いよいよ東京で数字が上がってきた。曜日の具合も注視しつつだが、東京の新規感染者数が、7/28に3000人を超え、7/31には4000人を超えるというなかなかのエクストリームなかんじ。
さしあたりいまの、公式の数字をみてみると、「10万対発生数」が、東京145.6、大阪59.9、兵庫31.2、京都37.4、奈良25.8、ってところ。実効再生産数で見ると(これは東洋経済のサイトのほうの数字)、全国1.77、東京1.74、大阪1.74、兵庫1.92、京都2.02、奈良1.61、ってところ。
これらの数字は、以前は、
自分むけにCOVID-19関連について現時点でどう考えることにするかをまとめておく。(その10:3/18-) - クリッピングとメモ ←この記事の3/20ぐらい。
自分むけにCOVID-19関連について現時点でどう考えることにするかをまとめておく。(その12:4/25-) - クリッピングとメモ ←この記事の5/7ぐらい。
自分むけにCOVID-19関連について現時点でどう考えることにするかをまとめておく。(その13:5/17-) - クリッピングとメモ ←この記事の5/30ぐらい。
で見てる。
いま現在の「10万対発生数」を見るというのもだが、過去と何が違うというと、実効再生産数がやたら高いかんじがする。そうすると、あっというまに感染者数は倍増するよというわけで、これはちょっとなんというかエクストリームである。
さてそしてしかし、この現在の東京の数字に関しては、検査陽性率が7/30付で19.5であると。つまり、かなり検査が追い付いてないよという事だろう。
stopcovid19.metro.tokyo.lg.jp
*
例によって忽那医師の記事。
news.yahoo.co.jp
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「入院した“感染経路不明”の人 多くが感染リスク高い行動」
それはそうでしょうという記事。感染経路不明、と聞くと、水も漏らさぬ対策をしていた人が謎の感染をしたようにかんじるかもしれないけど、たぶん多くはそんなことはなくて、全般で緩いのでどれが決め手かわからない、というほうが多いだろう。「ちゃんと注意してました」みたいに訴える人でも、聞き取りをていねいにやると、いろいろ出てくる、というかんじ。www3.nhk.or.jp
そのへんはね、じつは大学の感染対策の会議なんかを聞いていても感じるし、ふだん学生さんと喋っていても感じる。非常にぴりぴりとストレスフルな生活をしているようでいて、意外とわきが甘いというのを見かける。また、学生さん本人がしっかりしている場合でも、学生さんのバイト先の話を聞くと、世間には愕然とするぐらいノーガードのひとたちがたくさんいるのである。えーとつまり、お客さんで来るひとたちの様態ということですな。こういうのはたぶん、大学界隈の中で生きている大学教師と、世間にもまれてバイト生活をしている学生さんたちとでも、見てる世界が違うだろうというのはある。
*
8/3.
坂本先生の記事。
www.buzzfeed.com
今まではちょっとマスクを外すなど隙ができても、やられる可能性は低かった。でもデルタはちょっとした隙をついて感染させる効率的なウイルスになっています。
ーー従来株からの感染力のパワーアップをわかりやすく伝えるとすると、どれぐらいの行為で感染するウイルスになっているのでしょう。
例えば、無症状の時期の感染者を含むお友達2〜3人でランチに行って、大騒ぎするわけでもなく普通の声で話して感染している人がいます。または職場でマスクを外して少し話をするとか、それぐらいでも感染しています。
こうした飛沫を浴びたり吸ったりするチャンスが生じる行為は、これまでも何度もやってきて、無事だったかもしれません。しかし今は同じ行為でも感染のしやすさがうんと上がっているのです。
ーーこれまでの濃厚接触者の定義は、「1m以内の距離で、 必要な感染予防策なしで患者と15 分以上の接触があった人」ということでした。デルタ株ではこの定義は甘いのではないですか?
デルタ株では「15分以上」は長過ぎるかもしれません。その時の声の大きさや距離の近さなど状況にもよるかもしれませんが、デルタ株の場合は15分以内なら感染するリスクが低いとは考えにくいです。
ーーとなると、デルタ株ではこれまでよりももっと警戒感を上げなくてはならないのではないでしょうか?
