通勤電車で読む『本が語ること、語らせること』。

『松江日乗』(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2022/11/07/212204)が終わって、また電車で読む何か、そういえばということで、本書。『彼岸の図書館』『山學ノオト』(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2019/12/04/233019 https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2021/06/30/124156)の著者の本。東吉野村に移住して「人文系私設図書館ルチャ・リブロ」というのを作ってやってるご夫婦。日記という意味では前作『山學ノオト』のほうがそうだったというのもあるけれど、まぁそれはそれとして、まぁ、運が悪かったというか、なんか続けて読むと、本書はやはり割を食うのだった。夕書房という本書を出版しているひとり出版社があって、そこのnoteの連載で、「土着への処方箋 ルチャ・リブロの司書席から」というのがあるようだ。それをまとめたもののよう。
note.com
で、ジャンルとしては「人生相談」ということで、お悩みのメールに対して本を勧めてお答えする、みたいな企画。まぁ、企画そのものを本書著者が考えたわけではないのだろうし、まぁふつうにある企画ではあるわけだからそこにどうこう言ったってしかたないというところはあるのだけれど、まぁ、この手の企画では、どうしたって、本を勧める人の選書のセンスが問われてくるわけだし、「人生相談」というフォーマットである以上、「上から」感をまぬかれるのはむずかしいわけである。そしてたぶん、そんな企画はやるだけ損に決まっているわけで、多少なりとも悩んでいる人に自分のおすすめの本を勧めてひとこと言う、などというのは、本が好きな人の自己愛をくすぐるに決まっていながらだからこそ誘惑に負けて手を出したら絶対に失敗するとしたもんなわけである。まぁ、著者のほうのすすめている本については、わりかしさりげなさそうでもあり、ふつうに見たら好感をもちそうなかんじもする。
もとのnote連載のタイトルにある「土着」というのは、著者たちが「土着」の生を生きているぞという思い入れからくるのだろうし、「都市」に対するアンチテーゼだぞ、という思い入れもちらほら見えるのだが、前著『山學ノオト』でも気になっていた(https://k-i-t.hatenablog.com/entry/2021/06/30/124156)のだけれど、すくなくとも最近まで著者たちの生活や活動に東吉野感が希薄にみえたんである。『山學ノオト』のさいごのあたり(2019年の年末ごろ)で消防団に入団したという記述があり、そこからなにかが始まるのかなあと思っているのだけれど、本書ではまだそういう話は出てきていなくて、まぁ、noteというのはweb上にあるわけだし、茨城のひとり出版社の人のnoteの連載ということだからこれもこの活動自体は東吉野「土着」というかんじではないですわな。だからなんだというわけでもないけれど。
あとまぁどうでもいいけれど『テアイトス』って書いているのは『テアイテトス』のことだとおもう。こういうところでひとつまちがえるとすごく格好がつかない。