自分むけにCOVID-19関連について現時点でどう考えることにするかをまとめておく。(その16:9/3-)

さて、9月に入った。状況はどうかというと、これがよくわからない。一つの要素は、8月に大都市圏で感染拡大が起こり、ついに検査が追い付かなくなったとか、接触者追跡を部分的にやらなくなったとか、でまた医療がひっ迫してこれ医療崩壊じゃないかと言われたり、またそんなこんなしているうちに感染拡大の波は地方にも広がって、とかなんとかかんとかそういうことが一方であった。他方で、東京を始め(ということは全国合計の数字でも)、感染拡大の勢いが収まってきたり、実効再生産数が1を割ってきたり、ということがある。もちろん、前者と後者がどうつながっているのか、前者つまり検査が完全に現実を反映しなくなったためにこそ起こっている後者はだから見かけ上にすぎない、という見方もありうる。
で、そのへんどうなのかというあたりを、ちょうどのタイミングの西浦先生の記事で:

少し喜んで、でもまた引き締めて 西浦博さんが悩みながら分析したコロナの現状

感染者数が徐々に減っているように見えますが、このデータをそのまま信じることはできません。様々なデータを駆使して分析した現状の判断はどうなのでしょう。「8割おじさん」こと、理論疫学者の西浦博さんが珍しく明るい表情です。

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というわけで三回連載の記事はようするに、「検査が追い付いてないとかなんとかも勘案したうえで、やはりなぜか現時点では拡大の勢いは抑えられているようだ」という現状判断のよう。それはこの欄にも貼り付けた8/19のTweetで表明された認識の延長上だろう。で、それにはいくつかの原因が仮説として考えられるが、まぁやっぱり「医療ひっ迫のメディア報道を見た人たちの自発的な接触制限」と「ワクチン接種」の合わせ技が大きいだろうな、ぐらいの読み。まぁそれはそうだろうね。だとすると逆に言うと、ちょっと安心して、あるいはそうでなくても夏休み期間が終わったことによって、また人々が活動を始めたら、また一挙に感染拡大するよね、ということでもあると。それもそうだ。で、そのばあい、たとえば8月末や9月から小中高校が二学期スタートだとか、まぁ一斉休校だとかなんだとか、話題になってるし、まぁ学校で子どもたちに感染蔓延して子どもたちが各家庭に持ち帰って家族クラスター、という筋書きが恐ろしいわけだけれど、

特に日常生活が一気に戻りすぎる時が危ない。学校再開はそういう意味でとても怖いです。ただ未成年の中でも低い年齢、小中学生は今の自粛状態の条件下では持続的な伝播は起きないものと考えられます。
特に重点的な対策が必要なのは、大学や専門学校に通う10代後半から20代です。勉学や仕事ではICTを利用して接触を減らしてほしい。そうした対策で感染者が減っている状況を持続できると、ぐっと感染者数を減らせると思います。
・・・
ーー先ほど、大学や専門学校でICTを利用して接触を減らしてほしいとおっしゃっていましたが、小中高は休校などは必要ないのですね。
 
今のところ、小中高校生のデータを分析している限りでは、ここまでの対策レベルを維持していれば伝播がそこで続く状況ではありません。大学生以上は伝播が維持・拡大し得ます。そこに相当違いがありそうです。
だから、小中高生の感染リスクは、大学生より上の成人の流行に大きく左右されます。
いまの対策レベルが継続できれば、人口レベルで感染が減ると、小中高での感染も減ると思われます。対策もICTを活用しつつ、感染が起きてしまった場合には早期に接触者を把握するという、文科省の方針でだいたい良いのだと思います。
一方、小中高生も一律に考えるのは難しい。彼らの年齢でも対策をやめてしまって接触が増え始めると、伝播が続くはずです。
それを裏付けているのがイギリスの経験です。
イギリスで成人の予防接種が終わった後、デルタ株で流行が起こって、サッカーの大きな国際大会がありました。予防接種していない成人の感染が起こり、その背後で、ボルトンやベットフォードなどデルタ株による流行が最初に起こった土地で、まず小学校、中学校の集団発生が多発していたのです。
主に未成年の間で流行が立ち上がり、感染拡大しました。大人の行動を見ながら子供の接触も変化しているようです。日本の第5波ほどの感染予防の行動ができておらず、一気に流行が拡大しました。
そこから考えると、接触がコロナ以前のレベルに戻ると、おそらく小学校でも中学校でも感染拡大し得ると思います。そういうことが日本でも起こる可能性があることは頭に置いておいた方がいい。
今の自粛具合での対策と、接触が以前のように戻った場合の対策は切り分けて考えた方がいいということです。

