学力低下:「悲惨な結果」と専門家 OECD調査

http://www.mainichi-msn.co.jp/shakai/edu/news/20041208k0000m040144000c.html

日本の15歳(高校1年生)の読解力低下をあらわにした経済協力開発機構OECD)の03年学習到達度調査(PISA)。読解力だけでなく、「1位グループ」(文部科学省)とされた数学的活用力でさえ「明らかに低下している」ととらえる教育関係者も少なくない。試験と同時実施の意識調査からは、成績はよくても勉強への関心が低い生徒像や、生徒から当てにされない学校像も浮かび上がった。【永山悦子、千代崎聖史】

 ◆数学的活用力は1位から6位に後退

 前回00年の調査で1位だった数学的活用力は6位に後退し、得点も前回の557点から23点下がった。出題された4分野のうち、特に計算などの「量」分野が11位、確率・統計など「不確実性」分野が9位と香港など上位国に引き離された。

 「他の上位国と統計的な有意差はない」と文科省は分析する。だが岡部恒治・埼玉大経済学部教授(数学)は「明らかに成績が落ちたととらえるべき結果だ。計算など量分野は本来得意分野だったので、深刻な状態。読解力の低下は(数学の)文章題が解けない子どもの増加にも影響を与えている」と分析する。

 数学で初めて実施した生徒への意識調査では、勉強への否定的な反応が大半を占めた。「数学の本を読むのが好き」12.8%(参加国平均30.8%)▽「数学を勉強するのは楽しいから」26.1%(同38.0%)▽「将来の仕事の可能性を広げてくれるから学びがいがある」42.9%(同77.9%)。「学んだ数学を日常生活にどう応用できるかを考えている」にいたっては12.5%とニュージーランド60.5%の約5分の1だった。

 日本学術会議数学教育小委員会が昨年、全国の大学教員を対象にした「大学生の数学学力に関する調査」では、計算力の低下や教員養成課程の学生の学力低下を感じる教員が増加。「世界トップレベル」とされてきた高校生以下の学力低下も目前に迫っている状態だった。

 上野健爾・京都大大学院理学研究科教授(数学)は「悲惨な結果だ。勉強の面白さを理解できなければ、知識が頭の中を通過するだけで、分数も分からない大学生を生むことになる。学習指導要領改訂で教科書が薄くなり、子どもの関心を呼び起こす内容が削られてしまったことも一因だ」と話す。

 ◆低い学校への信頼、満足度

 授業で先生が支援してくれていると生徒はどれぐらいみているか。生徒への意識調査結果を13カ国(欧米など主要7カ国と今回成績のよかった香港など)で比べると、日本は「(先生は)生徒一人一人の勉強に関心がある」「意見を発表する機会を与えてくれる」など数学教師による支援度を問う5項目のいずれでも、「いつもそうだ」と全面肯定する生徒の割合が平均より低かった。5項目を平均すると13カ国で最低だった。

 特に「意見発表の機会を与えてくれる」では、「いつもそうだ」「たいていそうだ」を合わせても肯定派は46%と半数に届かず、OECD加盟国平均を12ポイントも下回った。逆に「ほとんどない」は平均を7ポイント上回る20%だった。生徒と教師の関係を問う質問「多くの先生は、生徒が満足しているかに関心がある」も肯定派は45%にとどまり、平均を20ポイント下回った。

 学校への信頼感も他国より希薄だ。「(学校が)仕事に役立つことを教えてくれた」に肯定的に答えた生徒は59%と加盟国平均より28ポイントも低く、13カ国中で最低。「決断する自信をつけてくれた」も52%と18ポイント下回った。

 ◆教師の質や充足度も見劣り

 前回に続きトップクラスの成績だったフィンランドや韓国は日本とどこが違うのか。両国はともに「教員の質」を重視している。文科省によると、フィンランドは教員資格の基準を大学院修士課程修了以上としている。今回の学校長らへの意識調査でも、教師の充足度を示す指標(加盟国の平均値は0)は韓国の0.64とフィンランドの0.56が飛び抜けて高い。日本は0.04で平均水準だった。

 「生徒に対する教師の期待が高い」「生徒と教師の人間関係がよい」など教師による学級雰囲気作りを示す指標でも、総合的に見ると韓国、フィンランドが上位1、2位を占めた。日本は悪い方から3位で、前回00年調査から悪化していた。

 【数学的活用力の設問例】あるTVレポーターがこのグラフ(縦軸は年間の盗難事件数)を示して、「1999年は1998年に比べて、盗難事件が激増しています」と言いました。このレポーターの発言は、このグラフの説明として適切ですか。適切である、または適切でない理由を説明してください。

 <正答例>「適切ではない。グラフの全体が表示されるべきである」「激増かどうかは言い切れない。97年の盗難数が98年と同様なら、99年に大きく増加したと言えるかもしれない」など

毎日新聞 2004年12月7日 23時40分

ふむ。
この最後に書いてある、設問例が、リサーチリテラシーに関するものだってとこがおもむきぶかい。
限られたデータ提示から危機感を煽って自分の都合のいい結論に誘導しようとするコメンテーターは、国際レベルから見て数学的活用力が悲惨なまでに低い、ということを主張したいのだろうか。