でも、やらなくてはいけないことは同じです。コロナが流行し始めてから1年半も経っていて、コロナ疲れも限界に達していますね。
ですから、「今までとは別の新しい対策」というよりは、「今までやらなければいけなかったけれども、そろそろ嫌になって止めてしまっている対策」を徹底した方がいい。その中でも特にリスクの高い行為について、「今は止めておこう」と呼びかける方がいいのではないでしょうか。
例えば、一緒に住んでいない人と一緒にご飯を食べにいくとか、帰省するのを止めておく。やれば効果があるけれど止めてしまっている対策を復活させましょうという段階だと思います。
院内で集中治療室を見にいくと、40〜50代の男性が多いです。管が入り、意識がない彼らは、誰かのお父さんであったり、息子であったりする。働き盛りの人たちということもあり、回復してもらえるよう、医師や看護師らが暑い中で防護具をいっぱい着込んで治療しています。
そういう患者が増え、救急車の出入りも増え、受け入れられない人も増えている。外来には熱を出した人がいっぱいいる。
病院の中はそんな感じなのに、テレビをつけるとオリンピックで盛り上がっている。この国にはいま、二つの違う世界が存在しています。
会社員は連れ立ってご飯を食べに行き、その横を救急車が走る。
悪気があるわけではない。でも、こうした無防備な人たちへのメッセージはどうなっているのか。この国で暮らしている人たちが医療を受けられないしわ寄せがもうきているのです。そこを政府はどう考えているのかがとても見えにくい。
↓
西浦先生の記事。もう少し悲鳴感がある。
gendai.ismedia.jp
みなさんに私からもお願いしたい。どうか、今回ばかりは皆で協力して一旦切り抜けることはできないだろうか。ヒトからヒトにうつる病気の感染リスクは、まだかかっていない人の周囲の人の感染状態に依存しており、1人がかかると、次の方のリスクが急上昇することに繋がる。皆で感染が止まると、集団レベルでリスクを下げることができる。様々な不満もあるかも知れないが、皆さんの協力がなければ秋以降を見通すことができない。
このあたりは芸風というか、実務と理論というか。「英知においては悲観主義者、だが意志においては楽観主義者であれ。」 というやつで。
理論的に見通せば、あきらかに相当悲観的な予測がはっきりと見えていて、そのことを声を枯らして警告しなくてはとなるだろうし、感染対策の実務としては、どんだけ悲惨な状況の中でも粛々とやるべきことをやってよりよい(よりましな)現実を実現するしかないわけなので。
坂本先生と西浦先生に見えているものが違うというわけではなくて、同じものが見えている、ただ、立ち位置がちがうわけだろう。
ーー医療の負担も増えていますか?
我々は限界を超えたらお断りせざるを得ません。
感染対策は1年半やってきていますから、淡々と受け入れて治療やケアをする。重症化したら集中治療室に移して、管が抜けたらコロナ病棟に戻し、元気になったら退院するなりリハビリ病院に移すなり、治療の流れはできています。
もちろん患者が増えたら負担は増えるのですが、そこを超えて阿鼻叫喚の世界にはなりません。
むしろ、感染者が増えて困るのは病院ではなく、受け入れてもらう病院がない人たちです。
これ、実務家の立ち位置である。いうまでもないけど、病院が阿鼻叫喚の世界になったら社会全体が困るわけなので、これは病院のエゴを言ってるわけではないし、悲惨が見えていないわけでもなくて、自分がハンドルできる範囲内で全体の状況を最善にする最適解を言うとこうだよ、ということだろう。
*
8/4.
