとの「10万対発生数」という数字が出ている。
10万対発生数:10万人口対直近1週間の新規感染者数。
ふむ。この数字をどう理解するかな。
直観的には、自分が知りたそうな数字
・自分が現時点で感染者である(他人に感染させる可能性がある)確率
・自分がいま生活の中で接触する範囲の人たちの中に感染者がどのぐらいいるか、感染者と接触する確率
を考えたいときに手掛かりになりそうな気はするけれど…
でもまぁ、「自分」というところまで個別具体のケースにおろしていくと、こういう都道府県単位の数字ではほとんどいみがないような気もするんだけど。
つまり、同じ県内でも市街地もあれば農山村もあるし、畑仕事をしてる人もいれば満員電車通勤している人もいるわけだから、都道府県というくくりではまだ粗い。
なので、やっぱりこれも、上がったり下がったりの変化を見るぐらいの湯加減で見るべきかなあ。
あと、やはり、捕捉率というか暗数みたいなことは考えておくべきで、
検査陽性者が一人見つかったら、その背後に、捕捉されていない感染者が何人、みたいな考え方はあると思う。発症前で感染性のある人もいるし、無症候ないしほとんど気づかないぐらいの軽い症状の感染者のひともいるだろうし、検査をしても偽陰性が出る人もまぁいるだろう。そうすると仮にまぁあてずっぽうで、一人見つかるとその10倍ぐらいの暗数があるかも、とまぁ仮に考えてみる、等々。
さてそれはそれとして、いま東京の「10万対発生数」が「12.5」、大阪が「7.8」、兵庫が「6.6」、京都が「2.1」と出ている。えーと、「10万人に12.5人に当たるくじ」を引いてるのと同じと考えると、たとえば東京に住んでる人が「この1週間で新規感染者になった」確率は、えーと、0.0125%、てとこか。でまぁしかし暗数ということを考えて仮にその10倍として0.125%、みたいなイメージ? そういう計算にどの程度の有意味性があるのかはわからんけど、まぁ、どのくらいの桁なのかという感覚として。
うーん、たとえば日常生活を送るときに、「自分自身や周囲の人が感染者であっても大丈夫なように行動する」とする。それで、その確率の一つの目安としてたとえば0.125%なりなんなりの数字が与えられるとすると、こんどは、あれ、じゃあ99%はセーフなのか、と言いたくなる心は、まぁ、動くわけである。そしてしかし、じゃあまあいいやということで行動する人が社会の何割、みたいになってくると、こんどは感染拡大に抑えが効かなくなってくる。
調べたわけじゃないので直観的にだけれど、「自粛疲れ」でもなんでもいいけれど、たぶん一人の人間の行動様式がだんだん疲れて甘くなってきた、というのではなくて、この社会の中で「厳格に自粛する人」「自粛なんかしない人」「まんなかぐらいの人」が何割かずついるわけで、その比率が変わる、とくに「まんなかぐらいの人」が「自粛なんかしない人」のほうに移る、みたいなことがあるんじゃないか。それはつまり、「0.125%でも気にしよう」というのから「99%セーフなんだからセーフでいいじゃん」というのに変更する、ということなんじゃないか。等々。そのあたり、1年ぐらい前にここに書いたけれど(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2020/04/18/215851)、この新型コロナウイルスが、奇妙に、クリス・アンダーソン的な世界をみせるかんじがある。
クラスター対策とかの、あれこれの「8:2」という数字とか、グラフとか見たり、あと「規模が脅威になる」という考え方を見ていたら、ふと、「ロングテール」とか「フリーミアム」とかそういうクリス・アンダーソン的な世界を思い出した。多数者にコストゼロないし低コストで提供することによってシェアを拡大する。収益は少数者から上げる。そうやって全体の規模を拡大することによって、こんどは「ロングテール」部分を収益化可能にする。そうすると、「クラスター対策」というのはいわば、従来のビジネスモデルの、「売れ筋=ヘッド」に特化した戦略で、全体の規模が小さい時にはそれで戦えるけれど、ウイルスの感染が拡大して「ロングテール」の部分がそれ自体として収益化=あたらしい感染拡大の出発点になりはじめると、フェーズが変わって別のビジネスモデルの戦いになる - 的な。このたとえがあまり印象良くないのは、目線がウイルス側にあるためで、コストとか収益とかのたとえが意味するところを考えるといやになる。しかしそれをいったらamazonが拡大して桁違いの規模を獲得してロングテールから収益を上げるビジネスモデルを確立してしまったことじたい従来型のビジネスモデルからすれば死活的に不快なことでもある。いずれにせよ、このいかにも無駄な社会学者の思い付きみたいなたとえ話は、ちょっと考えてみたがやはり何の役にも立たないしこのたとえによって何かの理解がすすむというわけでもやはりないようだ。たとえば新型コロナはWeb進化論的な進化を遂げたウイルスなのだ等々言ってみてもまったく無意味だ。
やんなるなあ。
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さっきの「0.125%」という、あくまで仮の見積もりのではあるにせよ、数字の規模感をいろいろイメージしてみる。たとえば大学には学生さんがたくさんいて、まぁ3000人の大学だと、3人ぐらい。つまり今この瞬間に感染している学生さんが3人ぐらいいても文句は言えない、というぐらいのイメージ。これは、実感からして、まぁうちの大学でうちの地域でというとそんなに高くないだろうが(東京の数字は突出してるので、ほかのほとんどの地域だとたぶん1人いないぐらいの計算?)、でも、この数字は現在の東京の数字から計算したわけで、そう考えると、妙にリアリティがある。たとえば年末年始にきつかったときは学生さんにもやはり感染者が出てたわけで、その時のイメージの延長上で、今の東京なら…と想像していくと、うーん、そう何ケタもくいちがわないんじゃないかというリアリティ感はありそうな気がする。何ケタもくいちがわないんじゃないかというリアリティ感、というぐらいの大雑把なイメージがどのぐらい現実的かというはなしもあるだろうけど。
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3/21
忽那医師のYahoo!ニュース。「2回目の緊急事態宣言解除 前回と異なる点は?」
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前回の緊急事態宣言の解除後とは状況が異なる点がいくつかあります。
1つ目は、前回よりも新型コロナの感染伝播に関する知見が集積していることです。どのような場面で感染が広がりやすいのか、我々はもう耳にタコができるほど聞かされているはずです。
2つ目は、すでに治療がある程度確立していることです。前回の緊急事態宣言解除のときにはレムデシビルが承認されたばかりで、またデキサメタゾンの治療効果も分かっていませんでしたが、現在はどのようなタイミングで治療薬を使用すべきか分かってきました。
3つ目は、これが一番大事なことですが、ワクチン接種が始まっています。
記事の中ではいろいろ厳しい見通しにも言及しつつ、「前回と異なる3つの点」についてはポジティブなところを出してきてるね。「認識においては悲観主義者、意志においては楽観主義者たれ」というやつかな。お医者さんというのもそういうのが求められる稼業ではあるだろうね。みならうべし。