http://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20081210AT1G0901Y09122008.html
日本の小中学生、理数学力横ばい 国際学力テスト
国際教育到達度評価学会(IEA、本部オランダ)は10日、小学4年生と中学2年生が対象の国際学力テスト「国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)」の2007年の結果を公表した。日本は中2の理科が03年の前回調査の6位から3位に上昇、数学は5位で横ばいだった。小4は算数、理科ともに4位で、いずれも3位だった前回から一歩後退した。全体の平均が500点になるように統計処理した平均点は小4算数が568点、理科が548点、中2数学が570点、理科が554点。前回と同じか2―5点高かった。
前回のTIMSSは順位下落が目立つとして、学力低下論争が激化するきっかけの1つになった。今回の結果に文部科学省は「順位は全科目で5位以内で国際的に上位にあり、平均点もやや上昇した。学力低下には歯止めがかかったと考えている」(学力調査室)としている。(00:08)
べつの記事。
http://mainichi.jp/life/edu/news/20081210ddm012100029000c.html
国際数学・理科教育動向調査:学力低下歯止め 「ゆとり」評価で二分
◇〇・授業減っても底力はぐくむ ×・トップクラスとは言えない
07年に実施された国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)で、日本の小中学生の平均点は前回以上となり、意欲も上向きつつあるとの結果が出た。テストを受けたのは、学力低下の元凶とされた「ゆとり教育」で学んだ子どもたち。授業時間も学習内容も増やす新学習指導要領への移行が来年度から始まるが、「ゆとりでも学力低下に歯止め」との結果が出たのはなぜなのか。【山本紀子】元文相の有馬朗人・日本科学技術振興財団会長は「『脱詰め込み』のもと、着実に学力がはぐくまれていることがわかった」と強調する。前回03年の結果などから学力低下が指摘され、「脱ゆとり」の指導要領への改定につながったが、有馬さんは「日本の学力はずっとトップレベルで、下がったとの認識自体が間違いだ」。これまでの順位低下は、参加国の増加が原因と見る。
6位から3位に上がった中2理科については「総合学習導入で授業が減ったが、相当の底力がある。教員の努力や国による理科支援員の派遣も、下支えになった」と評価する。
ただ、勉強への意欲は特に中学生で低い。「知識を教えすぎるので、面白さより苦痛が先にたつのかもしれない。成績上位の台湾や韓国でも同じ傾向がある」と分析した。
一方、「分数ができない大学生」の共著がある西村和雄・京大経済研究所教授は「1、2位グループの点数とは大きな開きがあり、世界トップクラスとはいえない。成績低下は30年近く続いたゆとり教育が原因だ」と厳しい見方をする。
勉強の意欲が高まらないのは、学力評価におけるペーパーテストの比重を低めたことが原因とみる。「89年改定の指導要領は、学習への態度や関心を評価に加える『新学力観』を導入したが、これをやめるべきだ」。そのうえで「トップに返り咲くには、総合学習をやめ、大学入試の科目も見直して総合的な改革をしない限り難しい。ただ今後は授業時間も増えるので、これ以上下がることはないだろう」と結論づけた。
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■ことば
◇国際数学・理科教育動向調査(TIMSS)
主に授業で習得した知識の定着状況を見る調査で、95年以降は4年に1回実施。日本は81年調査で中2数学が1位になるなどしたが03年調査は3〜6位で、学力低下を巡る議論を呼んだ。経済協力開発機構(OECD)の学習到達度調査(PISA)は、15歳を対象に3年に1回実施、知識の活用や読解力に主眼を置くことから出題傾向が異なる。==============
◇国際数学・理科教育動向調査の順位と平均点
<小4算数> <小4理科>1 香港 607( 2) シンガポール 587( 1)
2 シンガポール 599( 1) 台湾 557( 2)
3 台湾 576( 4) 香港 554( 4)
4 日本 568( 3) 日本 548( 3)
5 カザフスタン 549(−−) ロシア 546( 9)
6 ロシア 544( 9) ラトビア 542( 7)
7 イングランド 541(10) イングランド 542( 5)
8 ラトビア 537( 7) 米国 539( 6)
9 オランダ 535( 6) ハンガリー 536( 8)
10 リトアニア 530( 8) イタリア 535(14)
<中2数学> <中2理科>
1 台湾 598( 4) シンガポール 567( 1)
2 韓国 597( 2) 台湾 561( 2)
3 シンガポール 593( 1) 日本 554( 6)
4 香港 572( 3) 韓国 553( 3)
5 日本 570( 5) イングランド 542(−−)
8 ロシア 512(12) スロベニア 538(12)
9 米国 508(15) 香港 530( 4)
10 リトアニア 506(16) ロシア 530(17)
(カッコ内は03年順位、−は不参加またはデータ不備)
毎日新聞 2008年12月10日 東京朝刊