公立高校の学区34年ぶり大改革(大阪)

http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/osaka/kikaku/027/21.htm

進路指導の現場に混乱 府教委の説明不足が拍車
 2007年度から府内の公立普通科高校が、現在の9学区制から4学区制に変わる。34年ぶりの大改革で、7年前から進む特色ある学校作りなど高校自体の再編と合わせ、「行きたい高校を多くの学校の中から選ぶことができる」などと、歓迎の声が上がる。しかし、制度の説明不足などもあり、進路指導の教諭や制度1期生となる生徒の保護者らには、「不安」の色が隠せない。(水野広宣)

 府教委は、学区再編に先駆け、1999年度から全日制高校155校を10年間で138校に減らすなど、府立高校の再編を進める。

 また、97年の文部省(当時)通知に沿い、多くの選択科目が選べる単位制の「総合学科」や、授業時間帯が選択できる「多部制単位制高校」(クリエイティブスクール)の創設など、新コースを設けた「特色のある学校」としてカリキュラムを変更した学校は全日制で42校に上る。

 07年度からの学区再編では、現在の第1、2学区が新1学区に、3、4学区が新2学区、5〜7学区が新3学区、8、9学区が新4学区にそれぞれ統合される。現在6校の普通科高校の中から進学先を決める6学区では、新学区になると34校の中から選ぶことができる。

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 学区再編について、府教委は▽学校選択幅の拡大▽学区間で不均衡な学校数の是正▽高校の特色ある取り組みの推進――と、三つの意義を強調する。

 だが、教諭たちの心配は尽きない。東大阪市にある中学校の男性教諭は「今でさえ、統合や改編で進路指導はややこしい。これ以上制度が変わると、もう自信を持って進路指導ができない」とこぼす。羽曳野市の男性教諭は「実際にいい条件の学校を選べるのは成績のいい生徒だけ。学力の低い生徒は、通学費も時間もかかる遠くの学校を選ばざるを得なくなる」と話す。

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 保護者からは学校の対応に不満の声が上がる。中学2年の二女を持つ東成区の主婦(40)は「学校は最近まで『学区の再編はまだ正式決定ではありません』の一点張り。変化への対応が遅くて当てにならない。『手が回らないから私立は自分で探して』と言う先生もいる」と批判する。

 梶田叡一・兵庫教育大学長は「細かい学区に振り分けられた少数の学校を偏差値で楽に指導してきたツケだ。府教委はもっと具体的で入念な相談体制を取り、先生も学校の面白さを見極めるくらい自主的に取り組むべき。生徒の人生がかかっているのだから、『わからない』では済まされない」と指摘する。

 府教委の説明不足に教育現場が混乱し、受験生や保護者らが戸惑う。府教委は4月までに対策チームが具体策を検討し、学区再編の周知徹底を図るとするが、このままでは何のための、誰のための改革なのか、わからない。