通勤電車で読む『待ち望む力』。

某日、非常勤先最寄りの書店でついでに購入したもの。『マルクスだったらこう考える』の人の新刊のようである。なにやら、ブロッホスピノザヴェイユアレント、そしてマルクスの希望論みたいな本のようである。へえ、と思って購入し、家で読み始めて通勤電車で読み終わった。
で、まぁ、しょうじきマルクスの章に入るまでのところは、いまいち乗れなかったけれど、マルクスの章になったらたぶん著者の人の勢いもぐっと出てきたのだと思う。おもしろい。なので、もうマルクスの章だけでよかったじゃんという感想。
希望とは何か、というと、今は存在しなくて未来に存在するもの、あるいはその何かを未来に実現しようとするものなわけで、それはつまりなにかというと、今の現実をぶちこわして来たるべきものを実現する、ということで、短く言えば、「革命」ということだと。「希望」とはすなわち「革命」である、あるいは「革命」は「希望」である。ほうほう。で、この本は、初期マルクス、っていうか、夢見がちで無鉄砲でバカみたいに楽天的な大学生時代のマルクスの父親への手紙から語り起こして、彼がいかにマルクスになっていったか、しかもそれにはバカみたいな青年マルクスの「希望」の力がいかに決定的であったか、が描かれている。もちろん、今の現実を見ずに夢想ばかりの「希望」を言い立てるだけなら観念論なのだけれど、しかしだからといって、「現実はこんなもんだ」とばかり言ってるのはこれまたたんに既存のイデオロギーや世界観に敗北してしまってるだけなんである。現実を見て、そこに未来の「希望」を見通すだけの力があってこそのマルクス、その「希望」を未来の現実として確かに実現する、世界の見え方・ありかたそのものを変えてしまうことこそ「革命」、というわけで、これはちょっとよかった。