デルタ株になってということになるだろうけれど、目について気になる情報は、「スーパーや百貨店でクラスター」というやつ。
都内スーパー各チェーンの感染者発生状況見てると、先週からあきらかに違う段階に入ったのを実感できる
— さかい しょうじ (@tkdsh) 2021年8月1日
・オオゼキ https://t.co/pk3TUMPCZj
・ライフhttps://t.co/3BC6i5mHwU
・サミットhttps://t.co/wT4Rr80sg6
・マルエツhttps://t.co/6dhE76DxFH
・東急ストアhttps://t.co/Iai1z28fYI pic.twitter.com/FCbQ3G1S82
これ、基本的には、各社が発表しているのは、従業員の人たちの感染というおはなしで、まぁおそらくはバックヤードで感染が広がったよというふうに、これじたいは解釈できる。換気の悪い狭いバックヤードで長時間の作業をする業種でもあるのかもしれない。あるいはそもそも、こういう客商売のところはクラスターが出たら即時発表をするので目立つけれど(大学もそういうところがあるのだが)、じゃあほかの業種で感染者がいないかというとそうでもないだろう、黙っているところは目立たない、というのもあるだろう。また、こういう感染爆発状況の一般的な反応として商業施設について集中的に調べてまとめる人が出てきただけで、これらのお店も以前から(大学と同じく)粛々と感染者情報を出し続けていたのかもしれず、それをこのタイミングでまとめて可視化することじたいがパニック反応の一面ということもあるのかもしれない。まぁそういうもろもろをふまえたうえでなのだけれど、ふつうに考えるのは、じゃあそのお店を利用したお客さんとの間ではどうなのか、お客さんから従業員の人が感染してしまったということはあるのか、従業員のひとからお客さんが感染してしまうことはあるのか、ということ。で、お客さんのほうに感染しているかどうかというのはたぶんなかなか把握しにくいだろう(とくにこの状況では)。そうすると、もう少し情報が出てくるまでは、頭に入れておく必要はあるかもしれない。
基本的に、モノの表面に触ることを介して感染する確率は十分に低いとしたもんだとなっているはず。なので、買い物をして帰ってきて商品をいちいち消毒したりとかは必要ないだろう。問題はたぶん、換気だろうなあと。バックヤードが換気がわるかったのだろうと考えるなら、そもそも店内の空間そのものもさして換気はよくないんじゃないかとは以前から思ってたんだよなあ。特に夏場、空調をかけると換気はおろそかになるとか。あるいは、これも前から気になっているのだけれど、ビルの中にある商業施設だと、窓ははめ殺しだし、換気は空調といっしょにおこなっているはずで、まぁそれはそれでいいのかもしれないけれど(建築の規準というのがあって、換気についてもとうぜん基準をクリアしているはず、前にちょっとだけ調べたけど、たしかに、CO2濃度の規準もあるし、あと、コロナ以前にインフルでもなんでも空気感染する病気はあったわけでそのあたりも念頭にはおいてるはず)、そのへんもちょっと気には留めたくなるよね。
↓
k先生が反応しておられた。スレッドを参照。
バックヤード感染にしては分布が偏ってるから売り場での感染が主体?思えばデパ地下って
— 画像診断医k🐾屋代香絵 (@AdultSpotDiffer) 2021年8月4日
1)店員の発声・会話
2)友人と会話
3)テイクアウト増えて混雑
4)換気能力の相対的不足の恐れ
風評被害との怒られが生じそうだけど、理論上、リスクは高めな気が。
ガヤガヤしてて大きな声出しがちだし。
このへんは「風評被害」とのかねあいがむつかしいと思いつつ。「二重マスク」「短時間」「黙って」ぐらいを多くの人が守ることかなあ…
*
坂本先生ツイート。
【流行地域ToDo】
— 🍍Fumie Sakamoto,MPH,CIC,FLTN 坂本史衣 (@SakamotoFumie) 2021年8月3日
機会があり次第予防接種
可能な限り家で過ごす
屋内外で同居者以外と1〜2m以内→常時マスク
屋内の人が集まる場所→常時マスク
マスクなし多数の場所→避ける
フィットする不織布マスクを使用
かぜ症状や発熱→休む
職場等で換気と熱中症予防
手洗い
*
8/8.
