『マンガでやさしくわかる認知行動療法』。これはクライアント目線&ていねいで、いい感じ。

認知行動療法がマンガでわかるような感じの本を読むシリーズ。先日読んだ似たタイトルの『マンガでわかる認知行動療法』( https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2022/08/28/133502 )というのは、『はじめての認知療法』って新書の著者の大野という人が書いてて、それはそれでバランスはよかったけれど、二つ読むとこっちの玉井という人の本のほうがよかったかなあという印象。もちろん、想定読者とか想定レベルとかいろいろ違うわけなので、どっちもそれぞれいいわけなのだろうけれど。
マンガでわかる、というのは、仮にマンガの主人公に読者が共感しながら読むことが想定されているとすると、それが想定読者像ってことになる。そうすると、大野本は、地域で周産期とか高齢者とかの支援をしたり企業で社員の支援をしたりしている保健師さん(と、あと教員)あたりが主な登場人物で、彼らが、いろんな困りごとを抱えた人たちに対してどうしようかと思ってたら認知行動療法に出会って、支援者としてうまくやれたよ、というストーリー。で、こっちの玉井本では、主人公は、広告代理店でがんばろうとしつつ空回りしてたら関連会社に出向になったというアラサー女子。で、煮詰まってたらいきなり飼い猫がしゃべりだして、じつは自動車事故で生死をさまよってるカウンセラーの生霊?が猫にとりついてアラサーに認知行動療法ベースのアドバイスをする、で、猫のアドバイスを受けながらアラサー女子がだんだんうまくいくようになってく、というストーリー。なのでこれはクライアント目線にかなり重心があったうえで、なぜ煮詰まってしまうのか、それがどうなればいいかんじに進んでいけるのか、についてかなりていねいに説明している。その説明の中で「スキーマ」というのが出てきて、そうするとこの「スキーマ」というのには自分はこの本( https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2020/12/02/124730 )でちょっと警戒心を持つことになったわけだけれど、伊藤本とは違って、さらっと、スモールステップ&自己解決ですっきりと扱っているのでこれも好感をもつポイント。あと、なにげに問題解決の一環で医者で薬をもらってる(服薬への抵抗感があったけれど、認知行動療法で前向きになって一歩踏み出して医者に行ってみたら、だいじょうぶだったしちょうしがいい、みたいな)とかも現実的だなあと。あと、これカウンセラー役が、だから、飼い猫なわけだけれど、こういうのって意外と本質的かもしれなくて、つまり、転移を最小限にしているってことかもしれないと思った。猫が寄越すアドバイスは、転移抜きでアドバイスそのものとして、教育的に伝わる、それ以外のストーリー上の余計なニュアンスを含ませないというか。