シリーズ第6作。最終作である。むかしにこのシリーズを見たときに、最終作がいきなり政治映画になっていて呆然としながら見ていた。紛れもない傑作である。そしてたぶんシリーズを最初から見ていてこそ、本作を呆然としながら見ることができる。哀川翔と前田耕陽のまったりユルいチンピラコメディ、B級プログラムピクチャーのシリーズだったはずが、最終作でいきなり、地上げが進んで歯が欠けたように空き地が入り交じる荒涼とした町の町内会の住民運動のはなしに。ヒロインは黒谷友香。その兄が、町内に住んでいるヤクザのおっさんを立ち退かせようとする狂信的な青年。哀川翔はあれやこれやあって青年と知り合い、なんやかんやで立ち退き運動の英雄に祭り上げられ、そこに国会議員も絡んできて、青年は国会議員のもとで青年政治家になる。なんやかんやで哀川翔は警察に追われることになり前田耕陽をひとりのこして町から姿を消す。時は流れて、地上げは進み、雑草だらけの空き地に都心から追い立てられてきたホームレスたちが流入してくる。青年政治家は黒スーツの集団を引き連れてホームレスを狩り立て、排除して回っていて、他方、妹の黒谷友香は住民たちとともにホームレスとの共存をはかる住民運動に身を投じている。そこにホームレスとなった哀川翔が帰還してくる…。シリーズ6作目になって、もう監督は哀川翔と前田耕陽をさっさと死なせたい。そんななかで作られた異様な一作。紛れもない傑作なのだけれど、えーとたとえば「ルパン三世」を見ていたら最後に宮崎駿「さらば愛しきルパンよ」で呆然とする、シリーズの夢が絶たれて現実が流れ込んでくる、といったふうの孤高の傑作。
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けっきょく、全6作のどれがよかったかと思い返す。第6作はそういうわけで別枠の特別賞。一番はやはり第1作の七瀬なつみ『強奪計画』。そのパロディ的な第5作『成金計画』もすばらしいけれど、パロディと本家を比べるならば本家がやはり一番ということで。さて、残念ながらいまいち弱かったのが第2作『脱出計画』。そうすると、あとは第3、4作のどちらを取るか、ということになるけれどこれは藤谷美紀『黄金計画』の不思議なおとぎ話みたいなところがよかった、仁藤優子『逆転計画』はよく考えたらよくもわるくもバランスの取れたプログラムピクチャーの一作然とした一作というかんじだったかな。まぁしかし、これはやはりシリーズ全体で黒沢清の傑作ってことで。