東京の検査統計が飽和してしまって実態をあらわせなくなってるんじゃないのというツイート。
東京の検査統計、8/1以降サチっていますね。もはや示度としても使えない無意味な数値。
— Hiroshi Makita Ph.D. (@BB45_Colorado) 2021年8月7日
実は7/23以降、東京都の発熱相談電話件数がサチッているのです。従って、多少の遅行時間をおいて臨床もサチる訳。臨床がサチれば、臨床検査結果は当然サチる。https://t.co/n7dpII1xGehttps://t.co/sxLNOBmCQR pic.twitter.com/2QoeCpVm9I
日本における日毎新規感染者数
— Hiroshi Makita Ph.D. (@BB45_Colorado) 2021年8月7日
人,7日移動平均,線形と片対数https://t.co/vT1NqdVX8o
一見して自明だが、8/1以降、統計に異常が見られる。大きな寄与を持つ集団が検査飽和、統計崩壊を起こしていることはほぼ間違いない。 pic.twitter.com/MynWs5KQQs
まぁ、検査陽性率が高くなっている、というのはすでに事実なのだけど、「検査飽和、統計崩壊」とは穏やかではないなぁ…。統計が崩壊するというのは、集計するしくみみたいなものも機能不全になるということかしらん。
それはまぁありうるなぁ…。
でも、東京の実効再生産数が下がっているのを統計崩壊だけのせいにもできなそうな気もして、
たとえば、まだ検査飽和になってなさそうな地方の動向を見て、そこも同様に8月頭ぐらいから実効再生産数が下がってるように見えなくもなかったりすると、これはやはりじっさいに実効再生産数が下がってきてると見ることはできないだろうか?
もちろん、このタイミングで全国的に実効再生産数が下がる要因はあんまり見当たらない。みんなようやく怖がって行動自粛に本気になり始めた?オリンピックを自宅観戦してる?そのへんが効いているというニュースは耳にしない(ていうか、効いてないよというニュースを耳にする気もする)。だとするとやはり検査や統計が機能不全になってる結果を示してるということなのか…? うーむ。検査も感染者数の集計も、よく知らんけどたぶん想像では、地域(都道府県?)ごとでやってるんだろうと思って、だとすると、全国同じタイミングでおなじように機能不全を起こすというのは考えにくいんだよなあ…。
わからん。まぁ、たぶんそんなに待たなくても答え合わせができちゃうんだろうな…。
*
8/10.
上にTweetを貼り付けた、検査崩壊に関する件。自分的には、念頭には置きつつ、でも東京以外のまだ感染爆発してなさそうな地域でも同じ傾向が見られるのだから、やはり感染拡大の勢いがここ数日抑えられてるというデータがまるきり統計の機能不全だけによって見かけ上そう見えてるに過ぎないとまでは言えないのでは…というぐらいの湯加減だったのだが、
本邦における検査体制のウィルスへの完全敗北、新規感染者数統計の崩壊が明確となりましたので、東京他の新規感染者数の予測を取りやめます。
— Hiroshi Makita Ph.D. (@BB45_Colorado) 2021年8月8日
理由は、8/1以降、もととなる統計が全国で崩壊し、意味のない数字を吐き出しているからです。
引き金は7/30厚労省通知です。https://t.co/adXEfS5RKl
ふむ、「7/30厚労省通知」というのが鍵であると。
自治体・医療機関向けの情報一覧(事務連絡等)(新型コロナウイルス感染症)2021年|厚生労働省
ここ↑にある「感染拡大地域の積極的疫学調査における濃厚接触者の特定等について」と「(別添)感染拡大地域の積極的疫学調査における濃厚接触者の特定等について」のことだろうな。
↓
いや、しかし、「下請けにだしてもいいよ」っていうか「陽性者が確認された事業所が、保健所業務の補助として、本人の同意を得た上で一定の基準(別添参照)に基づき濃厚接触者やその周辺の検査対象となる者(以下「濃厚接触者等」という)の候補範囲を特定し、濃厚接触者等の候補者リストを保健所に提示することにより、保健所が適切と認定した場合(範囲)において、行政検査として必要な検査を実施することも可能です」となれば、「事業所」が正直にやるとは限らないのか…。
これ↓、バズってて目に入った「告発」ツイート(スレッド参照)で、「ほかのところもそうです」みたいに賛同している関連ツイートもある。まぁこれだけを見て100%真に受けるべしかはともかく、そういうことは起こりうるなあと考えさせられる。
伊勢丹は百貨店指示により、取引先、個人共に陽性者が自分の同僚で出たとしても自分の意思で検査を受ける事を禁じています。
— bu-tan (@butan79361016) 2021年8月7日
検査を受ける場合には百貨店へ事前に"いつ、何名検査をするか"の計画を提出し承認をとる必要があります。
なぜなら検査を受けた場合には→
このあたり、何をクラスターとし何をクラスターとしないのか、というのはけっこう「何で?」ということはあって、でも事業者にとってみれば「クラスター」認定されないのとされるのではかなり大きな違いになるという。
*
8/14.
