大学教員:研修義務化 講義レベルアップで 08年度にも

http://www.mainichi-msn.co.jp/today/news/20061021k0000e040067000c.html

文部科学省は大学・短大教員の講義のレベルアップのため、全大学に教員への研修を義務付ける方針を固めた。来年度に大学設置基準と短期大学設置基準を改正し、早ければ08年4月にも義務化する。研究中心と言われる日本の大学で、学生への教育にも力点を置く必要があると判断したもので、「大学全入時代」を迎え、学生の質の低下を懸念する経済界からの要請も背景にある。具体的な研修内容などは今後、中央教育審議会で検討する。【高山純二】
 対象となる教員は大学約16万2000人、短大約1万2000人(05年度現在)。
 教員の教育内容や方法の改善のため、各大学で組織的な研究や研修をすることを「ファカルティー・ディベロップメント」(FD)と呼ぶ。文科省は99年9月、大学と短大の設置基準を改正し、FDの努力義務規定を盛り込んだ。これによりFDを導入する大学は年々増加し、04年度は全大学の約75%に当たる534大学が実施した。
 しかし、各大学で現在行われているFDの内容は講演会の開催や研修会、授業内容の検討会など座学中心で、実効性や効果を疑問視する声もある。また07年度に大学・短大の志願者数と定員数が同じになる大学全入時代を控え、経済界には「企業で戦力として使える人材となるように教育してほしい」と、大学教育の充実を求める声も強い。
 今後、具体的な研修内容は中教審で審議されるが、各大学ごとに建学の精神や求められる教員像が異なっており、「統一のガイドライン作成は慎重にすべきだ」という声もある。
 一方、大学院は既にFDが努力義務規定から義務規定に改正され、来年4月から義務化される。
 ■FD(ファカルティー・ディベロップメント) ファカルティーは「教員」、ディベロップメントは「開発」の意。「大学教員資質開発」などと訳されている。米国が起源とされ、英国ではSD(スタッフ・ディベロップメント)と呼ばれる。文科省は「教員が授業内容・方法を改善し向上させるための組織的な取り組みの総称」をFDとしている。
毎日新聞 2006年10月21日 15時00分

いったい日本の大学のどこが研究中心なのやら。

いじめ 摘発165件 力が弱い/無抵抗/いい子ぶる/動作鈍い

http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20061021-00000000-san-soci

昨年1年間に全国の警察が摘発、補導した、いじめに絡む小中高校生による暴行などの事件は3年連続で増加し、過去10年で2番目に多い165件(前年比4件増)に上ることが20日、警察庁のまとめで分かった。
 同庁によると、いじめる側が起こした暴行などの事件は155件で、いじめの仕返しによる事件は10件だった。
 摘発、補導された人数は前年より10人多い326人。うち中学生が240人と7割以上を占め、高校生は63人、小学生が23人だった。
 いじめた理由(複数回答)は「力が弱い、無抵抗だから」が全体の27・3%で最も多く、次いで「いい子ぶる、生意気」が27・0%、「よくうそをつく」が11・7%、「態度、動作が鈍い」が11・3%。
 被害者203人のうち6割以上が「誰かに相談した」と回答。相談相手(複数回答)は保護者が41・9%で最多。教師の31・5%、警察などの相談機関13・8%、友人の3・0%と続いた。
 小中高生のいじめに絡む事件の摘発、補導は平成8年からの10年間でみると12年の170件がピーク。14年は94件だったが、翌年以降は増え続けている。
 教育現場に警察が介入する「いじめ絡み事件」の増加について、教育関係者の多くは「学校が子供の暴力行為に自力で対処しきれなくなっている現状の表れ」と指摘する。
 文部科学省の統計によると、いじめの発生件数自体は近年、少子化による児童生徒数の減少とともに、減少傾向にある。一方で、校内暴力の発生件数(文科省調べ)は増加しており、暴力的ないじめに特化している傾向を裏付ける。同省は「キレやすい子供」を脳の機能不全ととらえた科学的な研究も進めている。
 子供から電話相談を受けるNPO法人「チャイルドライン支援センター」の徳丸のり子理事は「今の子供は人間関係で衝突したり摩擦を起こしたりする経験が少ないから、たまにそうなると凶暴化してしまう」と指摘。「いじめられっ子のサインに先生や親が早く気付き、適切に処置すれば、解決できるはず。大人の力が弱まっている」とも話す。
 不登校生徒のメンタルケアにあたっているNPO法人不登校情報センター」の藤原宏美理事は「不登校になる子の8割ほどはいじめが原因。教師や家庭から子供を助ける意識が薄れてきている」と分析している。
 「日本子どもを守る会」名誉会長の大田尭・東大名誉教授(教育哲学)は「人間関係が疎遠な時代、大人の人間関係作りが下手になったことが子供にも影響している」と話している。
                 ◇
 《首相、教育再生会議で議論》
 安倍晋三首相は20日、いじめによる子供の自殺などが社会問題化していることについて、「教室、学校におけるいじめの問題は、昔からあったのも事実だが、最近極めて深刻化している。教育再生会議でもこの問題をどうすれば解決できるか議論していきたい」と述べた。首相官邸で記者団の質問に答えた。
産経新聞) - 10月21日8時2分更新

