通勤電車で読んでた『シンクロと自由』。

「シリーズ ケアをひらく」にはずれなし、で有名な「シリーズ ケアをひらく」の一冊。介護施設の所長をやっている人が介護の経験について書いている本、というぐらいの言い方であっているのだろうかしらん。で、しかし、それは非常に読むのがたいへんな文章であって、ようするに端的に言って、目の前に人がいて、いわゆるふつうのいみでいう理解とかコミュニケーションとかがむずかしいというかすくなくともちがっていて、自分は途方に暮れるし、もちろん目の前の人も途方に暮れているかすくなくともなにかうまくいかないものを抱えていて、そしてしかしたとえばその人は「家に帰らないといけない」と言い、それはたしかにその人はいま施設にいて、ここは家ではないし家に帰らないといけないのに帰れないから困っているわけで、それは確かなことなんだからそれを混乱しているとかおかしいとかいうほうがおかしいわけで、したがってまぁつきあって二人でそのあたりをぐるぐると歩いているうちに、もう遅くなりくたびれてなかなか家にたどり着かないということが納得されてきて、しかたないまた出直そうかということになって施設に戻ると、やあおかえりなさいおなかが空いたでしょうご飯ができていますよ、と職員が言うと、自分だけに食事が用意されているのを見て、「ああ、この人にもご飯をつくってやんなさい。この人も帰れんかったとよ」と言うのである。そんなかんじのことがいろいろ書いてあって、シンクロと自由、というタイトルで、なるほど著者の人たちがシンクロしているなあ、あるいはそのシンクロがズレたりもするのだなあ、ということで、著者の人はそこに自由があるとも言う。