ワクチンの効果が、接種後にどう減衰するか、という件についてのTweet。
●現行mRNAワクチンのデルタ株に対する感染阻止効果は、接種後数か月で急速に減弱する
— influenzer (@influenzer3) 2021年8月13日
→カタールでの検討です。
プレプリントですが、重要な結果かと思い取り上げました。
詳しいデータがありませんが、カタールは2020年よりワクチン接種を開始し、中央値で5月7日にファイザーワクチン2回接種完了。
一方で、重症化阻止効果については、この短期間では大きな減弱は見られていません。
— influenzer (@influenzer3) 2021年8月13日
今回の結果からは、少なくとも2点についてはほぼ決着がついたような気がします。
・現行のmRNAワクチンのデルタ株に対する感染阻止効果は接種後数か月で急速に減弱する
— influenzer (@influenzer3) 2021年8月13日
・デルタ株感染拡大阻止のためには、ワクチン接種完了者もマスク着用が必要
てごわいなあ…。
*
検査について。
なんかもう、抗原検査キットの「感度が悪い」という欠点を、ウイルスが勝手に補完しているみたいだ。。
— medtoolz (@medtoolz) 2021年8月14日
じぶんは、基本的には、自分が読んだ入門書通り(たぶん)の考えで、検査陽性率5%を目安としてそれ以上に「PCR検査を増やすべし」とは考えない人(いま現在は、感染拡大地域で陽性率がばか高い、20%超えとかあるので、これは検査が足りてない状態、とうぜん今は「増やすべし」のフェーズでまちがいないだろうと思う)。それは、本で読んで理屈で納得したというのもあるし、また、職場のコロナ対策の会議で情報として耳にするあれこれのなかで、実際のPCR検査というのがけっこうあてにならん、陰性だったのがあとで陽性になるとか、陰性だけど咳が止まらないとか高熱が出るとか味覚がなくなるとか(もちろんコロナ以外で咳や熱が出ることはあるわけだから基本的には陰性ならその時点ではひとまずコロナではないとせざるを得ない)、そういうばあいがけっこうあるんだよというのを耳にするわけで、まぁつまり、あるていどリアルに、PCR検査をあてにした感染制御ってしんどいだろうなという感覚がある。えーとたとえば旅行の前にPCR検査を受けて陰性を確認して安心して行く、みたいなのがあんまり意味ないだろうなあという感覚はある(全くの個人的な偏見だけど、そういうのって、「PCR検査」っていう聞きなれない英語っぽい名前が「科学的」っぽく聞こえちゃうことや、お値段が高いことによって、なんとなく神格化しちゃうような心理はあるんじゃないかと思う)。Twitterのタイムラインなんかでは、よく、「PCR検査を増やすべし」の人が、そうじゃないお医者さんなんかを「検査抑制派」と呼んだりしているけれど、どっちかというと、「検査推進派/検査抑制派」の対立軸というより、「行動制限抑制派/行動制限推進派」って言ってみたらいいんじゃないかなあと思う。感染を防ぐのは行動制限であって、検査しようがしまいが、行動制限しなければ感染はひろがるし、行動制限してれば感染は広がらない。極端な話、全地球人が2週間まったく引きこもれば、コロナは地上から消えるわけである。「PCR検査を増やすべし」の人は、検査こそ感染制御の基本というわけで、まぁたしかに検査の精度が理想的に高くて当てになれば、それはその通りだと思うんだけれど、いかんせん、PCR検査ってけっこうザルだよ、ということになればおはなしはちがってくる。「PCR検査を必要以上に増やしても意味ない」と言ってるお医者さんたちは、それと合わせて「行動制限をしないといけないですよ、検査で陰性が出たっつって飲み会やったりしたら逆効果ですよ」と言ってるわけで、そっちからみればたしかに、「PCR検査を増やすべし」という意見は、実質上、「行動制限抑制派」と見えなくもない。「PCR検査なんて当てにならないんだからとにかく検査するしないに関わらず行動制限しましょう」に対して、「PCR検査こそが重要」と言っているのだから。
… というのがまぁ前振りで、しかし、上↑のTweetで言われているように、デルタ株以来、ウイルス量がやたら多いってことで、結果的に検査の精度が上がってきちゃってるようなもんだと…こうなると、簡易の抗原検査をじゃんじゃん有効活用することに相応の意味が出てくるのかなあと思ったり…?
