通勤電車で読む『アジャイル開発とスクラム』。「スクラムの祖父・野中郁次郎」語る、的な。

1986年に発表された、Takeuchi&Nonaka(1986)”The New New Product Development Game”という論文が、日本の新製品開発を研究することで「スクラム」というコンセプトを提起してたんだが、それを、新しいソフトウエア開発のしくみを作ろうとしていた人たちが1990年代半ばに見つけて、これこそがやりたかったことに理論を与えるものだ、ということで、そこからソフトウエア開発の「スクラム」というのが生まれ、「アジャイル開発」の流れが生まれたよ、で、2010年ぐらいにアジャイルのカンファレンスが日本で開催されたときに野中氏がゲストに呼ばれて、え、いつのまにそんなことになっとるのかみたいに思いつつ講演をしたら若いエンジニアの人たちが目をキラキラさせて盛り上がった、みたいなことのようで、アジャイルの起源は日本企業の組織だった、「スクラムの祖父・野中郁次郎」語る、みたいな本。まぁ、じっさいに野中氏が登場してるのはおもに最後の対談部分で、おもには共著者、平鍋氏・及部氏がまとめているかんじ。で、これ古典みたいな本かと思ったら、今年に出た「第2版」で、ちゃんと現時点向けにアップデートされてた。第一部がアジャイルスクラムの解説、第二部が日本企業で導入されてるアジャイルの事例の紹介、第三部が野中理論にたちもどってアジャイルスクラムを考察する、みたいな構成になっている。全体として(とくに第2版では)ソフトウエア開発の人たち向けというより一般の企業の組織をマネジメントする人たち向けに(つまりもともと野中論文というのはそういうものだったわけで)、書かれている。で、読み方が難しいなあと思うのは、とくに第三部の、おおもとの野中理論に立ち戻り、野中氏本人が語ったりすると、みょうに、アリストテレスとか、形式知暗黙知とか、身体性とか、なんかこう微妙な理屈っぽい(しかも1980年代ふうの)言い回しがでてきて、また、そこでまた「全盛期の日本のモノづくり企業の組織」みたいなのがもちあげられたり(つまりこれももともと野中論文というのはそういうものだったわけで)、まぁ、2020年代のエンジニアがさっさと実践するアジャイル、みたいな本が与えてくれるスッキリ感よりは、まぁ、いかにも原石というか原油的なごちゃごちゃ感、ウエット感がなきにしもあらずで…。