であると。ふむ。

9/10.
緊急事態宣言はあらかた延長が決まる。しかしまぁ感染状況の数字は落ち着いてきてるように見えるのは確か。
ちょっとおもしろいと思ったTweet


ふむふむ。
たしかに、感染しやすさに濃淡があるとして、濃い部分だけに焦点を当てれば、集団免疫の分母は意外に小範囲ごとに分断されてて意外と早く達成されてしまうという考え方はありうるなあと。
そして、ただし、ここにもさいしょのころに書いたように、「「人」に注目せず「場」に注目するべし」の方針に自分的に従うならば、感染しやすい人、というのも体質的にそうだというよりは、そういう場に居合わせやすかったりそういう行動様式を取りがちな人、というふうに考える。
するとたとえば、
このあたりのTweetと考えあわせて、つじつまを合わせる理屈はありうる。
そのスレッドで紹介されてた峰先生の8/31付けの記事。
business.nikkei.com

第5波はなさけない形で収束する?

―― そんなお考えを伺ったあとで大変恐縮なんですが、第5波はどうなると見ていますか。

峰:これはあくまで現時点での個人的な意見ですが、私は第5波は秋のうちには収束してくれるのではないかとは思っています。

―― 思わず飛びつきたくなりますが、それは、どの辺に最大の根拠がおありなんでしょうか。

峰:これは、収束するとはいっても「いささかみじめな状態で収束するんじゃないか」という話です。第5波は、ワクチンの接種率向上による面やもちろん接触抑制による面もあるとは思いますが、まずはブルネラブル(vulnerable)……感受性が高いとか、脆弱なとかいう意味もあるんですけど、同時に社会学的な行動状態もあって、「よりリスクを取っている人」が、感染し尽くすという可能性があると思うからです。

―― うわあ。感染しやすい生活習慣を取っている人が感染し尽くして止まる、というようなイメージですか。

峰:そうそう、それで収束する可能性はあると思いますね。ただこれは「理屈としてはそうなる可能性があるだろう」という予測です。そもそも、今もうワクチンを打っている人、そして打ちたいと希望している人は、予防行動もしっかり取る人が多くて、「ワクチンなんか関心ないよ」とか「打たないよ」という人は、「マスクぐらいはしてもいいけど、みんなもう飲みに行っているし、自分も遊んでもいいだろう」ぐらいの感じの人が多いと思うんですね。

―― そういう人が、感染リスクが上昇している中に出て行く。感染者も増えますね。

というわけで、たしかにそういう理屈はひとつありうると。
ただそうなると、
とにかくいままだ学校が休校状態だとか、大学も秋学期が始まってないとか、そういう状態で、つまり、いまは感染しやすさの薄い行動様式におさまっている層がふたたび感染しやすさの濃い活動をし始めたら、ということは考えるなぁ…。
まぁそのあたりはあくまで素人の考え。

さて、恒例のやつで、このタイミングでいまの、公式の数字をみてみる。一時期は相当やばかった(8/16にここに書いてたね)けれどいまはもっともエクストリームでやばかった時と比べるならば、少し、おさまってきてるよ、ということで、「10万対発生数」が、東京82.9、大阪131、兵庫82.1、京都82.7、奈良63.2、ってところ。実効再生産数で見ると(これは東洋経済のサイトのほうの数字)、全国0.73、東京0.68、大阪0.8、兵庫0.81、京都0.77、奈良0.75、ってところ。ちなみに東京の検査陽性率は10.6%(最高は8/14-15の24%あたり)。京都の検査陽性率が9/9付で14.8%(最高は8/26付の25.9%)。下がってはきている。下がってきてるじゃんと感じる感覚がやばいわけですが。もうひといきふたいきですかね。そして、「十分に下がった」といえるまできっちり下げるべしと、やはり思うなあ。

9/12.
ワクチンの作用について、基本のところの説明でなるほどよくわかりましたというのをNHKあさイチ』で。
www.nhk.jp

改めて確認 ワクチンの効果とは?
 
一般に、ワクチンに期待される効果には、次の3つがあります。
 感染予防効果(ウイルスの感染そのものを防ぐ効果)
 発症予防効果(たとえ感染したとしても症状が出るのを防ぐ効果)
 重症化予防効果(人工呼吸器が必要になるような重症になるのを防ぐ効果)
ワクチンに最も期待される効果は、このうち「重症化予防効果」とされています。“ブレークスルー感染”の多くが、極めて軽い症状で済んでいるということは、この「重症化予防」の効果が発揮されている証でもあります。
実は、ファイザーとモデルナのmRNA(メッセンジャーRNA)ワクチンについては、高い感染予防効果も期待できるというデータが世界各国から報告されていました。しかし、接種完了から時間がたつにつれ、その感染予防効果はしだいに低くなっていくことが最近の研究でわかってきたのです。
 
なぜ “ブレークスルー感染”が起きる?
 