↓
8/16.
そうそう、検査のはなしで追加。とくに新情報ではなくて、思っていたことを書き留めておくメモ的ないみで。
「PCR検査こそが重要」の意見のなかに、コロナでは無症候感染者がたくさんいるのだから検査しなければ放置されて市中に蔓延してしまう、でも見かけ上の感染者数を少なく見せようとして検査抑制しているんじゃないか、という推測が入っているばあいがある。でもたぶんそれはあたらない(すくなくとも、デルタ株以前には当たっていなかった)んじゃないか、というおはなし。なぜなら、少なくともある目安(「検査陽性率5%」とかなんとか)にしたがっていちおう検査&接触者追跡が機能している状態であれば(いまの感染爆発地域は違うのだけど)、ある検査陽性者が出たらそこから感染する可能性がいちばんありそうな人はそれなりに追跡できてるという理屈なので。で、もちろん、そこで「濃厚接触者」の定義から外れて検査をしなかった人がじつは感染していたということはありうるけれど、もしそこから感染が広がれば、遠からずどこかでまた症状の出る人が出てくるだろうしそうすれば検査の網に引っかかってくるだろう、という。えーとつまり、無症候感染者だけがどんどん市中に際限なく広がる、ということを考える必要があるか、というはなしで、理屈からすれば、それはあまり考えないでいいことだよ、ということになっているはずなんである。少なくともその理屈で、この1年半のうちのすくなくとも最近までは、おおむね感染制御できていたわけで、そのやりかたそのものが間違ってたと考える必要はないだろうというのが自分の理解。ただ、くりかえすように、今は感染拡大地域では検査陽性率が高くなってるので「仕組み」がうまく機能しなくなってきてる可能性がある。また、デルタ株以来、「濃厚接触者」の定義を変える必要があるかもしれないけれど、たとえば「換気の悪いショッピングセンターにある時間帯にいた人すべて」みたいにまで拡大すると接触者追跡のシステムそのものが成立しなくなるわけだから、そういうエアロゾル感染については(いまのところ感染の主流ルートとまではいえなそうだとすれば)目をつぶって(いまだに感染の主流ルートであるといえる?)従来の「濃厚接触者」の追跡にまずは注力する、というやりかたで対処することになるのかもしれない。まぁ、エアロゾル感染にしたって、解決法としては「危険が十分に減るまで換気をする」しかないわけで、検査を増やしてもそれ自体として感染を減らすことには(たぶん)ならないような気がする。んだけど、まぁとにかく今は感染爆発・検査陽性率上昇をなんとかして、デルタ株の影響を見極めないといかんフェーズなのはまちがいない。
*
緊急事態宣言、東京、神奈川、千葉、埼玉の1都3県と大阪府、沖縄県の期限を9月半ばまで延長&京都府と兵庫、福岡両県にも新たに宣言を発令する方向で検討、のニュース。やれやれ。
この記事の一番上で、8/2時点の数字を挙げておいたのを再掲すると、
「10万対発生数」が、東京145.6、大阪59.9、兵庫31.2、京都37.4、奈良25.8、ってところ。実効再生産数で見ると(これは東洋経済のサイトのほうの数字)、全国1.77、東京1.74、大阪1.74、兵庫1.92、京都2.02、奈良1.61、ってところ。
で、半月経っていまはどうでしょうというと、
「10万対発生数」が、東京214.1、大阪113.2、兵庫67、京都90.3、奈良54.6、ってところ。実効再生産数で見ると(これは東洋経済のサイトのほうの数字)、全国1.16、東京1.06、大阪1.21、兵庫1.2、京都1.28、奈良1.16、ってところ。ちなみに東京の検査陽性率は24.0%。京都の検査陽性率が8/14付で19.5%(最高は8/10付の20.3%)。エクストリーム度合いが向上している。
*
8/19.
