『勝手にしやがれ!!成金計画』。シリーズ第5作は終わりの始まり。傑作。

シリーズ第5作。ヒロインはWinkを活動休止したばかりのさっちんこと鈴木早智子。いうまでもなく素晴らしい。従って本作は傑作である。二本ずつ撮っているうちの第5作ということで、第3ターンに差し掛かり、監督自身が早くシリーズを終わらせたくなってきている。脚本はじんのひろあき黒沢清。本作を見ると黒沢清の悪ノリが全開。終始、あからさまな茶番のようである。それと執拗な繰り返し。おなじことが平然となんども繰り返される。そしてまともじゃないご都合主義。こんなことが許されていいのか、というわけだけれど、それがもう傑作なのである。で、冷静になって言えばこれはほとんどシリーズ第1作『強奪計画』のリメイクあるいはパロディというふうにも見える。何を考えてるのかわからないファム・ファタルのもとにひょんな事で転がり込むヘロイン。頼りない男。ヘロインを狙うヤクザたち。人質。取引。哀川翔の男気。同じような道具立てで同じように話が展開すると言えなくもない。そしてしかし、七瀬なつみではなくさっちん、國村隼ではなく狂犬みたい(文字通り)な男を紐で繋いで引き連れている頭のおかしそうなヤクザ、そしてカマンベールチーズぐらいの容器のヘロインは、あっけにとられるぐらいの大量のヘロインの袋に置き換わり、ナンセンスの強度がぐんと上がっているわけである。さっちんがまったくすばらしい。七瀬なつみのようなファム・ファタルであり大量のヘロインが転がり込んできたことで唖然とするような大胆さを見せる、かと思えば同時に藤谷美紀のように気まぐれで何を考えてるかわからない。脚本がどこまでナンセンスな茶番になろうとも常にそれを超える得体のしれなさで、そういうもんなのかな、なんかそういうおとぎばなしなのだなと納得させてしまう。そして黒沢的な銃撃戦。そしてあっけにとられるような結末。そして唐突な青春映画的な美しい夕刻のシーン。そしてシリーズの終わりを予感させるエンディング。素晴らしい。傑作。