うまれてこのかた本を読んだことがない32歳のライターの人、というのが居て、その人に「走れメロス」とか読ませるという企画が「オモコロ」にあって、その第何弾かで「山月記」を読ませるというのが先日バズってて、読んだらおもしろかったので書籍化したのを読んでみた。
omocoro.jp
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で、おもしろかったわけだけれど、まず、「うまれてこのかた本を読んだことがない32歳のライター」というのがトリッキーすぎる。ただ本を読むのが苦手、というだけではたぶんなくて、ライターをやっているというぐらいだからたぶん言語化能力なりなんなりはあるわけで、だから、小説を一行ずつ音読してリアクションしているのをみるに、ひじょうに解像度高く読んでるかんじがある。えーとたとえば本とか文章を読むのが苦手な人というと、もうすこし目が滑ってたり特定の単語しか拾ってなかったり書いてないことをあてずっぽうで言ったり、するんじゃないかと思うのだけれど、ぜんぜんそうじゃないわけである。むしろこの中でも言われているように、「ふつうに本を読める人」のほうが、ずっと飛ばし読みをしているかんじはある。じゃあそもそも「読む」ってなんなのかね、というふうにもなるけれど、しかしもうひとつトリッキーなのは、ここで読ませているのが「走れメロス」「一房の葡萄」「トロッコ」「杜子春」とか、あと「オツベルと象」(https://omocoro.jp/kiji/399155/)とか、教科書に出てきたりするいわゆる名作とかで、登場人物に自分を重ね合わせながら読んでいくようなやりかたで読めるようなものなのでこの人に合ってるってのもあるだろう(同様の企画で「新聞を読む」(https://omocoro.jp/kiji/280601/)ってのだと、全然読めてないからね)。