10日ぐらい前とか↑に、いわゆる「検査がサチってるのでは」についてのTweetを貼り付けた。で、たしかに検査陽性率は高いので検査が追い付いてないのは確かだが、しかし8月頭ぐらいに少し感染拡大の勢いが(具体的には実効再生産数が)加速度としては落ち着いたように見えたのがまるきり錯覚だったともいえないのでは、という気もしていて、しかしまぁ答え合わせはすぐに出てくるなあと思いつつ全国でさらに感染が拡大しているように見えるのだが、
西浦先生のTweet(スレッド参照)。スレッドからいくつかピックアップして貼り付けておく。発症日別の年齢群別データ。グラフの灰色のところは「報告の遅れ可能性のある期間です(今後まだ積みあがる箇所)」。
「…明らかに私が過大評価をしたと思っています。7月後半部で急ブレーキがかかっている…」(検査が追い付いていないことを勘案しても)「0-39歳、より厳密にはより低い年代での伝播が7月後半部にやや止まったことによって、感染者数の急上昇が止まっているものと洞察しています」というかんじ。
いつも出している内容ですが、今日のADB資料抜粋です。首都圏における発症日別の年齢群別データ。もっと年齢区分を細かく分析していますが、いまどうして全体的に横這い近くに見えるのか。デルタ株の潜伏期間は平均3日間程度です。 pic.twitter.com/uJ0YV6NNHr
— Hiroshi Nishiura (@nishiurah) 2021年8月18日
東京都。報告日別で8月後半に数万さえ可能と思っていたダイナミクスでしたが、明らかに私が過大評価をしたと思っています。7月後半部で急ブレーキがかかっている最初の年齢層はどこでしょうか。 pic.twitter.com/mssrIu13fp
— Hiroshi Nishiura (@nishiurah) 2021年8月18日
検査が行き届いていない点があって、最近の報告が過少である傍証もありますが、0-39歳、より厳密にはより低い年代での伝播が7月後半部にやや止まったことによって、感染者数の急上昇が止まっているものと洞察しています。より客観的な分析を実施しています。
— Hiroshi Nishiura (@nishiurah) 2021年8月18日
まぁ、感染拡大そのものはいまもしているわけで、「急上昇」の勢いがやや落ちただけということでもあり、また、たぶんフェーズとしては首都圏から全国に感染拡大の傾向が広がってるのが今だと思うので、東京の加速度が多少鈍ったからといって、超最悪が最悪になったぐらいの最悪さかげんていどであることは肝に銘じるべしとは思う。まぁ、これも上に貼り付けた西浦先生の記事の時点の超最悪の見通しよりは持ちこたえてて、西浦先生自身が見通しを修正したよ、という事ではあるようだ。
*
8/24.
かなりきびしい&きびしさを増している状態は続いているみたい。
ところで、Twitterで見かけて、おや?と思った図。出典は東大病院のHPのコロナの説明(URLからは今年の4月時点かな)のところに出ているってことだけれど、これだと、「感染性がある期間」と「ウイルスが検出される期間」のスタートが同じタイミングになってる。Twitterでは、この図を示しながら、検査と隔離があたりまえの基本なのになぜやらないのか、という調子のツイートを見かけたわけだけれど、そりゃこの図の通りならそうなるわけである。しかし、自分の認識では、検査でウイルスが検出されはじめるタイミングは感染性が出はじめるタイミングよりも遅れる、ということだと思ってる&自分が耳にするケースでもけっこうそういうふうになってるように思われるので、だからこそやっかいで検査はあてにならんからこの騒ぎになってる、と認識している。
んだけど、さすがに天下の東大病院がこの図を示してるとなると、ちょっとマークしておかざるをえんなあ…。
www.h.u-tokyo.ac.jp
ちなみに、
自分がいまのところ信用しているのは、5/17のこの欄で貼り付けたTweetから見れた、この図↓。
これ、もとは(いまTwitterにカギをかけておられるが)発熱外来でコロナを見まくっているという先生のTweetを図に起こしたもので、相応の信頼性はあると考えている。経験からくる目安ということなのでこの通りにならないこともあるということではあるにせよ、ようするに「人にうつす可能性がある」「発症する」「PCR陽性が出る」のタイミングがずれるよ、発症しててさえPCR陰性になることはめずらしくないよ、というところは変わらないだろう。陽性が出るまでに何度かPCR検査をした、というケースを耳にすることはめずらしくないと思う。なので、感覚的にこっちの図のほうがぴったりくるんである。
*
8/26.