いじめ:法務省調査では「増加」 文科省とは逆の結果に

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/wadai/news/20061023k0000m040118000c.html

「学校のいじめは減少している」という文部科学省の「いじめ」に関する調査に対し、「実態を反映していない」との指摘が出ているが、法務省の調査では増加傾向にある。同省の調査によると、学校でのいじめは05年には前年より2割以上増えており、文科省調査への疑問の声は大きくなりそうだ。また、各地の弁護士会自治体がいじめに関する相談機関を設置しており、「ぜひ相談を」と呼び掛けている。
 法務省の調査によると、学校内のいじめについて「学校側が不適切な対応をした」とする05年の人権侵犯事件数は716件で、04年に比べて22.6%も増加。01年は481件▽02年524件▽03年542件▽04年584件と増え続けている。いじめも執ようで、陰湿な事例が多くなっているという。
 法務省調査は、各地の法務局など人権擁護機関が、「いじめで人権を侵害された」と相談した当事者の申告などに基づいている。
 一方、文科省は、学校や自治体教委の報告を積み重ねる形だ。学校側がいじめを見落としたり黙認したりすれば、統計には反映されない。また、いじめ根絶を目指す自治体が発生件数を具体的な目標として数値化したため、「実態を目標に合わせて報告する例もあるのでは」との指摘もある。
 増加するいじめを重く見た法務省は、今年度からは相談ごとを自由に書いて法務局の人権擁護担当に無料で郵送できる「SOSミニレター」を約70万枚作成し、さらに18万枚増刷する。全国の小学5、6年と中学生に配布を進めている。【吉永磨美】
毎日新聞 2006年10月23日 3時00分

こうつながるか。なるほどねい。
というわけで、文部科学省叩きはこちらからも。

ただねえ、

法務省調査は、各地の法務局など人権擁護機関が、「いじめで人権を侵害された」と相談した当事者の申告などに基づいている。
 一方、文科省は、学校や自治体教委の報告を積み重ねる形だ。学校側がいじめを見落としたり黙認したりすれば、統計には反映されない。

というのの、どっちが「客観的」数字だ、ということではないんで、これはラベリング論のはなし。

社会病理を考える (SEKAISHISO SEMINAR)

社会病理を考える (SEKAISHISO SEMINAR)

よい本です。ラベリングの視点からの「いじめ」論のスタンダード。

たとえば、

各地の弁護士会自治体がいじめに関する相談機関を設置しており、「ぜひ相談を」と呼び掛けている。
・・・
増加するいじめを重く見た法務省は、今年度からは相談ごとを自由に書いて法務局の人権擁護担当に無料で郵送できる「SOSミニレター」を約70万枚作成し、さらに18万枚増刷する。全国の小学5、6年と中学生に配布を進めている。

なんていう「営業活動」をさかんにやれば、それだけ相談件数の営業成績はあがっていくわけで、
また、こういう記事じたい、「学校は当てにならへんですよ、あいつら隠蔽工作ばっかでっせ、うちにきなはれ、弁護士をたてて訴訟に持ち込みなはれ」というメッセージを発信しているのだから、「営業活動」の一部であるといえる。
しかし、ぎゃくにいうと、「いじめ」の定義なんというのはふわふわしたもんなので、学校/文部科学省のやりかたがまるきしだめというわけでもないと思う。ふわふわしたものをふわふわっと把握して解決にもっていく、というやりかたは、あるだろう(だから、文部科学省の調査だって、世論の具合によってアホみたいに数字が動くのだけれど)。
片っ端から法的手段にもちこんで白黒つける、というやりかたと、ふわふわっとしたやりかたとがあるとして、
その一方が他方を駆逐するようなことになると、つまり、司法さえあれば教育は要らんのじゃないか、ということになるだろう。
そんな単純なものではない気はする。