カギを握るのは、私たちのからだの中にある免疫細胞です。ワクチンを接種すると、免疫細胞は「ウイルスが体内に入ってきた!」と勘違いして、「抗体」というウイルスなどの病原体にくっついて封じ込める特殊な物質を作ります。すると、本物のウイルスが攻めてきても抗体の働きで感染を防ぐことができます。
  
しかし、敵となるウイルスと戦う機会が無いと、時間とともに抗体の量はしだいに減っていきます。すると、たくさんのウイルスが攻めてきた場合には、抗体で無力化しきれなくなり、“ブレークスルー感染”が起きる可能性があるのです。
 
まだ、専門家の検証を十分に受けていませんが、ファイザーのワクチン接種後の抗体の量の変化を調べたイスラエルの研究によると、「抗体の量は毎月最大40%ずつ減少する」ともいわれます。
 
ワクチンの専門家・中野さん「接種完了から時間がたつほど、“ブレークスルー感染”のリスクは高まっていくと考えられます。また、2回目の接種から2週間後、抗体の量がピークにあるときでも、感染した人のせきやくしゃみを浴びるような、大量のウイルスにさらされたときにも“ブレークスルー感染”が起きるリスクがあります。デルタ株は感染力が従来株よりも強いため、“ブレークスルー感染”が起こりやすいかもしれません」
 
重症化予防効果は 時間がたっても期待できる!
 
とはいえ、たとえ接種完了から時間がたって抗体の量が減って感染自体は防げなかったとしても、重症化予防効果は十分期待できるといいます。
 
アメリカ・CDC疾病対策センター)の報告によると、ワクチンを2回接種した人は、一度も接種していない人に比べて、入院リスクが30分の1にまで低下したそうです。いったい、なぜなのか?
 
実は、ワクチンを2回接種すると、免疫細胞は新型コロナウイルスの特徴をしっかりと“記憶”し、「こいつは危ないぞ!」と臨戦態勢でスタンバイします。すると、新型コロナウイルスが体内に侵入してきたことを察知したら、すぐに抗体をたくさん作ります。さらに、感染した細胞を見つけてウイルスごと破壊して、私たちの体を守ってくれます。
 
それでも、免疫細胞がウイルスと戦い始めるまでにはタイムラグがあるため、感染自体は防げなかったり、症状がある程度出てしまうこともありえます。ただ、免疫細胞がウイルスとしっかり戦ってくれたら、重症化は防げる可能性が高いのです。

そもそもワクチンを打つと何がいいのかというというのに、2つのレイヤーがあって、
 基本的には「免疫細胞に「記憶」させる」こと。     
  → それによって、発症や重症化を防ぐ。
 ついでに、接種したら体内に抗体がたくさん作られること。
  → それによって、しばらくは感染予防も期待できる。
ぐらいのかんじで理解しておけばいいか。
ちなみに、「あさイチ」では、じゃあ、免疫細胞の「記憶」がいつまでもって発症予防・重症化予防の効果はいつまであるのか、というスタジオの質問には、専門家の人は直接は答えなかったと思う。それはつまりそんなもんはまだわからん、世界中でまだそこまで時間が経ってないのでデータも揃ってない、ぐらいの感じかと思う。

9/21.
感染者は減少してきている。やはり油断はすべきでないといいつつ、かなり順調に減少しているようにみえるといっていいようだ。ただ、なぜここまで順調に(急激に、という言い方をとるひともいるようだ)減少しているのか、についての説明が簡単につきにくい、というのはあるようで、原因がわからないまま事態が良くなったということは、また原因がわからないまま事態が悪くなることもありうるわけで、まぁそれはやっぱり安心できないよね、というわけである。



9/29.
さて、緊急事態宣言は解除になる模様。それはまぁそうだろうなと思いつつ、現在この現時点の数字だけ見た時、まだ安心だよの感染状況ということではないわけで、解除したとたんに反発するというのはこわい。
ううむ、感染状況とか実効再生産数のデータを毎日見てるけど、たしかにちょっと下げ止まり感を感じるんだよなあ…ちょうどきのう、そのへんグラフをいろいろ見比べたりしてたところ。
まぁ、自分含めと言ってもいいけれど、なんとなく気持ちがゆるんで油断しそうなのも確かなのである。
学校の対面授業を再開させる方向なのだけれど、キャンパスに戻ってくる学生さんをちゃんと必要なだけコントロールできるかが肝だと思っている。
「自覚を促す」というのがあまり意味をなさないというのは、よくもわるくも、これまで全国的にもわかってきたことだと思う。自分はやはり「コントロール」という発想をするなあ。ひとびとができるだけ気持ちよく、無意識に、進んで感染予防的行動をとるような・感染拡大的行動を回避するような、仕組みをつくる、といういみで。