東京が妙に(見た目の)感染拡大の勢いを下げているようにみえることについてのTweet。これもスレッドを参照。いくつかピックアップ。
東京など大都市圏の日毎新規感染者数統計は、8/21-30の期間がお盆休み効果で強い下げ圧力があります。
— Hiroshi Makita Ph.D. 誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?扶桑社8/18発売中 (@BB45_Colorado) 2021年8月25日
8/31以降は逆にお盆明け効果で増加圧力がかかります。
現在、東京の統計が下げに転じていますが、これが一過性か継続するかは、お盆明け効果を9/7頃まで観測しないと分かりません。
東京都区部のモビリティは、お盆休み中に下がっていますが、地方は逆にお盆休み中に増加が見られます。
— Hiroshi Makita Ph.D. 誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?扶桑社8/18発売中 (@BB45_Colorado) 2021年8月25日
来られの地域の多くでは日毎新規感染者数は、お盆効果で増加が見られています。https://t.co/qwzoHedcBV pic.twitter.com/08WkxjMNAE
現在、全国的にお盆休み効果で実効再生産数は混乱しています。
— Hiroshi Makita Ph.D. 誰が日本のコロナ禍を悪化させたのか?扶桑社8/18発売中 (@BB45_Colorado) 2021年8月25日
実効再生産数は、日毎新規感染者数の一週間移動平均と、前週同日の一週間移動平均の比較で算出されます。
従って、現在の値は、お盆休みによる異常値です。意思決定には使えません。
実効再生産数の正常化は、8/31以降です。
ようするに今の東京の数字は半月前のお盆休みによる一時的な効果であると。なのでまたもとにもどる。逆に地方ではお盆休み効果が感染拡大としてあらわれてるよと。
*
検査について、Twitterで見かけた「反・検査抑制論」のTweet(なのかな?)。たとえ話の作り方として興味深かったのでクリップしておく。
池に、放っておくと大繁殖する未知の外来種の魚が数匹紛れ込んだ。さてどうするか。
— mm (@tyonarock) 2021年8月25日
大きな網を張ってお金かけてシラミ潰しで探す
魚釣りのプロが釣り竿で探す
大繁殖してから網や釣り竿で探す(事前確率最高)
自然にまかせる https://t.co/0QwpXkHjRo
このたとえ話を見ると、一瞬、「大きな網を張ってお金かけてシラミ潰しで探す」が正解に思えるけれど、
このたとえ話に乗りつつ言うならば、たぶん、その外来種は、ときどき大きく跳ねて水面から姿を現すよ、という。なので、それを見つけて捕まえたうえでその周囲をある程度の大きさの網ですくって、だいたい5%=100匹のうち5匹ぐらいの割合で外来種がまざってるぐらいなら、まぁ、おおかた繁殖を抑え込めるよ、という。5%よりも多くなってきたら、網の大きさをもう少し大きくしておおむね5%以下をキープすべしとなるね、という。まぁそういう解答を考えた。
*
8/27.
従来の飛沫、空気感染(=airborne transmission)の定義の再考を行うべきとするレビュー論文が出たよのTweetみたい。スレッド。大まかにはエアロゾルに一層注意すべしということのよう。
コロナパンデミックで加速した科学や流体力学の知見から、従来の飛沫、空気感染(=airborne transmission)の定義の再考を行うべきとするレビュー(参考文献なんと206!)が、今朝のScience誌に。
— Hiroshi Tsuji (@Hiroshi_Tsuji) 2021年8月27日
はしかや結核など他の呼吸器系ウイルスの感染経路に関する従来の考え方の更新まで踏み込む、圧巻の内容 1/n pic.twitter.com/Cpn7rE1QSu
で、どうすればいいのかということで、
CO2モニタで換気状況を監視すべしということに戻る。これはやってた。
CO2濃度による換気の監視covidco2jp.wordpress.com