通勤電車で読む『できる社員は「やり過ごす」』。タイトルはともかくとして、読みやすい日本企業組織論。ただし90年代型。

どこで見かけたのかと探してみたら、Twitterのタイムラインを通り過ぎて行ったtogetterまとめの中で参照されていたのだった。
togetter.com
本を読んであらためてまとめ記事を読み直したら、たしかにまんまだった。
で、この本でさいしょに描かれているのは、多くの企業でこういう「やり過ごし」がおこなわれているし、意外とそれで回ってると。それは、管理的な立場にある者にスキルがなくてふわっとしたことを命じがちだ、ということでもある。あるいはある意味、若い社員にあれこれ仕事を振って過負荷状態にしたときに、「やり過ごし」ができる=優先順位付けができる者とできない者が分かれてくるので、そこで有能な者を見出すことができるよ、あるいみで「やり過ごし」は構造化されているよ、みたいなことも書いてあった(それはしかしいかがなものかと思わんでもない)。なので、タイトルだけ見るとある種のライフハック的な本なのかしらと見えるけれど、じつは日本企業の組織についてのお話。で、次の章は「尻ぬぐい」のおはなし。中間管理職の係長さんなんかが、管理側と実働部隊とのリンクを担っていて、上記「やり過ごし」に対応する「尻ぬぐい」などに忙殺される、これも組織の構造的なものだよと。で、じゃあなんでそんなことをやるのかというと、日本の企業は「未来傾斜原理」つまり、未来のために今ガマンしても構わないよ原理で成り立っているからだよと。考えてみれば、ふつう経済学では逆に未来の利得には割引率というのを設定するよね、でも、ふつうの少なくとも日本の企業社会の感覚で言えば、未来の利得のために現在を我慢するのが自然だよねと。年功序列がそうだし、中間管理職の「尻ぬぐい」もそうだよね、そしてそれはプラス面があるよね、ということで、まぁ、これ、日本企業文化の組織論の本なのだった。まぁ、この本は90年代に出ていて、文庫化が02年。そこからさらに20年も失われて、日本経済全体が惨憺たるもんだし日本企業の文化などというのもたぶんかなり破壊されてるんだろうし、この本の言ってるようなことがそのまま現実的な参考になるのかどうかはよくわからない。でも読んでいて面白かった。
あと散髪した。